「衆議院解散」

 予定通り臨時国会冒頭で衆議院の解散が行われた。内閣総理大臣阿部慎太郎による所信表明は行われず、衆議院議員に対して何ら説明を行う事なく解散する事は、国会軽視の誹りは免れないものであった。日奔国は、10月10日公示・10月22日の衆議院選挙に向けて動いていく事になった。


 遡る事数日前、野党第一党である民心党代表である前田誠次は、非常に大きな決断を行う事を心に決めていた。古池由里子が党首になった希望党と選挙で戦っても勝てないであろう事は容易に予想できた。それは前回の等京都等議会議員選挙結果でも明らかであった。


 前田誠次は、何とか次回の衆議院選挙で阿部政権を倒す方法はないかと模索し続け、やはり希望党と協力していくしかないと考えた。だが、協力方法が問題で、候補者の一本化を行ったとしても、現在の民心党では党内の反発は避けられず、民心党の名の元で選挙を戦うよりは希望党の名の元で選挙を行うのが有利な事は自明の理であった。


 「民心党は、今回の選挙を機に衰退し、最終的に消滅するだろう・・・」と思うと、前田誠次は一人涙を流した。民心党の前身である民守党を仲間と共に立ち上げてから十数年、様々な出来事が前田誠次の心に去来した。


 しかし、阿部政権を倒し国家国民の政治を行うためには、名を捨ててでも実を取るしかない道しか残っていない事を確信した。


 臨時国会冒頭で衆議院の解散が行われた後、民心党は両院議員総会を行い以下の提案を行った。

 1. 今回の総選挙における民心党の公認内定は取り消す。

 2. 民心党の立候補予定者は「希望党」に公認を申請することとし、「希望党」との交渉及び当分の間の党務については代表に一任する。

 3. 民心党は今回の総選挙に候補者を擁立せず、「希望党」を全力で支援する。


 両院議員総会で満場一致でこの提案は了承された。参議院には、民心党籍の参議院議員がいるため民心党は形式上存続する形となるが、次回の衆議院選挙後には民心党での衆議院議席は存在しない事となる。


 そして、衆議院選挙戦が始まった・・・

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