第7話 魔女の伝説(2)
少女が町にたどり着いたときには、すでに少女ではなくなっていた。少女は、途中で拾った本で姿が変貌を遂げた後だった。
水辺に映る鏡に自分の素顔を見て悲鳴を上げた。
まるで真っ白な顔つき、黒ずんでしまった服。真っ白い髪に、赤色の瞳、手足は細く皮と骨だけのようになってしまっていた。
その原因がなんなのかは頭の中にすでに知っていた。
けれど、いまは両親に会いたい、そう思い出いっぱいだった。
住んでいた町はもはや町じゃなくなっていた。
昔住んでいた家は、戦争によって焼かれ、破壊され、後から育った樹によって家は別の物へと姿を変えていた。
少女は「なんで、ここにきたんだろう」と、寂しさと悲しさに包まれていた。姿も変わり、行く先もなくなった少女は、大事そうに抱える本をゆっくりと、自分の机が置いてあったはずの部屋の瓦礫に埋もれた作れの欠片の上へと乗せた。
少女は魔女と変わり、後々訪れる旅人や冒険者たちに牙をむくようになった。
――――現在、ラスベルとアリスは、この白霧に覆われる森に訪れていた。
ここに立ち寄る前、小さな宿屋でこの町の出身だったと言い張る青年に出会った。青年の父がこの町の出身で、変わり果てた町に久しぶりに帰ったところ、魔女と出会いそのまま帰ってきたそうだ。
「魔女が出た」と父が何度も呼び、何度か兵士や冒険者たちが赴き、本当に魔女と出会ったそうだ。倒そうとしたが、信じられないほどのマナの量と強力な魔法によって歯が立たず、危険な町として政府からも、この町へと立ち入りを禁止したほどだと青年が言っていた。
それから何度もうなされる父の代わりに、青年はこの町で魔女をどうやって倒すのかを探していたのだという。
ラスベルは魔女は古代魔法を使っているに違いないとアリスの小耳に囁いた。アリスもそうだと思った。
今の魔法では古代の魔法には勝てない。
ラスベルの感は当たっていた。
魔女と出会ったことで、古代魔法というものがどれだけすごくて苦しいものなのかをアリスはこのとき、はじめて体を震わせていた。
魔法には様々な魔法があり、音を伝った方法で使う〔音魔法〕、尾と尾を叩き、合図や言葉を交わす際に使う〔尾魔法〕、文字などを使って直接書く魔法〔文章魔法〕など様々ある。
それに対して、〔古代魔法〕は、古代人の体に合った方法で使っている魔法で、〔尾魔法〕や〔文章魔法〕と異なり、扱える人物や才能も限られてくる。
現代人では古代魔法を扱うためのマナのコントローラとマナのためておく体の限界値が異なることから、使える人がいない現代では政府によって〔古代魔法〕を固く禁じている。
だが、もし使える人がいるのならば、禁止ではなくなるかもしれない。けれど、それが善悪なのかは扱う人によるもの。
魔女は善悪なのか、アリスはまだ見切れていなかった。
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