中編『生物怪』 ~いきものに関わる何か、の話~
第7話 鳴き声
ちょうど25年前のことだという。
「住んでるトコが、海寄りな地域なせいかね。初めて聞く声だった。山の方から、何かの理由で迷ってきたのかなぁと思った」
びっくりするくらい近くで鳴いているようなので、好奇心が湧き上がり、外へ出てみた。
「そしたらね、アンタ。身がすくむ、っていうの? ――すくんだんだよ」
玄関先に、左目が顔の三分の一ほどを支配した三毛猫が座っていた。
「わかるかい?異常にでっかい目なわけよ。ギョロッと血走った」
そして、その三毛猫が、
『ほーゥ、ほーゥ、ほーゥ、』
フクロウの声で、鳴いた。
「もう片方の右目もね、付いてることには、付いてたんだけどね。それの大きさは、まぁ、普通の猫くらいだったんだけどね」
ほっぺたの横あたりに、縦にくっついていた。ちゃんと瞬きもしていた。
「――家の中に引っ返して、布団引っ被った。震えたな、あん時ばかりァ」
フクロウのような声は、10分ほど続いていたが、やがて聞こえなくなった。
「出なきゃよかった、出なきゃよかったって。泣いてたよ、オレ。それくらい あれ、 見たら駄目んなる生きモンだった」
まるで通り魔だよな、と弓田さんは呟いた。
くだんの声は、7年前のある日の深夜にも もう一度聞こえた。
ただし、前回の体験に懲りた弓田さんはもう外には出なかった為、それがあの猫の声だったのかどうかは、わからないという。
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