三度目のダンジョン挑戦9
謎の
しかし、カナメ達はあの
その代わり、見つかったものは……四つの死体。
三つは黒焦げ。
一つは胸に大穴。
一つは氷漬け。
その死体の周囲を、遠巻きにするように何体かの
「死体に集ってやがったのか……」
「でも、奇妙だね。憑りつけば
エルとラファエラは死体に近づき検分するが……特に
だが……カナメとレヴェルは死体を見て、やがて顔を見合わせる。
「なあ、レヴェル……なんか死体に変な靄みたいなのが見えるんだけど……」
「そうね。私にも見えてるわよ」
「え? 何が見えてるんですの?」
カナメとレヴェルの言葉にエリーゼがそんな反応をするが、カナメは「え?」と聞き返す。
「ほら、あの死体……なんか黒い霧っていうか靄っていうか……なんかもわっとしたのがうすーく出てるだろ?」
「え? いえ……そんなもの、見えませんわ」
「ええ?」
エリーゼの戸惑うような言葉にカナメは答えを求めてレヴェルの顔を見るが、レヴェルはニヤッと笑って返す。
「それはね、カナメ。私の能力の一つよ。さっき、貴方の魔力を借りる時に深く繋がったから……その影響が出てるのね」
「レヴェルのって……」
「目に見えないものが見えるだけの、つまらない能力よ。で、あの黒い靄は死体に纏わりついてる魔力でしょうね。ああやって死体に残留する程濃い魔力が、あの死体を這い回ったんじゃないかしら」
死体を這いまわる、濃い魔力。それはつまり……あの
先程の死体と同じ殺され方の死体があることからも、それは明白だ。
だが……何かが、引っかかる。
その答えがカナメの中に浮かぶ前に、エルとラファエラがカナメ達のところへと戻ってくる。
「やっぱり、なんか妙だな。そこの氷漬け以外は、金目のもんを持ってる様子がねえ」
「武器はあるけど、財布の中には銅貨一枚残ってない。死体漁りにでもあったかな?」
……確かに、死体の周囲には彼等が生きていた頃に持っていたであろう武器は転がっている。
剣、杖、槍……どれもボロボロではあるが、それは確かに残されている。
氷漬けの死体の近くには大袋が転がっているが、その中もほとんど何も入っていない。
そして、確かに周囲には硬貨の類は一枚もない。
エルも、カナメも、エリーゼも……腰の小袋などに多少のお金を入れてきている。
ダンジョンでも同じ冒険者相手であれば現金は非常に有効な交渉ツールであり、そうでなくともダンジョンに入る前に買い物をする為に全財産ではなくともそれなりの金額を入れた財布を持ち歩くものだ。
これだけ黒焦げになった死体であれば、財布も黒焦げになっているか……保存の魔法などをかけて燃え残ったとして、そこには確かな膨らみがあるはずだ。
だが、それもない。
「まさか銅貨一枚も持ってきてなかったってわけじゃないよな」
「それこそまさかだろ。有り得ねえ」
カナメにエルは答え、しかし「ならばどういうことなのか」と頭を悩ませる。
死体の懐を漁る外道冒険者が居たと考えるのが自然ではあるが……。
「とにかく離れるぞ。此処に居てもいい事はねえ。俺達が死体漁りだと思われちゃ迷惑だ」
「あ、ああ」
エルの号令に全員が歩き出し……やがて、カナメがぽつりと呟く。
「
「
まさか
そんな事をする意味がない。
「いや、ほら。
「ああ」
「だから、ひょっとしたら金貨とかにも憑りつくんじゃないかな……と」
「そんなもんに憑りついてどうするってんだよ。動けもしねえし、どうしようも……」
言いかけて、エルは足を止めないままに「ああ、いや」と呟く。
「動く金貨っつーか……財宝のモンスターは居るって聞いた事があるな」
財宝と見せかけて相手に襲い掛かるモンスターが、確かにいると聞いた事がある。
「上手く倒せりゃ普通の財宝に変わるっつー話だったけどよ……」
言いかけたエルの視線の先。
通路の奥でキラキラと輝く、金貨や銀貨……無数の魔石。
宝剣の類も混ざっているそれらは、間違いなく宝の山だが……あまりにもタイムリーすぎて、エルは思わず乾いた笑いが出る。
「あー……なるほど。なるほどなあ」
大剣を構え、エルは苦笑する。
「カナメ、どうやらお前が正解みてえだな」
「吹っ飛ばしていいんだろ?」
「ああ、やれやれ。やっちまえ。どうせ手に入らねえお宝だ」
エルが警戒を解かぬままにカナメの隣まで下がり……カナメは、財宝の山に向けて弓を構える。
「……
慌てたように財宝の山から
通路を埋め尽くす破壊の光が……財宝の山を、吹き飛ばした。
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