第9話 魔女の伝説(4)

 崩れた瓦礫の中から、小さなカギを見つけるラスベル。クローバーを模した鍵の形状にラスベルは何か魅かれる気がした。


 それは、研究者ならではなく、なにか懐かしいもののようなものが感じた。


「死ね」


 と、突然どこからか声がした。ラスベルは声のした方へ振り替えるも誰もいない。おかしいなと思い再度、正位置戻すと、そこに魔女がいた。


 ラスベルは特に驚くこともなく、魔女に出会えたことに感動したのか無邪気の子供のようにはしゃぎだした。


 これを魔女はため息が出た。


 先ほどのアリスのような恐怖の態度とは裏腹の感動するという態度に今までないものと遭遇したもので、なぜかため息が出てしまっていた。


 魔女に対してラスベルは何かと質問をしてくる。「なぜ、ここに住んでいるの?」、「興味いっぱいだよ、君も旅行者?」、「噂と裏腹で面白さいっぱいだよ、ねえ君もそう思わない?」と、いままでそんな風に言ってくれた人もいなかったので、魔女は困惑していた。


「私が怖くないの?」


 魔女は恐る恐る聞いてみた。


「別に、怖いというよりも興味津々だよ」


 と、また輝かせる。こういう場合にどう反応したらいいのか困惑する。その時だった、先ほど忠告したはずのアリスがラスベルの名前を呼びながらこちらの方へ走ってきていたのだ。


 魔女は再び姿を隠そうとすると、ふいにラスベルは魔女の手をつかみ、こういった。


「君の呪い、原因は判明済みだよ。少しの間だけ――」


 と、言いかけたとき魔女は強く手を振るほどいた。


「ふざけるな!」


 魔女は強く恨めしい感情でラスベルに言い放った。

 魔女はゆっくりと宙へ浮かぶと、ラスベルたちに再度忠告した。


「これ以上、ここに来るな!」


 そこにラスベルの声が跳ね返る。


「ふざけるな! 君の苦しみ、俺たちが古いほどけてやる!」


 アリスは「は?」と意味不明な疑問を浮かべる。ラスベルはクローバーの鍵をアリスに託すなり、「箱をさがせ」と言わんばかりに、魔女の方へと駆け寄った。


 魔女はラスベルを振り払おうと魔法で旺盛するが、ラスベルもまた魔法で旺盛する。


 白い粉が舞う風のなか、アリスはラスベルたちの戦闘から離れ、ひとり瓦礫と白い樹に覆われる建造物の中から、クローバーの鍵に合う箱を探しに駆け出す。


 どこを見ても、箱というものは見つからず、あるのは瓦礫、昔使われていたであろう器具や道具、人の衣服や何かの骨。


 箱という特徴を頭に浮かべつつ、箱を探す。



「ふざけるな!」


 魔女は叫ぶ。ラスベルは魔女の威圧で吹き飛ばされるもすぐに体を空中回転させ、着地する。魔女は何か苦しんでいるように思えた。


 ラスベルはなにか訴える。そして、魔法を放つ。


「ダガン」


 建造物のなれの果ての煉瓦や木の破片などの瓦礫が宙を浮き、魔女へ放たれる。魔女はそれを拒絶するかのように薄い膜のような障壁を張り、瓦礫を弾く。


 魔女は再び叫び、ラスベルを町から追い出すように威圧を開け、衝撃波を生む。ラスベルは近くにあった樹にしがみつき、抵抗するも、その力の差は大きく、両腕で樹をつかんでいても、木の根っ子は支え切れるのか、悲鳴を地面から上げていた。


(はやく…)


 ラスベルはアリスにクローバーの鍵の行方を願っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る