第23話 遺跡の調査「えっレベル不明?」

 ラスベルはひとり、谷底に眠る古代都市という噂を小耳にはさんだ。ただ歩いていただけだが、その話を鎧を着た男とローブを着た女の人から聞こえてきたのだ。


 内容は、古代都市に眠る財宝と秘法。


 古代都市…もしかしたら、ラスベルがいた時代にあった都市の一部なのかもしれないとそう悟った。もしそうだったら、魔法本やカティアのことが分かるかもしれない。


 そう思ったラスベルはさっそく行動開始した。


 古代都市を調査するにはかなり高度な魔法テクニックと能力、レベルが必要だった。これは、ギルド掲示板に載っていたのを受付に尋ねたことで知ったことだ。


 この世界において、ラスベルにいた時代にはなかったレベルといった機能が存在していたことに驚かされた。


 ラスベルがいた時代にはレベルといったものはなくランクと呼ばれていた。専用な調査機や高度な魔法で身体全体何時間もかけて調べる必要があった。


 またランクは各自の魔法――マナの量に応じてレベルが決まるため、数値ではなく色分けで階位を決めていた。


 色がなかったら魔法の才能もなくランク1以下と定め、薄い青色だったらランク2以上の多少なら魔法の才能はあるといったような区別の仕方をしていた。


 ラスベルは虹色とまで言われるほど様々な光が発していたと専門家が言っていた記憶がある。虹色とはそれぞれの色に応じてレベルや扱える属性を意味しているのだが、虹色というだけでなく目にできるほどの色合いだったこともあり、相当な高度レベル…いや、神に達するほどの魔力の才能を持っていたのかもしれない。


 面倒くさがりなラスベルにとっては長時間もレベルを知るよりも研究に集中していた方が好きだったので、調べるのは年に1回限りにしていたので、詳しいことはわからないのである。


「――俺のレベルっていくつくらいなの?」


 受付の女性にラスベルは訊いた。


「そうですね、レベルは…えっ? レベル…不明です」


「え? 不明?」


「はい…誠に申し訳ございませんが、当の機械ではラスベル様のレベルは図れないようです」


「あー…そうなんですか…」


「申し訳ございません」


 受付の女性は何度も謝っていた。

 レベル不明は数値の限度が超えることで発生すると後にアリスから聞いて知ったのだが、人間の限界レベルは150であるという。


 20代平均40あるかないからしい。


 ドラゴン族やエルフ族などは限界値が更新中なのだとか言われている。


「――それで、調査に行けれるの?」


「あ、はい。もちろん、レベル不明確でも…はい」


 受付の女性はもうなんなのかわからないようでうろたえていた。

 いつものように対応しようと何度か静かに深呼吸しているのが見えるが、あえて見なかったことにした。


 場所はここから遥か下にある谷底…暗くて魔力が十分に体内に備蓄されないといわれるほど危険な場所らしい。それに、危険で狂暴な魔物がたくさんいて、いままで調査に支障していたと聞く。


 これだけの高さの建造物を現代人たちが気づき上げたのもなんだかよくわかるような気がする。危険な場所にある物の、谷底の奥に眠る秘法を手に入れたいばかりに現代人は遥か天まで届く塔をいくつも立て、次第には街として結成させた。


 街は遥か地表まで目では見ることさえもできないほどの高さなのに、ずっと年月を立てて、見守っていたのだとそう思った。


「まずは、準備だな」


 谷底まで行くには塔の下層部分に到達しなくてはならない。

 まずは食料・寝袋・回復薬・仲間などを蓄え、進まなくてはならない。中層まではギルドの砦として人はいるのだが、それ以下に進むと人と出会えることはまずないといわれるほど危険な場所だという。


 仲間は、アリスたちを連れていくのはまずい。

 アリスやリンは魔導士だが、リンは指名手配されている(また、ギルドや街にも手配書が残っていたため)し、アリスは念願の魔導士の資格を会得したこともあり、この世界における知識や魔導士としての能力を知らなくてはならない。

 ロードは「昔の仲間にあってくる」といい、邪魔する訳にはいかない。


 なら、仲間はあきらめ、所持しているわずかなお金を使って食料と回復薬を買うことに専念した。

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