第29話 レドナルド
階段の奥は暗くはなかった。
青い曲線がかすかに光を放っており、ロウソクよりも明るくはないが、ほの暗い空間ではこれぐらいの明るさはちょうどいい。
青い曲線の光に照らされ、階段の奥へ目指す。
すると、大きな扉があった。
扉には何か文字が書かれているが古代文字のようで、ミリアやローカスからではなにを書いてあるのか読むことができない。
ラスベルにこのことについて尋ねようとしたとき、ラスベルはブツブツとなにか呟いていた。それは、ミリアが知る言語ではない、また別の言語であり、どこか懐かしい言葉に近いものだった。
ラスベルが呟き終えると、軽く礼をした。
すると、扉は音を立てることもなくすんなりと開いた。
「…これは!?」
ミリアがおどろくが、ローカスは特に驚かない様子。
「なんでおどろくん?」
「だって、ラスベルがブツブツ…と言って、音もなくあいて、すんなり入れて…」
「まず、落ち着くんだな」
ロークスにどうどうと肩に軽くたたかれながら、深呼吸する。
一から順にロークスに伝える。
すると、ラスベルが行った方法が正式で扉が開いたんだとロークスは改めて説明した。それによって一気に頭の中へと溶け込み、理解した。
(ラスベル…あなたはいったい?)
ミリアはそう思いながらもラスベルはひとり、奥へ進んでいく。
(考えったって、わからない。直接本人に聞くことが大事よね)
ミリアは「待ってー」と声を出しながら、ラスベルの後を追いかけた。ロークスもつられて追いかける。
少しして、ラスベルは再び立ち止った。
不意に止まっていたため、ミリアはスピードを抑えることができずラスベルの背中へ鼻からダイブしてしまった。
それでもラスベルは微動たりせず、なにかを見つめていた。ミリアはラスベルが目を向ける視線の先へ目を向けると、そこには一つの本と、ミリアの手のほどしかないキューブがそこにあった。
ラスベルは「カティア?」といい、そのキューブと本を手に取る。
そして、キューブから映像が流れた。
キューブは立体映像だ。いまでいう立体映像は珍しくもない。魔法で待機に浮かぶ特殊な粉を集合させ、マナを与えることで映像の1コマとして映し出すことができる。
人間くらいの大きさとなると数億または数兆以上の粉が必要となる。その数をいっぺんに集め映像として返還するのは今の時代ではかなり難しい技術でもある。
直径40センチ程度なら家庭でも映し出せるほどの機械はある。珍しくはないが、ここまで大きくなると口が閉じきれなくなるのは人生で初めてなのかもしれない衝撃が走ったからだ。
『キミが、これを見ているころには私はもういないだろう』
そこに映し出されていたのは銀色の髪をしたショートヘアの女の子が映っていた。カティアというのはラスベルにとって彼女的な人物なのかと少し嫉妬してしまう。
「カティアなんだね、ようやく会えたよ…(映像だけどね)」
キューブに指を当てながら、映像に映し出される友のカティアにじっと見つめ、懐かしさと会いたかった思いが一気に吹っ切れたかのように、ラスベルの瞳から涙が零れ落ちていた。
『……』
ラスベルとカティアの対話を邪魔してはいけないと思い、ロークスとミリアは一旦、外へ出た。扉から出ると、再び青い曲線が描かれた空間にでた。
ロークスにミリアは尋ねた。
「あなたは、ずっと一人だったの?」
大した質問じゃない。ただ、気になっていたことを訊いただけだ。
「おいらはひとりじゃないよ。けど、ここを守っているのはおいらだけなのさ」
一人じゃない…ということは近くに集落が何かしらあって暮らしているのだろう。けど、一人でここを守っていたのはなぜなのだろうか、他のみんなもここを守っていてもおかしくはないはず。
「ロークスはなんで、一人で守っていたの?」
「…それは」
固まる口。なにか言いたいことがあるのだが、それをうまく言えない様子である。
ミリアは「他は黙っておくから私にだけ教えて」とロークスの耳(?)へそっと囁く。
ロークスはため息をしながらも、答えを聞かせてくれた。
「おいらははずれものなんだ。おいらはずっとひとりぼっちだった。先祖代々から伝えられているこの建物を守るべく、おいらはずっとみんなと遊ぶことも狩りもせずにここにいた。だから、おいらひとりでここを守っていたんだ。でも、みんなはずっとわかっていたんだ。おいらもおなじだ。この建物を守っても、いずれ消されてしまうんだって…」
ロークスはそこまでいうなり、再び口を閉ざした。
なにか大事なことを隠している様子だ。
けれど、そこまでしてこの建物を守る価値があるというのは、なにか秘密があるのだろう。
でも、それ以上は訊けなかった。
これ以上、知ってしまったらきっと、この先、無事に生きて居られないんじゃないのだろうと思った。そのとき、ロークスはある人の名前を言った。
「レドナルド」
不意打ちだった。
これ以上は聞かないという前に、先に言われてしまった。
その名前は見覚えがあった。歴史本にも登場する有名で英雄の人物名だ。
そいつは―――。
キューブによって映し出されるカティアから信じられない一言が飛び交った。
それは、嘘でも偽りでもない。
カティアもラスベルも信じたくはなかったある一言が載せられていた。
「発端はレドナルド」
ラスベルの資金免除や研究室の改築、建造、協力してくれた偉大な人だった。
カティアからその人の名を出すときは尊敬のとき。
けど、カティアからもたらされたものは―――ラスベルが封印されたのも爆発した原因を作ったのもすべてこの男がかかわっているということを。
真相は、過去に戻ればわかると、カティアはそう言い、映像はそこで切れた。
キューブからはそれ以上はなにも出なかった。
残された本とキューブを手に取り、キューブはポケットにしまい込み、本は軽く開いた。
本には消えたカティアが書き続けたであろう古代の呪文がびっしりと書かれていた。ラスベルはこの本を大事に抱え、古代魔法を使って、再び異次元の魔法を使って、過去に戻り2つの案件を探すことにした。
レドナルドの真相とカティアを助け出すために…。
一行は、建物の外へ出向いた。
そこには、ある男が立ち構えていた。炎に身を包む男が…。
「真相知ったんだね、でも終わりだよ。ここで、君らも消し、本も消すことで、ぼくの任務は終いだ」
と、この男がミリアを犯人にしたのだとミリア自身からそう言った。
そして、今もカティアからの贈り物である本も燃やそうとしている事実。
ラスベルはカティからもらった呪文で全力で男に勝負を挑む。
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