呪いの逆槍3
「くそっ! なんで「こっち」に
叫ぶ冒険者の男が斬り倒したのは、一体の
天井の
地上に突如出現した
……そして。その情報は、このダンジョンに何度か潜っている冒険者であれば知っている事でもあり。
誰もが「お前も苦労しろ」と口を噤む事でもある。
「ゴルド! 拙いよ、
「くそっ! カルト、お前は
「罠士にそんなもん期待すんなよ!」
「……仕方ねえ、逃げるぞ!」
飛び掛かってきた
「……ぎゃあ!」
「スイーズ!」
「構うな、逃げるぞ!」
弓士の男が背後から
「ん? ありゃあ……」
その逃げる先から走ってくる同業と思わしき人影を見つける。
先頭を走るのは明らかに前衛の女二人、少し遅れて弓士らしき男と……その後ろにも数人。
ならばちょうどいいと、ゴルドは笑う。
「すまねえ、後は任せたぜ!」
走ってきた女が何かを言うその前にゴルドとカルトはその横を走り抜け、階段へと向かっていく。
そして、そのゴルド達とすれ違った女……アリサはすぐに事情を察し、振り返らずに走る。
パーティの壊滅と遁走。命は1個しかないのだから、他の冒険者に押し付ける事だってよくあることだ。
そして、その「現場」に到着した時。
アリサ達の目の前で、血塗れの弓士の男の死体がふわりと浮かび上がり……天井の燃え盛る「屋根」へと落下した。
「あー、なるほど……そういう仕組み、ね」
アリサは言いながら剣を構え、叫ぶ。
「全周警戒、各個撃破! カナメ、エリーゼ! 上のは任せた! 見えないけどどっかにいる!」
「分かった!」
「お任せですわ!
天井へと向けたエリーゼの杖から吹雪が吹き荒れ、頭上の「町」へと降り注ぐ。
「グ、グエアアアッ!?」
「ギアアアッ!」
「あそこですわ、カナメ様!」
広範囲に降り注ぐ吹雪に複数の悲鳴が響き渡り、燃え盛る炎の中に幾つかの苦悶の表情が浮かぶ。
その「顔」を狙ってカナメの矢が放たれ……出現した水流が「顔」を呑み込んでいく。
「念の為……
続けて広範囲に放たれた電撃が「町」に降り注ぎ……しかし、何も反応がないのを見てエリーゼが満足そうに頷く。
「全部片づいたようですわ、カナメ様」
「こっちも全部終わったです」
剣の血を掃うアリサをそのままに、ルウネが駆け寄ってきてカナメにそう報告する。
「あ、貴方達……強いのね」
オウカは呆然としたようにそう呟き、ゴクリと喉を鳴らす。
レクスオール神殿の神官騎士であるイリスが強いだろうことは予想できていたが、ここまで彼女は一回も戦っていない。
あの程度のモンスターでは、傷一つつけられそうにはない。
「まあ、この程度ならね。しかしまあ……そっか。天井に出るもんだと思ってたけど、こっちにも出るんだね」
「一階層ではたまたま出なかったってことか?」
「いえ、二階層からの仕組みで、一階層では油断させているのかもしれませんわよ」
「確かにそう考えると二階層から人が少ないのも納得がいきますね」
ワイワイと話していたカナメ達の視線は、やがて天井の「町」に落ちた黒焦げの死体と、弓士の死体を見上げる。
「死んだらああなるってことか……悪趣味だな」
「ゼルフェクトに趣味の良さなんて期待できるわけないでしょう?」
呆れたように言うレヴェルだが、その死体を見上げ……ボソリと呟く。
「でも……「あんな趣味」がゼルフェクトにあるとも思えないのだけれども」
「え?」
「なんでもないわ」
思わず聞き返したカナメに、レヴェルはそう言って首を横に振る。
所詮、レヴェルの勝手な想像に過ぎない。
ダンジョンなどというレヴェルの生きた時代には無かったであろうものを語るには、情報が無さ過ぎるのだ。
「とにかく進もう。この階層もとりあえず、下に障害物はないんだし」
「ほんっと、変なダンジョンだよね。深く潜らなきゃいけない側としては楽だけどさ」
言いながら、カナメ達は三階層への階段へ向けて走る。
第三階層。そこから先は地図はなく。
そして……呪いの逆槍の本当の姿が現れるその第三階層こそが、第一階層で稼ごうとする冒険者が頻発する原因であり、地図がない原因でもあるのだが……少なくとも、ここまではカナメ達の探索は順調であった。
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