「公文書書き換え」

 財政省による国有地売却に係る決裁文書の書き換えが発覚した事により、日奔国は大きく揺れていた・・・

 正確には、決裁文書の書き換えではなく、内容の一部を削除した決裁文書のため、「公用文書等毀棄(きき)」にあたり、日奔国の法律では、公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄(きき)した者は、三月以上七年以下の懲役に処するとされている。


 一部内容が削除された決裁文書は、守友学園問題の検査を行うために会計院へも提出されていた。会計院は、国会及び裁判所に属さず、内閣に対し独立の地位を有する日奔国における憲法上の機関となっている、


 会計院は、国交省から内容の一部が削除される前の決裁文書を守友学園問題の検査を行うために受領していたが、財政省から提出された一部内容が削除された決裁文書を正しい物とし、その事実を隠したまま国会に報告していた。


 当時の責任者である財政省理財局長の証人喚問も行われたが、「刑事訴追の恐れがある」と証言拒否が続き、誰が何のために、法律違反である「公用文書等毀棄(きき)」を行ったか明らかになる事はなかった・・・


 証人喚問時に質疑を行う野党議員は、本来、決裁文書自体の内容が虚偽であるのか、単に一部内容が削除されただけなのかを問うべきであったが、「公用文書等毀棄(きき)」の目的を、阿部慎太郎と紐づけようと躍起になっていた・・・


 決裁文書自体の内容が虚偽ではなく、単に一部内容が削除されたのであれば、ある部分だけを削除し他の部分を削除しなかった理由を、証人喚問時に、突き詰める事が出来ていた筈であった。

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日奔国 翡湊 梗 @Himinato_Kyo

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