第16話 対立(1)

 試験会場へ向かった。

 アリスの目の前にはミアがいた。あのにっくきミアが。


 ミアは学生服は着ておらず、正式な魔導士用の服を着ていたのだ。その一方でアリスは巷で買った一般魔導士のローブを着ていたに過ぎなかった。


 ミアは勝った気でいるのかすでに魔導士の資格を得たときの服装になっていた。


「待っていたよ、アリス。ぼくの愛しいアリスはどのようにして倒れてくれるのかな?」


 と、煽ってきていた。あの時とはもう違う。アリスは外でリンやラスベルたちが見守ってくれているのかと思うと、負けるわけにも油断する気にも慣れない。


 この試合に勝って証明する。ミアにも、見ている魔導士たちにも、もういじけている弱い自分じゃないことを。


 試合が開始するチャイムが鳴る同時に、試合が開始した。


「ミア、あなたが知る私はもういない」


 走りながら、ミアがいる場所へ向かって駆け出す。


「そうか、俺もアリスが知るような魔道士じゃないよ」


 とミアはその場に立ち止ったまま魔法名を読み上げる。


 アリスも移動しながら魔法名を叫ぶ。


「ヴァーン!」


「ショットガン」


 ミアの背後から突風が吹き荒れ、アリスは飛ばされる。近くにあった岩場の木の枝につかみ、難を得るが、アリスが放った複数の色合いをした弾丸はミアに向かって一直線に放たれた。


 爆発とともに、ミアは空中へ飛び、そこから魔法名を読み上げる。アリスもまた、魔法名を呼んだ。


「ヴァーン!」


「ショットガン!」


 いくつかの魔法が繰り広げられ、観客席にいた魔導士や政府の役員、冒険者たちは「おお」と言いながら見守っていた。


 激しい攻防を見せつつ、アリスはリンから教えてもらった魔法をミアに見せつけていた。また、ミアも同じ魔法とはいえ、同じ魔法を集中して威力を増し、消費する魔力も最小限に抑えることができていた。


 それもあってか、魔導士からアリスの魔力が徐々にミアの魔力と差が出ているのか少しずつ分かってきていた。


 同じ魔法でも威力や消費する魔力を抑えた魔法のミアを勝たせるか、幾つかの魔法を浴びせては、ミアに立ち向かおうとするアリスに勝たせるか、審判の人たち(魔道士、政府の役員、冒険者のこと)は、相談する。


 実践の魔導士からしては努力からして、ミアのことを推薦した。魔力を抑え、威力を増すなど短時間でどうにかできるものではないのだという。


 一方で、政府の役員はミアもアリスもどちらの魔導士も実践ではそう役に立たないといい、両方引き分けにするべきだと提案する。


 冒険者たちはアリスを進めた。いくつかの魔法とそれに見合わない魔力の量とでミアと対当に戦うアリスを推薦した。


 両者が争っている間、アリスは今の自分の魔力ではミアを知に落とせないことを悟りつつあった。ミアは地上に戻っては宙に戻るの繰り返しで、アリスが放つ度の魔法からも回避されてしまう。


 けれども、古代魔法を使えば、勝てるかもしれないがそれはミアに勝利しても、魔導士からしては勝ったとは言えない。


 ミアはうんざりしていた。あの惨めで奴隷のような存在だったアリスがここまで粘り、見たこともない魔法で攻撃する。何か秘策の魔法でもあって攻撃してくると想定し、モニターに移すカメラマンに賠償していたが、意外にもそんなものは一向に見せないでいる。


 あの酒場で起きた魔法を使えば一発でチートとみなして勝利できるつもりでいた。だから、得意魔法である「ヴァン」に磨きを上げ、あの障壁を打ち破る方法を繰り返して取得した。


 だが、あの魔法も一切使わず、見たこともない魔法で攻撃をしてくるアリスにミアは戸惑いつつあった。ヴァン以外に秘策となる魔法など取得していなかったこともあり、アリスがこのまま、攻撃していたら、先に魔力の底がつくのはアリスの方だ。


 けれど審判たちはアリスの魔法を見て、評価を上げるつもりなのかもしれない。そう思うとミアはだんだんと焦りを感じてきた。


 魔力の限界を考えれば、単純に魔力を抑えたヴァンを放てば、努力として認められるはずだ。けれど、アリスに勝ちたという気持ちがこの試合での意味を徐々に潰していった。


「もうやめダー!」


 ミアは叫んだ。


「俺が今からとっておきの魔法をくれてやる。これは手加減できない。アリスの秘策で耐えてみよ!」


 最後で究極でもある最大限に高めたヴァンをアリスに向かって放つために魔力を込め始めた。それは、距離を縮め、魔力をそこに落ちかけていたアリスに強烈なものだというものを肌に衝撃が走った。


 意識が遠のくほどの魔力の量。圧倒的すぎる力の差で負けそうな気持になる。秘策…ラスベルから止められていた古代魔法――障壁魔法で止めようと頭の中に浮かんでいた。


 けれど、それを使おうとしたとき、リンとラスベルが応援してくれている光景が見えた。彼らにも私自身にも恥をかかないように、ありったけの魔力でミアに向かって魔法を放つ。


 それは予想外の魔法だった。


「ラストヴァ―ン!」


「ショットガン!」


 強烈な暴風が大地を砕け空に舞い、会場は障壁で保ったが試合会場は跡形もないほど土の先にある魔法で固められたコンクリートがむき出しになっていた。


 アリスはどこに行ったのか、カメラマンが周囲をくまなく探す。

 すると、冒険者のひとりがアリスを抱きかかえ、散乱した解除へ降りてきた。どこかへ飛ばされたアリスは混信の魔力を放ち気絶した。そこにミアが放った魔法を直撃うけ飛ばされそうになるところ、とっさに駆けつけた冒険者が助けたという。


 一方でミアは強烈な魔力を放ったためか、ふらふらと足を交互に繰り返しながらも辛うじて立っていた。アリスを飛ばした…勝てたと…思いにふけ、その場に倒れようとしたとき、背後から謎の一撃を食らった。


 その喰らったものはアリスが最後に放った「ショットガン」によるものだった。


 カメラマンはその時の映像を捉えていた。


 アリスが放ったショットガンはミアへと行かず、遥か空へ突き進み、光は一つとなっていた。そのあと、衝撃が放ち、暴風によってその場を荒らした。


 アリスの行方をカメラに追い、冒険者によって助け出された様子を見た後、ミアに視線を向けた途中でショットガンの残片がミアの後ろから方向からアリスへ戻ろうとした矢先に打たれた。


 アリスが最後に放ったものは、先ほどまで迷っていた政府の役員の心を震わせ、誘導するというコントロールの腕に魔導士は歓声し、助けた冒険者はアリスは立派な魔導士だと認めた。


 この結果は、ミアとアリスが起きる明日にて知らされることになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る