第14話 失くしたもの(2)
男を追い、男と初めて目が合ったとき分かった。
―――誰かを殺す目をしていたことに。
「なんか様ですか?」
疲れ切った声で聴いてきた。ラスベルは緊張しながらも煙草をくわえ、冷静にいった。
「その本、どこで手に入れたのですか? その本はあなたには扱えない呪われたものなのですよ」
男は「え、そうなの?」ときょとんとした表情で答えた。意外な回答にラスベルも動揺するが、相手を困惑させようとしているのかもしれない。冷静に戻し、その本はどこで手に入れたのか改めて聞いた。
「これは――」
男が言うには、巷の雑貨店でたまたま見つけたものだという。その本は普通、魔導士でさえも魔法に興味がない人間でも触れれば、呪われてしまう可能性もある本だ。まず、魔導士はその本は持たない。ならば、この本を手に入れようとするのであれば、なにか復讐か殺すために扱おうとしている人間しかいない。
ラスベルは再び緊張が走る。
「その本はあなたには、扱いが難しい。どうでしょうか、俺は魔導士だ。その本と取引で、俺があんたの魔法として役に立とう。どうだ?」
わざわざ殺しのための協力に手を打とうとしているが、でも、せっかく見つけた魔法本を手放すわけにもいかない。殺しになっても、そのときに考えれば済む話だ。
ラスベルは男の回答を待った。
少し沈黙の後、男はそれでいいといった。取引成功だ。
+++
男はロードと名乗った。ラスベルも名乗り、本と取引に応じ、ロードの依頼のことを承けたわった。ロードという男はある人物を追っていたそうだ。
そいつの名は…サルズという名だそうだ。
ラスベルの記憶の中に、その名を一度だけ耳にしたことがある。
サルズ。物理を一切通じないほど竜ほどのウロコをもち、頭も意外と切れる。戦うには魔導士を連れ、魔法でたたけばいい。彼らは接近戦を好むが、遠距離戦は嫌い、離れたところに魔導士がいても、決して近づかず、そのまま待機するという方法にでるという輩だ。
出会ったことはないが、そうとうやるらしく、魔導士の中ではランクが低い相手と言われているが、剣士など接近で戦う者たちからはランクが高い相手としてしれられているという。
そんなサイズたちがロードと一体何があったのだろうか。興味が湧いてくる。その理由もロードが話してくれた。
7年前、ロードは家族がいた。妻、息子、娘と4人家族。
首都から離れた山の中で小さな家で住んでいた。息子はロードと同じ剣士の道を歩みたいといい、娘は妻の魔導士に憧れていた。
ある日、ロードは仕事の都合で、家を離れとある都市にある所属先のギルドに顔を出していた。ギルドとは冒険者や一般人たちが通い仕事をするような会社に近い施設のことだ。
派遣社員に近い構造で、仕事は営業――情報屋が集め、ギルドにいる技術者や冒険者たちに仕事の依頼の手配書を張り、その依頼を受けた冒険者や技術者を情報屋が案内するといったものだ。
その日も、ギルドに所属していた友と一緒に、討伐依頼を引き受け、とある山地へ向かっていた。その山地では、サイズと呼ばれる民族が、村々を襲い、人々を苦しめていたというものだった。
サイズは4体。子供が2体と大人が2体。まるで、ロードと同じ家族構成だった。
被害が出る一方で、派遣されたのは他ギルドからの加勢者の魔導士と弓士、ロードと友の斧使いの4人の構成だった。
情報屋を頼りに、ロードたちは奇襲し、サイズたちを分裂させるために弓士と魔導士の爆発魔法で錯乱させていった。
最初は、小屋の隅っこで泣きじゃくっているサイズの子供をロードが切り落とし、村から逃げ出そうとするサイズの子供を離れた位置から放った矢が頭と心臓に貫かれる。
それを見ていた大人のサイズが慌てて、子どもに近づくところをロードは足を粉砕。サイズは悲鳴を上げ、誰かに助けをもらおうとしていた。けれど、ロードはその悲鳴でさえも目障りといい、喉を剣で貫く。
サイズは大人であれ、喉は脆い皮の装甲。子供はまだ剣でさえも弾くほどの鱗はなかったほどの大きさだった。
とどめは魔導士の手によって子供と大人を焼き払い砕け散った。
ところがミスをした。このとき、サイズの大人1人を見逃してしまった。探したが、見つからず。仕方がないので、サイズが逃走したことと、サイズを討伐したというサイズの皮膚の皮や爪、頭などを持ち帰り、依頼主からお金などを受け取った。
ロードは都市で仲間と離れ、ひとり家に戻った。家族の元へ。
だが、このときすでにロードの家族は死んでいた。
家に帰宅したのは仲間と解散後…2時間後のことだった。途中の行商人が乗る馬車にお金をはたいて乗せてもらい、わずかな時間で移動することができた。本来は3時間かかるところを2時間で済ませたのだ。
出費は少ししたものの、得られた金額は1年間は使っても使いきれないほどのお金が転がり込んでいた。ロードがいつもののように家に着くなり、「ただいまー」といい、扉をノックした。
けれども誰も返事がない。おかしいと思い、もう一度声を上げた。
しかし、誰も出てこない。嫌な予感がしたロードは、家の扉を開け、悲惨なことになっていたことに驚愕した。
娘は四肢がもがれ頭には直径7センチほどの包丁で貫かれていた。娘の部屋だった場所には、娘のもがれた四肢がばらまかれており、それは悪臭漂うほどだった。
息子は家から離れた場所で倒れていた。それも両目をくりぬかれ、穴という穴には何本の矢も突き刺さっていた。
しかも、妻も息子のすぐ近くで倒れていた。息子と同じく両目が潰され、喉はかみ砕かれていた。止まらない出血の中、妻は最後まで奇跡的に生き残っていた。
何があったのか、聞くが妻は答えられず、愛するロードが帰ってきたことに安堵したのかすぐに握っていた手は冷たくなってしまった。
大きな叫びと共に、重なって奴が姿を現した。
憎しみと恨みを重ねるサイズの大人のひとりがロードに睨みつけていたのだ。
この話からして、サイズの苦しみと憎しみをロードの家族と同じ風に与えたものだと。だけど、サイズもロードも同じで家族を殺されたのだ。
どういうあがくにも、依頼を引き受けた以上、やらなければならない。
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