呪いの逆槍8
動くのを待っていたと言わんばかりの一斉射撃は、しかし
当然だ。中身のない鎧相手では、たとえ関節の隙間を撃ち抜いたところで動きすら止められるはずがない。
そして。カナメもまた、動くのを待っていた。
「……見たぞ」
矢筒の中から、カナメは濃い茶色の矢を掴み取る。
反撃されまいとツリーハウスの中に引っ込む
破壊できぬ「ダンジョンの一部」であるツリーハウスは、それ自体が強固な要塞だ。
見えていれば必中のカナメの
だが、この矢は違う。放たれると同時に無数の矢に分裂した、
「ギイ!?」
「ギャガッ!?」
分裂した無数の矢はツリーハウスの中に逃げ込んだ
そして、その響く悲鳴の中をオウカの
「ガアアアアアアアアアアア!!」
手下を殺された怒りからか、
当たれば簡単に叩き潰されそうなそれはしかし速いわけではなく、ただ強いだけ。
ならば離れた場所から見ているオウカにしてみれば回避させるのは難しくない。
だから……剣と共に降り降ろされた腕は、絶好のチャンス。
「いけ……っ!」
登る。
「ガアッ!?」
慌てたように大きく振られる
目指すは、その眼前。腕の振りの勢いすら利用して、
「
叫ぶと同時に、オウカの身体からごっそりと魔力が抜き取られる。
それは
眩いその輝きは、
やがて右腕に集まっていく魔力の輝きは、周囲の景色をも僅かに歪ませる。
「ガアアアアアアアアアア!!」
「
……そして、周囲の空気を震わせる轟音が響いた。
バケツのような
その前に
「……ふう」
「おつかれさま」
そう言って労うカナメに、オウカは満面の笑顔で振り向く。
「どう!? ちょっとは見直したかしら!?」
「ああ、凄かった」
「でしょ!?
そこまで言いかけて、オウカは興奮していた自分に気付き軽く咳払いする。
「……どれだけの魔力が必要なんだって話よね。たぶん何かの秘密があるんだと思うけど」
「あ、続けるんだ」
「何よ、文句あるの!?」
「ないよ」
「……ならいいわ」
そう言って黙り込んでしまったオウカに、カナメは何かフォローしようと思った事を口に出す。
「あー、でも。その話から察するにオウカは幾つかの術式、とかいうのを見つけたんだろ? 凄いじゃないか」
「……見つけたのは術式じゃないわ」
「え? でも」
そう、オウカが……ジキナイト王国が見つけたのは、術式などではない。
「私の国が見つけたのは、
「え、鋳潰した、って……」
「貴方、聖国から来たんでしょ? なら知るはずないわよね。連合ってのはそういう場所なの。
だから、鋳潰した。刻まれた術式を全て「奪われない形」で記録し、秘密裏のうちに加工した。
「……でも、やっぱり駄目ね。秘密は漏れるものだし、人は裏切るもの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます