呪いの逆槍7
「自分で考えて動く」ものではなく、「自分が思った通りに動く」もの。
なるほど、確かにその差は大きい。だが、聞いた限りでは「自分で考えて動く」ものの方が便利にカナメには思える。
思える、が……そこはカナメが口を出す事ではない。
「ふーん」
「やっぱり分かってない顔してるわ」
「んー。
カナメがそんな風に遠回しに言うと、オウカはその意味するところを正確に理解して「やっぱり」と呟く。
「自分で考えて動くってのは良い事ばかりじゃないわよ?」
「そうなのか?」
「そうよ。たとえば……こういう場合!」
木の枝の上で弓を構えていた
木を登りかけていた
「……こういう場合、「自分で考えて動く」方式だと即時に木に登る判断が出来ない場合もあるわ。それは問題でしょう? これが一つ目の問題よ」
「へえ。なら二つ目は何なんだ?」
「魔力の問題よ。自分で考えて動くなんてものを、並の魔力で実現できると思わないもの。そこにこだわると、たぶん
言いかけて、オウカは口を噤む。
鉄屑。ラファエラに言われたその言葉を思い出したのだ。
否定するように首を左右に何度も振り、オウカは前を見る。
「
「分かるような、分からないような……」
「繋がってないといけないってことよ。常に魔力を供給する。そういう関係でないと、使い物にならない」
「使い物に……」
どういう意味か聞こうとしたカナメは、広い空間に出たことに気付き周囲を見回し……ハッとしたように上の方角を見る。
その視線につられオウカも斜め上を見上げ、「げっ」という声をあげる。
フェドリスはとっくに気づいていたようだが、やはり手を出すつもりも口を出すつもりもないようだ。
「何あれ……家?」
「ツリーハウスってやつかな。そうか、この階は町っぽくないと思ってたら……こういう町だったのか」
「で、でも! あんなのさっきまで無かったわよね!?」
「たぶん、踏み込んだんだよ。今回のテーマは「森に囲まれた自然の町」ってこと、かな?」
付近から、小さくギイという声が聞こえてくる。
ギイ、ギイギイ……と。囁き合うような、様子を見るような声。
それは周囲の、そして奥のツリーハウスから響き……やがて大合唱になっていく。
「まずいわよ。今すぐ走り抜けるか何かしないと、この状況は……」
戻るという選択肢はない。
恐らくは、ここを通り抜けなければ合流はできないし、仲間を危険にさらすか自分達が危険になるかだけの違いしかない。
「……大丈夫。なんとかするよ」
「大丈夫って、貴方……!」
言いかけたオウカの言葉は、ズシンという音によって遮られる。
ズシン、ズシンと。ガチャリガチャリと響く重たげな音。
それが一体何であるのか。その答えは、森の奥から進んでくるモノを見れば明らかであった。
「
出来の良いものとはとても言えないが、それは確かに金属製の鎧。
無骨というよりは雑。そんな適当な造りではあるが、確かに鎧だ。
それを全身に纏った
「オオ……オオオオオオオオオオオ!!」
「ギイ、ギイギイギイイ!」
「ギギギ、ギギイイアア!」
「ギギゲ、ギグゲア!」
その凄まじさにオウカは顔を青くして後ずさるが、カナメは
「たぶん、アレがこの辺のボスってことだろうから……倒せば突破も簡単になるんじゃないかな」
「そ、そうかもしれないけど! 敵はアレだけじゃないのよ! 周りの連中だってボスを倒させまいとするに決まってるじゃないの!」
そう、たとえば周囲のツリーハウスから矢が降り注げば、それだけで相当な攻撃になる。
フェドリスならともかく、ロクに鎧を纏っていないカナメやオウカでは心もとなく見える。
「問題ないよ。俺に任せて」
そう言って矢筒から矢を抜き取ろうとするカナメに、オウカは何かを言おうとして葛藤し……やがて、意を決したように自分の頬をパンと叩く。
「任せられるわけないでしょ!? 私だってできる……! 正面のデカブツは私が! 貴方は木の上の連中をどうにかして!」
そう叫び、オウカは自分の前に立つ
「見なさい! 私の目指すものを……破壊神と戦うために、生まれた力を!」
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