モンスター・エグゾード2
「……さて、そろそろ良いですかね? もう充分に「最後の時間」を楽しんだでしょう」
「ああ。充分だよイルムルイ、この死に損ないのクソ神が。そんな鉄屑作って、墓標にでもする気だったのかい?」
「はははっ、面白い方だ!」
狙うというよりは広範囲攻撃用であるだろうその光を避けながら、ラファエラは叫ぶ。
「なんでもいい、どんどんコイツを攻撃しろ! 効こうと効くまいと構わない!」
「無茶を言いますわね……!」
「そりゃ言うさ! カナメが到着する前にお姫様を救出しとこうってんだ! 王道の英雄譚が展開されるのを特等席で見たいってんなら別だがね!」
からかうようなラファエラにエリーゼは小さく唸ると、走りながら杖を
「
発射された氷塊が
全く無駄なようにも思えるが、あれだけ自信満々なラファエラを見ていると何か考えがあるのだろうと思ってしまう。
他に手もないし、このまま座して待っているわけにもいかないのだ。
「もう1つ……
「ワケわかんないわよ……ああ、もう! なんでもいいのよね!? 土よ、形を成し敵を討て!
「そうさ、それでいい! ああ、レヴェル。君も協力してくれると嬉しいんだが……?」
走りながら魔法を撃っていたラファエラが近寄ると、レヴェルはふうと小さく溜息をつく。
「……なるほど、そういうことね。理解したわ」
「ああ、分かったかい?」
「ええ。それなら、私も色々とやりようがあるわ」
そう言って、レヴェルは大鎌を構える。
「誰が保証するのだろう、その闇に潜むものがないと。この静寂が闇という獣のせいではないと、誰が私に教えてくれるのだろう。誰もいない。何もない。故に、証明できない。これが、幻ではないと。貴方を砕くその闇の顎を、闇の獣を。黒の中にあって尚黒い、その黒き闇を。故に、私は名付けよう」
ぞぶり、と。
レヴェルの影から黒い「何か」が現れる。
獣のような。人のような。竜のような。あるいは、その全てを混ぜ合わせた冒涜的な何かのような。
名状しがたい何かが現れる。
影絵のような。あるいは水濡れた鱗のようにテラテラと輝くような。
そんなものが、伸びる。
「
飛び出す。飛び立つ。
魔法であるはずなのに、そこに潜んでいたそういう生物であったかのような奇妙にリアルな動きでソレは飛び出し、
「ハハハ、やるなあ! 私も負けてられな……おおっと!」
降り注ぐ火の雨を避けながら、ラファエラは笑う。
今のところ、誰もケガしていないが……ある意味当然ではある。
その巨体からしてみれば虫けら同然の敵相手の戦闘など想定してはいない。
ドラゴン相手に人間が生き残るのも、結局は「チョロチョロしてなんか倒しにくい」というのが大体の理由であり……つまるところ、攻撃が大味になりやすい。
逆らうことを許さない恐怖を撒く存在という意味では巨神となったイルムルイの選択は正しいのだが……軍隊規模でもないこのメンバー相手では、さぞかし戦いにくいだろう。
「この雨に愛はない、慈悲はない、例外はない! 降り注げ、
空中の魔法陣より発射される無数の爆炎弾もまた
「ハハハ、ハハハハハ! 何をするかと思えば、なんと無駄な事を! 魔力の無駄遣いにも程がある!」
「ちょっと、言われてますわよ!?」
「問題ない、戯言さ!」
エリーゼにラファエラはそう返し、叫ぶ。
「魔力の無駄遣いはお前だろう、イルムルイ! それだけ魔法を連発してるくせに、私達はまだ怪我一つないぞ!?」
「ほう! ならばこれは如何ですか!?」
「い……つう……」
吹き飛ばされたというのに、床や壁に叩きつけられたような感触はない。
その不思議にまさかとエリーゼは振り返るが、その顔には一気に失望の色が宿る。
「なんだよ、助けてやったのに。失礼じゃないかい」
「別に。それより貴方が挑発したせいで……」
「気にするこたぁない。作戦は続行さ」
エリーゼを抱え壁に叩きつけられていたラファエラはエリーゼをポイ捨てすると、
「脆い、やはり脆い! 人間にしては強いであろう貴方達でもこの程度! レヴェルもやはり所詮は影! ならばやはり私が立つ必要がある! この私こそが……」
「うるせーよ、クソ神が」
ぼそっと呟き……ラファエラは、イリスへと叫ぶ。
「そこの神官! そのちびっ子メイドの棒を強化しろ!」
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