呪いの財宝の正体
その姿は、千差万別。山盛りの金貨だと言う者もいれば、魔石の山だとか……宝箱から溢れんばかりの金銀財宝と言う者もいる。
とにかくキラキラした財宝であることは確かで、しかしそれらは近づこうとするとその正体を現す。
宝の価値を確かめようとして……宝自体には問題はなく、何処かにそれを守るモンスターがいるのだと。そんな風に完全に油断した冒険者を殺すという、そんなモンスター。
「……なるほどなあ。正体は
跡形もなく吹き飛び何も残らない通路を眺めながら、エルは呟く。
それを分かっていながら……いや、その常識を分かっているからこそ、可能性を否定してしまっていた。
「好みの身体が来るまで、自分を飾る財宝を増やし続けてた……ってか」
「んー……いや、もっと単純な話じゃないか?」
「ん?」
「単純に、「冒険」してお宝を集めてただけじゃないのか?」
「モンスターがか?」
「そうでないと、うろついてた説明がつかないだろ」
そう、
好みの身体を探すという目的でも説明はつくが……。
「敵を倒して、財宝ゲット。ダンジョン探索そのものじゃないか」
「ははっ、なるほど。じゃあアレは
ラファエラが面白そうに相槌を打つが、エルはその言葉にあっけにとられてしまう。
「……カナメ。お前、随分ぶっ飛んだこと考えるなあ」
「え、そうか?」
「
だが、なるほど。確かにそれなら納得がいくともエルは思う。
ここに来るまでに会った死体は、皆ボロボロにされていた。
最初から「綺麗に使う事を考えない」殺し方だったが……体自体に執着がないとすれば、納得のいく殺し方だ。
「ま、ともかく……これで頼まれ事は終了ってわけだね」
「そういうことになる、か?」
「今の
「必要ねえよ。証明もできねえしな」
実際問題として証明できた方がいいのは確かだ。
どんなモンスターでも討伐部位というものはあるし、それを討伐の証明とすることもある。
……が、
「そもそも
発見数の少ない
実は
「詳しい状況報告があれば充分なんじゃないか? 一応周囲をもう少し見回って、今のが別件でないことを確かめよう」
「……だな。それが無難だ」
ついでに言えば、
なにしろ、硬貨の一枚に至るまで攻撃し打倒しなければならないと伝えられているからだ。
もし「それ」であると分かれば、自信のない者は速やかに逃げるべきともいうが……。
それをまとめて一撃。分かっていたとはいえ……カナメは強い。
「ん? なんだよエル」
自分をじっと見るエルの視線に気づき、カナメは疑問符を浮かべるが……エルは「なんでもねえよ」と言って肩をすくめる。
「お前、アリサちゃん達が仲間で恵まれてると思うぜ?」
「ん、そりゃまあ……」
カナメとしてもアリサ達と出会えたことには感謝しかない。
数えきれないほど助けられてきているし、一番最初にアリサと出会えたのはこれ以上ない幸運であったといえるだろう。
一方のエルとしても、カナメを利用する気のないアリサ達は稀に見ない善人であると評価できる。
普通であればカナメを見れば、どう利用できるかと考えるのが普通だろう。
場合によっては力の秘密を知り奪おうとする者もいるだろうし……カナメを取り巻き「すごい、流石だ」と称えるだけの太鼓持ちのような連中が集まっていた可能性だって高い。
だが、どうだろう。
カナメの周りには、恐ろしいくらいに自立した仲間しか居ない。
「あーあ。俺もいい仲間が欲しいぜ……」
「ラファエラさんは違うのか?」
「え? 私かい? 違うよ? 友人ではあるかもしれないけどね」
アッサリと答えるラファエラにエルは溜息をつき……しかし、大剣を地面に突き立て「よしっ」と気合を入れ直す。
「それじゃ、軽く調べたら地上に戻ろうぜ。もう充分義理も果たしたしな」
エルの号令に、全員が頷いて。
少しの探索の後……地上を目指すべく、来た道を戻り始める。
……こうして、
この件がモンスター研究に及ぼす影響はともかく、直近の結果としては……カナメ達は「規定通りの協力お礼金」を得て。更に非公式ではあるが感謝の言葉を貰うという、そんなエル曰く「あんまり嬉しくねえ」結末となったのである。
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