第6話 魔女の伝説(1)
白き古い魔女の伝説。
ことの始まりは40年前に遡る。
戦争で建物や家具などが焼け、人々は武器を上げる人々や術者が召喚した猛獣から逃げるように、昔から暮らす町を捨て、逃げた。
戦争はこの町の坑道に眠る鉱石をめぐっての戦争だった。
子供たちのためにと、穴を掘り、抜け道を作るつもりでほっていたところ、一人の作業員が珍しい鉱石を発見したところから始まった。
鉱石の価値を知る行商人が初めてこの町で外から伝わる通貨を差し出し、外部からやってくる人たちによって賑わいを得た。
もともと、この町はいまどき珍しく通貨を使わない物々交換で生活していた。
通貨という毒であり人間を狂わすとされる通貨を開拓者がひどく嫌ったため、物々交換を鉱石が出てくるまで行っていた。
町の外からやってくる人を嫌うが、なぜか行商人だけは通していた。それは、町長が行商人と知り合い珍しいものを仕入れるようになってからは物々交換という方法で契約し、招き入れるようになったからだ。
それが、ひとつの珍しい鉱石によって狂わせてしまったのは当時の町長でさえもわからない事だった。
珍しい鉱石は後に、白銀鋼(はくぎんこう)と呼ばれ、白銀のような色を持つ鉱石で、削れば小麦粉のようにサラサラとなり、熱を通せば固まり、冷やせば溶けるといった不思議な効力を持っていた。
また、この鉱石で作る武具は魔法との性質が合い、属性を纏う武具をいくつか制作することに成功していたこともあり、この白銀鋼の価値は最初の頃よりもぐんと上がった。
ある大富豪がこの鉱石を独り占めにしようと、大勢の兵士や作業員を連れてきて、町の人たちの意見を無視して、勝手に掘り出した。
これに怒った町長は大富豪に問いただすも、大富豪はそれを拒否し、ならば町の住民を追い出そうという話に持ち上がった。
結果、戦争となった。
戦争は3年と続き、大富豪から送られた術者や兵士たちによって町は変わり果て、鉱石は大富豪のお金に換えるためだけに穴だらけにしてしまった。
戦争が終わったのは鉱石が取れなくなり、町にいる住民も誰もいなくなったことから、兵士たちは引き上げ、この町はだれもいない町へと変貌した。
戦争が終わってから数年後、戦争の足跡なのか、町は白い霧に包まれ、不気味な彩りを見せる植物が生い茂り、そこはかつて賑やかだった町とは到底思えない無残な世界へと変わってしまっていた。
ある日、変わってしまった町に一人の少女がこの地に訪れた。
のちに、〔白霧の魔女〕と呼ばれるようになった。
少女はこの町に住んでいた住人の生き残りだった。両親と一緒に町から出て逃げたのだが、途中ではぐれてしまい、途方に暮れていた。
そこに冒険者と偶然に遭い、助けてもらい両親たちと無事に会えた。ところが、両親はそれからわずか数月で命を失った。
父は強盗に襲われ、働いたお金すべてよく思わない人によって取り上げられてしまった。
強盗は翌日に、父が通っている工場の友人だったらしく、同じ町の出身でありながらも日ごろから気に食わなかったようで、脅かすはずがふいなことで打ち所が悪くそのまま亡くなってしまい、自分が疑われてはいけないと思い、強盗のフリをした。
しかし、残されたかすかな血痕と、周囲からの通告によりすぐに捕まってしまった。
「殺すつもりじゃなかった」と鳴いて謝罪していたが、少女にとっては父を返してほしいと強く訴え続けていた。
母は父を失った後、重い病気にかかった。それは巷で流行り病〔マナ欠如〕と呼ばれるものだった。治療方法は最近出たばかりで治す方法はなく、母は少女が看病する部屋で数日という命でこの世を去った。
〔マナ欠如〕は、体内からマナが蒸発してしまい、体内で吐き出されるはずのマナ(二酸化炭素と同じようなもの)が体内にとどまり、息ができず死んでしまうという病気。原因もよくわかっておらず、医者たちは早めに治す方法を探っている。
二人もなくした少女は、両親がいない町を去り、昔暮らしていた街へと舞い戻るかのように、はだしで歩き続けていた。
まるで、過去の自分と両親と楽しかった日々の思い出が詰まっている町へ、もう一度会いたいために出向くようだった。
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