第27話 同盟!
怪物が大きく両腕を広げ、ラスベルに威嚇する。
けど、ラスベルは特に怯えることもなく、ラスベルも同じように両腕大きく広げて抱き付いた。
「相棒よ!」
「元気だったか同盟よ!」
何のことなのかさっぱりだ。
抱きしめるラスベルと怪物に対して、ミリアは時間を見てから恐る恐る尋ねた。
「…あ、あの…お二人は友達…なのです、か?」
仲良く飛び跳ねる2人の姿に唖然とするミリアを見かねたラスベルは怪物に少し待ってもらうように言い、ミリアにゆっくり近づき、こう説明した。
「俺のかつての旧知であり同盟だ」
意味が分からないと不満げな表情を見せている。
「現代人にそう言っても分かりっこないって」
「あ、そうだったね。ごめんごめん」
ラスベルは、少し間を置き、ミリアを安心させるために一つの魔法を見せた。
それは、暖かい光ともいえる真っ白くどこか懐かしい雰囲気を発していた。昔、母に抱かれたときのような優しく暖かい光。
「落ち着いた?」
「あ…はい」
ミリアの表情をよーく見てから、一から説明することにした。主な説明はラスベルと怪物との同盟についてだ。
ラスベルは古代人であると伝え、ここに来た理由も古代人が残したと思われる遺産を見つけ出すことが目的だった。
古代人と言っても素直に理解はできないものだ。けど、古代人しかできない魔法であえて見せることでこの場は収めてほしいという願いもあって、カティアの本から得た魔法のひとつを使ってみた。
現代に言いかえると室内のにおいと光を変えるといったような機械。(名前が出てこない)。
この怪物とはラスベルが昔…といっても何十世代前かは不明だが、ある土地との戦争を解決させ、領土を支配していた人間から返すように仕向けたことで同盟として結ばれたと説明した。
その時に支配していたのは人間(ヒューマン)とドワーフの2つの種族だった。人間は単純に支配することが目的で、ドワーフがここでしか取れない鉱石を狙っていたことも駒として入れ、戦略したというわけだった。
ラスベルは人間の戦争に強制参加させられた。五本の指に入るほどの魔導士を投入したとなれば、圧倒的に人間&ドワーフ側の勝利が確実だった。
ところが、ラスベルにとってはつまらないものだったのは確かだった。
興味もない領土を他種族から奪った挙句、支配するなって生にも会わない事だった。早めに戦争を終えるには怪物よりも弱い人間から攻めることに進路を変えた。
もともと、ここに住む怪物は狂暴で人間が作りだした魔法や武具では太刀打ちできないほどの強度を図っていたほどだった。
人間が数十人がかりでようやく1体倒せるほどの強敵だった。
そんな人間を味方にするよりも怪物の味方になってしまったほうがいいと思い、怪物の拠点であった地下遺跡まで進み、そこにいた族長と思わしき人物に出会って、説得した。
結果的に、人間を追い出し、一定量の鉱石をドワーフに分け与える(賄賂)ことで始末することにした。元々、ドワーフたちも戦争するために訪れたのではなく、鉱石をどうにか手に入らないかどうかを取引に持ち掛けていたらしい。
怪物は鉱石の価値などただの石ッころしか見ておらず、無価値と考えていた。けれど、怪物たちが暮らす場所で勝手に鉱石を渡すことも取引することもできず、ドワーフたちと揉めてしまっていたところを、人間の欲望によって戦争へと発展してしまった。
ラスベルが怪物たちに提案したのは、怪物たちは前に出ることはせず、召喚魔法の術を与えることだった。怪物たちが無価値と決めつけていた鉱石“魔鉱石”と呼ばれるマナが結晶化して鉱石として変わった物だ。
ラスベルは魔鉱石に目を付け、蓄積マナの量を衰える怪物たちに補助する形で魔鉱石を使った召喚術式を教え、戦争を終わらせた。
召喚するものは、この地では数はいくらでも呼べるが種類は豊富ではない。土人形(ゴーレム)、樹木精霊(ドライアド)、魔法生物(マジックモンスター)、自動型投石機(オートカタパルト)、土兵士(ストーンソルジャー)を主に持ち入り召喚して、敵を圧倒させた。
怪物は備蓄マナが少ないことも明確にしていたのもあり、人間たちの油断によって勝利は怪物たちの手に収まった。
