カナメの魔法
カナメの前にあるのは、ルウネの手によって火のついた竈。
ゴウゴウと燃える火を見つめ、カナメはそっと手を伸ばす。
「そういえば、こうしてじっくり見るのは初めてな気がしますわ……」
「私もそうですね。アリサさんは?」
「んー? どうだったかなあ」
なんだか背後から早くも準備を終えた三人の声が聞こえてくるのがどうにも気になるが、カナメは気にしないことにして手の先に魔力を集中させる。
そもそも
そして……クラートテルランとの戦いの最中に偶然会得したことではあるが、カナメの
たとえば「火」に触れれば怪我をするのは、余程特殊な生物でもなければ共通だ。
しかし、今カナメがやっているように手の先に魔力を集中させ、その魔力で触れることで
勿論、射程が長いわけではないのだが……それで充分。
触れると同時に、カナメの頭の中には作成可能な矢の情報が流れ込む。
「……ん?」
なんだか妙な矢の情報があった気がして、カナメはピクリと手を動かす。
火を材料にするのは初めてだが、なんだか聞き捨てならない名前があった。
とにかく、ここから作成する矢を決めて唱えるわけだが……。
「
唱えると同時に、カナメの手の先から魔力が伸びるようにして竈の炎を捕らえ矢に加工する。
包み込み、作り替え……赤い一本の矢をカナメの手の中に生み出す。
どことなく剣をも思わせるようなデザインのそれをカナメは握り、じっと見つめる。
カナメが作った矢の効果は、カナメですら知らない。
撃つまでその正確な効果は分からないが、「こういう矢が欲しい」とイメージすれば絞り込みがされるので然程不都合はない。
まあ、詳細が分からないせいで今回の
「カナメ様、これはどういう矢ですの?」
「んー、分からない。でもなんか強そうな気はする……」
「名前は?」
「
「名前のイメージからすると攻撃っぽいですね」
エリーゼ達がカナメの手元を覗き込んでワイワイと言い合うが、もしとんでもない攻撃タイプの矢であれば試し打ちすれば大惨事だ。
とりあえず切り札ということでとっておこうとカナメは矢をルウネに渡し、今度は分かりやすい矢を作ることにする。
「
唱えると同時にカナメの手の中には炎をイメージした鏃のついた矢が生まれ出る。
これは恐らくカナメの想像通りに炎の矢が発射されるものだろう。
撃つときさえ間違えなければ、強い味方になるはずだ。
「……っと」
今ので竈の火を使い切ってしまったのか、気付けば竈の火は消えていて。
カナメが新しい火を頼む前に、さっとルウネが新しく竈に火を入れる。
「あ、ありがとルウネ」
「頼れるパートナー、ですから」
えへん、と自信満々な笑顔をするルウネに笑い返すと、カナメは再び火へと手を伸ばす。
矢は多ければ多いほどいい。
ダンジョンに向かう前に、持てる限りの矢をカナメは用意するつもりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます