四章
魔法『少女』だった頃
今日はとある行きつけのバーにて、第一世代のメンツだけで魔界遠征ミーティングをする事になっていた。
の、はずだったのだが……。
「もっと酒持ってこーい! 金ならいくらでもあるるるるるる!」
「おい優香やめろ! 飲み過ぎだぞ!」
暴れる優香に対して、バーテンのマスターであるお爺さんはニコニコと見守るばかり。さすがの物腰で、あたし達が小学生の頃からお世話をしてくれただけはある。
このバーはあたし達が全盛期の時に隠れ家として使っていた場所。当然マスターは魔法少女の事情を知っていて、並々ならぬサポートをしてくれた。彼からすればあたし達はみんな娘のようなものなのだろう。
だとしてもこの酒乱を止めないと迷惑極まりない。
「ほんと優香ってお酒に飲まれちゃうよねぇ〜。滑稽だわぁ」
「なんなんなんだよぉまゆ〜一緒に飲もうもももももおえっ」
「さっきから一緒に飲んでるじゃないのねぇ? みく〜?」
「…………ひっく」
優香と違って甘いイレブンバイオレットを飲み続ける見た目ロリ達。でもみくりもそろそろやばそうだ。
「テキーラサンライズ!!」
「だからやめろって! マスター! オレンジジュースだけでいいよ!」
「やぁだあテキーラがいいのー!」
「一人でパリピすんのも大概にしとけよ!」
収集がつかない。あたしはビールをちまちまやってるからまだ平気だけど、酔ってるのに止める役に回るなんてしんどくて堪らない。
「はぁ……七海がいれば」
「まぁね〜、こういうのは彼女の仕事だものねぇ。そういえば地走は七海と呑んだことある? 私達は優香となら一度呑んだことあったけどチームで呑み会したことないものねぇ」
「ねぇよ。飯ならあるけどな。呑み会なかったのもお前ら全員あたしの連絡先消してたからだろ? 無駄に避けやがって」
「だって地走面倒ばぁっかり持ってくるんだものぉ。偶然会うだけでお腹いっぱいよ」
「ひっでぇ」
本当にこいつら友達か? 戦友か?
七海はもういない。しかし、その名前を聞いた瞬間優香は大人しく席に着いてオレンジジュースを口にした。
「昔はさ、苦しかったけどさ、楽しかったんだよボクは……」
「なんだよ急に」
どこか遠くを見つめる優香。どう返すか悩んでいると、真弓は両手をくるっと天井へ向けて肩をすくめた。
「ま、今日はもう思い出話でもいいんじゃない? せっかくチビッ子達もいないことだしさ」
「みくも……それがい……ひっく」
確かにここまで酔いが回ればミーティングも糞もない。あたしも昔の話はしたかったし丁度いいか。
「はぁ、たまにはいっかな!」
「あかりんが最後に入ったクセに一番偉そうだよね?」
「あの時から一番偉そうなのは優香だろ!」
「いいやあかりんだね!覚えてないのかい初対面で黒コートに身を包んで街頭の上からボク達に言ったこと! 『ちっとは戦えそうだけど、まぁ及第て……』」
「やめろぉおおお!! 言うんじゃねぇ!!」
「しかもみくみくの方が強かったってオチ!」
「お前だってみくりとの模擬戦で『時を操る私より強い者は存在しない』とか言っといて全く使いこなせずに丸焼きにされてただろ!!」
「勝てそうだったもん!!」
当時はどんぐりの背比べもいいとこだった。
「ま、みくが優秀過ぎるのが罪ねぇ」
「「……認める」」
その最強だったみくりちゃんはいまお眠で首がカクカクしてるけどな。
そんなこんなで、ここからしばらく昔話に花を咲かせる事となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます