第8話 魔女の伝説(3)
白霧の森について、初めてラスベルが口を開く。
「絶景だー! おもろいな」
と、二言しか発声していないが、ラスベルの関心は町全域へと広がっていったのは一目でわかった。ラスベルは色がはがれ、白い粉のようなものが舞った建造物や瓦礫に手を触れたりにおいをかいだりと子供のようにはしゃぎながら楽しんでいた。
アリスはラスベルの好奇心についていけず、後ろでただ、ついていっているだけだった。アリスにとって、ラスベルは変わった人なのかもしれない。
最初にあった時からも今まであったことがない人だった。
アリスは最初、生まれたときから親から常に言われていたことがある「付き合う人は善を選びなさい」と、深く考えれば悪人や変人には近寄るなという意味にもつながる。
けれど、大きくになるにつれ、魔法が扱えない失敗するようになると、両親や姉弟は「生まれたときから悪だったな」と言われるようになり、しまいに人に対する恐怖心と世界が恐ろしいものへと見た目が変わっていった。
ミアという小汚い同じ学年の生徒と知り合うにつれ、善だった人たちも去り、悪と変だけが周りに付きまとうようになり、家族はそれを痛く嫌った。
次第に、食べ物はスープだけとなり、自分の部屋は掃除もされないようになり、ひどいにおいがするようになった。掃除器具を持ち出すと「悪は使うな、汚れる」と言われるようになり、日々、辛くなっていった。
試験に近いこともあり、人と離れ一人で練習していたときに、突然の爆発を起こし、家族に失望を抱かれてしまった。
その夜、ラスベルに遭わなかったら、自殺してそのまま私という物語が焼けて炭になって消えていたのだろう。
と、考えていたところ、はっと周りを見渡すと、ラスベルの姿が見えなくなっていた。いつの間にか考えにふけ込み、周りが見えなくなってしまっていたようだ。
「ら、ラスベルー!」
と、大声で呼ぶも、ラスベルからの返事はなく、静かな白い粉が舞う風の音色だけが聞こえてきた。
そのとき、「あなたはだれ?」と、不気味な声色を使ったような声が左耳から聞こえてきた。アリスはゆっくりと振り返ると、そこには真っ白な髪に赤い瞳がこちらを覗き込んでいた。
「ひぃい」
と、小さな悲鳴を上げた。それは、魔女だった。
魔女はアリスの悲鳴にとくに関心もしめず、右手を開き北の方へと指を指し、こういった。
「いらない人はいって」
と、“いらない”とはどういうことなのかよくわからなかったが、とりあえず謝って、その方向へと駆け出した。途中で、ラスベルのことがもしかしかして魔女は知っているのかもしれないと聞こうと振り返った時には、魔女の姿はなかった。
ラスベル一人でも大丈夫だが、ラスベルなしでここから出ていくことも、助けてくれた恩もできないまま、このまま魔女が指さした通りの場所へは行けず、嫌ながらも魔女の忠告を無視して、アリスはラスベルを探しに、再び町へ目指した。
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