おかげで怪物たちから救った英雄として名を後世に残し、人間からの支配もなくなり、ドワーフたちの鉱石取引に応じ、街を発展することに至った。
そのあとは、ラスベルは自宅に戻り、その後は彼らと会ったことは一度もなかったわけだ。
「―――ということなのさ」
怪物が当時のことをいくつか挙げながらラスベルがそれを補う形で説明していった。ラスベル本人からしてみれば、当時の状況ははっきりと覚えておらず、ただ取り組んでいた研究を邪魔されたはらいせいに敵側に寝返って片付けるという方法に出たことしか記憶になかった。
そこまで大きく事が運んでいたなんて怪物から説明されるまでは思い出すこともできなかった。でも、怪物の特徴と同盟を組んでいたことだけは記憶的にあったのは、何とかなった。
「つまり、研究の邪魔をされたから人間を裏切った…というわけですか」
早い話そうなのだ。
当時は、来月に発表を待ち構えている研究成果があったので、まとめるために時間が足りなくて焦っていたのだ。
それに、発表は国や政府に申請していなかった(独断)ために、戦争に引っ張られてしまった。戦争が終わった後は、ちゃんと政府に申請するようにした。無茶な要求で引っ張られないようにするために。
でも、月1に報告することとなり、面倒くさくなったのは秘密である。
「しかし、同盟が過去から転成されたなんて不思議な話しだなぁ」
浮かれながら満面なく微笑む怪物は、ラスベルに何度も背中を叩いていた。音はとてもじゃないが、鞭でたたかれているかのような音が聞こえるが、ラスベルが平気な顔しているので、大げさな音だけかもしれない。
「転成じゃないよ、あくまで封印されていたのさ」
ラスベルは訂正した。
封印とは? ミリアも怪物も疑問をラスベルにぶつける。
ラスベルは封印された事情を説明すると2人は納得した。
けれど、怪物からとしてみればそれはひどい話だと抗議するべきだと言ってきた。
ミリアからしてみれば、封印だけで済んだのはある意味奇跡なのかもしれないと思うのだが、ラスベルの意外な実力とすごさを改めて知ると、尊敬する人物になり替わっていく。
「でも、それじゃ不憫すぎるよ! ぼくらの英雄なのにさ! 勝手だよ人間は!!」
ご機嫌斜めだ。怪物は封印した人間に失礼だというのだ。でも、話しからしてみればラスベルも無茶なときに実験を行い被害が莫大に出たのは事実なはずなのである。
ミリアは反論できなかった。
「けど、封印のおかげで、未来にこれたのはいい経験だったよ」
とラスベルは改めて感謝を述べた。
確かに…封印の件がなければ、アリスやリン、ロード、ミリア、怪物たちと出会うこともなかっただろう。それに、見失った友カティアも探すといったこともできなかっただろう。
「でもさ――」
「はいこの話は終わりだよ。俺らは急ぎの用事があるからな」
立ち上がるラスベルにつられるかのようにミリアも立ち上がった。
「急ぎって…」
怪物が問いかける。
「古代遺産を見つけることと、ミリアを犯人にした犯人を捜すこと」
と言ったら、怪物も「ぼくも協力するよ。英雄の手伝いできるなんて一生にないかもしれないことだしさ」と、賛同してきた。
ミリアはラスベルに視線を向けた。
こんな恐ろしい怪物を仲間にするなんてありえないのだが、何十世代も離れた英雄と出会い、一緒についていけると考えれば、怪物がついていきたいと考えるのもよくわかる。
「いいよ。1人でも多く仲間がおれば、俺も助かるし」
ラスベルがいいよと下した。
怪物は喜びのダンスをした。
「…ところで、怪物さん。貴方のお名前は――」
仲間になったのはいいのだが、こんな見たこともない怪物と一緒にいると考える不安でいっぱいである。ラスベルも十分怪物に似た危険であることも。
とりあえず、お互いを知るべき名前を打ち明け、聞いた。
「俺の名は、ゴン・ロークスだ。ロークスと呼んでくれ」
ゴン・ロークス。
新たな仲間が加わった。
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