モンスター・エグゾード
「……!」
弾かれた。そう気付いた瞬間に、ルウネは跳んだ。
確実に腕を斬り落とすはずだった一撃。
しかしそれは、
「通用すると思ったのですか? 今の私に? は、ははっ……なんとも愚かしい!」
追撃のように掌から発射された光線はしかし、ルウネがイリスの下へと走り寄ると同時にイリスの展開した
その頃にはルウネの展開した光の剣はその輝きを消失し、ただの棒に戻ってしまっている。
「……ごめんです。失敗したです」
「あれはカナメさんのと同じですね……仕方ありません」
あらゆる攻撃を自動で防ぐ、万能の障壁。
カナメ曰く「怪我しなくても普通に痛い」らしいのだが、あの鎧の身体に痛みの感覚があるとも思えない。
つまり、突破できなければ文字通り虫に刺された程の効果も期待できない可能性がある。
そして、今以上の攻撃方法がルウネにないのであれば……防御を捨ててイリスが
だが、それに失敗すれば後はない。
どうする、どうすれば。
「其は凍土の槍。その威光は、ただ敵を貫かん為に輝けり……
その掌に向けて、巨大な氷の槍がイリス達の後方から発射される。
「エリーゼさん……!」
「状況はよく分からないですけど、アレは敵ですわね!? ていうか、貴方の同類なんじゃなくて!?」
「んー? ああ、
「鎧が喋った!?」
「喋ったです」
「それは後回しですわ!」
オウカの
エリーゼだって納得していないのに、この状況でゆっくりと納得できる説明などできるはずもない。
「イリスさん、説明を! アレはなんですの! 壊していいんですの!?」
「あー! 私の
「何アレ。
「ご無事で何よりですわ! でも少し黙っていていただけるかしら……
続けてやってきたオウカとレヴェルにエリーゼは怖い顔で振り向いてそう叫ぶと、魔法を構成しようとしていた
「……貴方も何処の誰か存じませんけど、少し大人しくしていてくださいますかしら。ダンスだって、相手の了解を求めてから始めるものですわよ?」
「ハハハ、これはこれは。この状況で中々に豪胆! ダンスの最中に乱入した方とは思えない言い草だ! ですが、まあよろしいでしょう。人生最後の僅かな時間を与えぬ程狭量でもありませんからね!」
「その声……アリサですわね。ということは……」
「ええ、そうです。恐らくはあの中に乗っ取られたアリサさんがいると思われます」
イリスの言葉にエリーゼは
「下手に壊せないということですわね。クラークさん、貴方アリサさんの居そうな所分かりませんの?」
「そんな事言われてもな。アレってたぶん
「あー、喋ってる!? なんでもがっ」
スタスタと歩きオウカの側へ行ったクラークはオウカの口を塞ぐと、自分達が来た通路とは別の通路……その奥へと視線を向ける。
「そこのアンタはどうだ? 現代に生きる魔人ならアレのこと、想像つくんじゃねーの?」
「おいおい、無茶を言うなよ。でもまあ……想像でいいなら語れるがね」
そこから出て来たのは、ラファエラ。多少服がボロボロになってはいるが、無事ではあるようだ。
「アレは見る限り
「……でもたぶん、あの中にはアリサさんがいますわよ」
「ということは、アレの駆動方式は
「胸部ね」
レヴェルにラファエラは頷くと、
「もしアレが
「……話が見えませんわよ。結局どうすればいいんですの」
「簡単さ。動けないようにブッ壊してやればいい。手と足をもいでやれば、流石に動けないだろ?」
どうして思いつかないんだい、と言うラファエラにイリスは渋い顔をする。
「アレは
「はぁん?
ラファエラはそう呟くと、凶悪な笑顔で
「そりゃあいい。喜べ、皆。あの鉄屑、意外と簡単に壊れるかもしれないぜ?」
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