邪妖精との戦い
カナメの手に半透明の矢が現れる間にも、エルは驚異的な速度で
二人の先にいる
「おらおらおらおらあ!」
盾のように大剣を構えて突っ込むエルに弓の
斧の
一方のカナメ達はカンテラである為、エルが突っ込む時にすでに床置きである。
「斧だ!」
「ああ!」
短いエルの叫びに、カナメは即座に
見えてさえいれば、
故に松明で自分を照らしている
叩き落そうと振る
「ゲアッ……!」
松明を取り落とし床に転がる斧の
短い悲鳴をあげた
床に転がった松明はすでに火も消え、カンテラを持ったカナメはエルへと走り寄る。
「凄いな、エル!」
「何言ってやがんだ。矢の魔法なんか初めて見たぞ俺」
「はは……」
言われて、カナメは手元の弓を見下ろす。
矢の魔法。そう言われるのも無理はない。
あの黄金弓が無くとも矢を作れたし、撃つことも出来た。
そもそも……
しかし黄金弓は……「レクスオールの弓」は、間違いなくカナメの魔法であるはずだ。
ならば、黄金弓の持つ力とはいったい何なのか?
あの弓を持った時に流れ込んできた「使い方」は、「
……だが、もしそうではないとしたら。
アレがあくまで「弓を使った戦い方」であって、「弓の魔法」が他にあるとしたら。
「おーい、カナメ?」
「え、あ、ごめん。ちょっと考え事してた」
「はあ? まあ、いいけどよ。それよりホレ、見てみろよ」
「見る?」
エルの示す先……床の上で、先程倒した
カナメはえっ、と声をあげる。
確か
ミーズでも、瓦礫と同時進行でモンスター達の死体の後処理が行われていたほどだ。
「なん、だ……これ」
「すげえだろ? ダンジョンの中だけの現象みたいだけどよ」
ハハ、と笑うエルとは対照的に、カナメはゾクリとした悪寒に襲われる。
ダンジョンの中で死んだモンスターはダンジョンに消える。
それはつまり……このダンジョンがゼルフェクトによるものだという事実を裏付けてる証拠であるように思えたからだ。
「人は……」
「人間は消えねえよ。当ったり前だろ?」
「そう、か」
人間は消えず、モンスターは消える。それはやはりダンジョンがゼルフェクトによるものであり、モンスターがゼルフェクトの作ったものであるからなのだろう。
「お前、本当にダンジョン来るの初めてなんだなあ」
「え、あ、ああ。色々バタバタしてたしさ」
「ハハッ、じゃあもっと驚くぜこれから」
言いながら、エルはカンテラを指し示す。
「場所によっては、それがいらねえ場所もあるからな」
「そうなのか?」
「おう。まあ、その話は置いとこうぜ。こんな場所で時間切れになっちまう」
苦笑するエルにカナメはハッとした顔になり、エルは正面へと身を翻す。
「ま、その辺の話はたぶんアリサちゃんのほうが詳しいだろ。相当ベテランに見えるしな」
「アリサが?」
「おう。ありゃ相当だぜ。ソロなら間違いなく誘ってたな」
言いながら歩くエルの背を追い、カナメはアリサの姿を思い浮かべる。
細くて柔らかい、女の子らしい女の子のように見える……が、なるほど。
確かにアリサはカナメの目から見てもベテランだ。
頼りになるし、強い。見ていて安心できるとはアリサの為にある言葉にも思える。
「……なんか、分かる。確かにアリサは凄いよな」
「話振っといてアレだけどよ……お前アリサちゃんの事、相当好きだよな」
振り返り、なんとも微妙な顔をするエルにカナメは顔を真っ赤にする。
「す、好きって! いや、そりゃ大切な仲間なんだから当然だろ!?」
「おう、そーな。ほれ、サクサク行こうぜ」
言いながらエルは歩き……その背後で抗議の声をあげようとしつつも黙り込むカナメに「そうそう、静かにな。余計なモンスターが来るぜ」と言って笑うのだった。
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