第15話 火の玉の親玉

 スマートフォンがまだまだ普及の途上にあった当時の話だという。

 寺島氏が大学生の頃。

 夜更かしをし過ぎて眠気もさし、そろそろ寝ようかと考えていた矢先、友人の金本くんからメールが来た。


【超ド級!特ダネ心霊写真 撮ってモタ!! 火の玉の親玉、心霊スポットに現る!ヤバ、ヤバ!よく見るとコナキジジーの顔に見えね?妖怪大戦争ボッパツ?!】


 顔文字てんこ盛りのメールの内容は、大体このようなものだった。

 が、文章だけ。


【画像ねーし。貼り忘れた?写メ送ってもらえる?】


 寺島氏は そう返信し、床に就いた。


 それが、二人の最後のやり取りだった。

 2日後、氏は金本くんに捜索願が出されていることを知る。


 何でも飲み会の席で「妖怪は実在するか否か」という議論が持ち上がり、深酒をしていた金本くんが「よし、そんならオレがお化けを捕まえて来てやる!」と息巻いて居酒屋を飛び出して行って、それきりなのだという。

 火の玉云々のメールが来なかったか、と金本くんと親しい友達数人にも聞いてみたが、誰も「来てない」と答えた。


 自分だけに送られてきたメッセージらしかった。


「・・・ある日、不意に、〝コナキジジーの顔が浮き出た火の玉の親玉〟の画像が金本から送られて来るんじゃないかと――」


 友人の突然の失踪から ちょうど一年後、

 いきなり寺島氏はそんな不安に取り憑かれ、以来、携帯電話もスマートフォンも、一切 持ち歩いていないのだという。

 

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