第17話 対立(2)
試験の結果が知らされたのは2日後のことだった。
そこには心配そうにのぞき込むリンとラスベルと見知らぬ騎士の男がいた。
「……こ…こ…は…」
「医務室だよ」
ラスベルはそういうと、アリスはゆっくりと視界が広がっていく。ハッと頭の中であの試合はどうなったのか思い浮かべた。
「ねえ、試合どうなったの?」
「貴方は合格。だけど、残念ながら――」
もしかしてミアは不合格になったのと思い詰め始めた。
「ミアも合格したよ。努力として認められたらしい。もちろん大半はアリスの勝利でもあるが…」
ラスベルはそういう。アリスは安心した。けれど、ミアも合格したというのは少し嫌な気持ちになった。でも、審判が合格とみなしたのあれば、受け入れるしかない。
「それで、ミアはどうなったの?」
アリスはミアの状態がどうなったのか気になった。
「ミアは昨日、退院していったよ。もちろん、親御さんと一緒に帰っていったよ。ただ、アリスにはなんの声もなかっただね」
アリスはそうというだけだった。ミアと戦って、最初に倒れてしまったことに悔やんだ。魔法の種類として勝利したのだろう。そう思い、なんだかミアに負けた気がした。
「さて、資格を取りに行こうか、外で審判たちが待ちかねているよ」
そう言って、ラスベルはアリスを男(ロード)に背負ってもらい、ラスベルとリンは扉をゆっくりと開いた。
その先に待ちかねていたのは3人の男女だった。
一人は身なりもよく魔導士でよく見かける三角形の帽子をかぶった女性がいた。彼女は魔導士。アリスを助けた男もいた(当の本人は知らないが)。政府の役員である紺色スーツに身を纏った男もいた。スーツの男は資格として〔勲章〕をアリスに手渡した。
ロードの背中におんぶされつつ、勲章を片手の力で何とか取り、それを見る。明るくなる表情にみんなは笑みを浮かべた。
魔導士の女性はアリスがどうして勝利したのか述べた。
それはただ、単純なことだった。
彼らは資料を見ていた。アリスが生まれたときから魔法の才能はないことに。けれども、試合会場で見せつけた魔法はどれも、普通では決して取得できない魔法の数々だったことに驚いた。
「見事だったわ。数々の先生に合えたのね。おめでとう」
と、複数の本が送られた。これはラスベルに与えれた。
本は一目でわかる。古代魔法を記された魔法だ。
資料の中にアリスが古代魔法を使った記述もあった。今では解読するにも学者たちが悩みぬいている本だ。それをアリスが使えたというのなら、アリス自身からこの魔法の解読してほしいという願いも込め、アリスの手では握る力もできない量を大人びた学者のような白衣を着たラスベルに手渡した。
最後の冒険者の男は、アリスにギルドにぜひ来てほしいことを願った。魔法の数々といい今まで見たこともない魔法もいくつか拝見したこともあり、このままでは惜しいと思い、冒険者の男は近々目が覚めるはずのアリスを待つことに選択した。
アリスが目覚めたときに、ギルドの勧誘を決めていたのだ。もっとも、決めたのはアリスが最後に放った魔法によるもので、アリスをいち早く助けたのもその理由である。
たとえ、審判でも魔法でけがや吹き飛ばされた魔導士を助けるのは規則批判だ。資格を抹消されてもおかしくはない。けれど、惜しいと思った彼は迷うことなく助け、ぜひアリスをギルドの仲間として加えたいと思ったのだという。
アリスは「考えておきます」といい、冒険者に手を振った。彼らと別れた後、早速、おんぶしてもらっているロードの紹介が入った。
彼はロードという名で、ラスベルがかかわった事件で出会い、リンと交わるかのように戦って仲間に加わったという。ギルドとしての履歴も長く、行く宛てもないロードをこのままにするのも惜しいと思ったラスベルからの提案だった。
アリスもいいよと頷き、晴れてロードも仲間に加えて、彼らの目的は次の町へ向かった。
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