第4話 終わりと始まり(4)
「あわわわ…」
少女が見た先は、いつも学校で虐めを繰り返していた問題児の男だった。
「み…ミア…」
少女はそう呟いた。
「おっ! 奴隷が何でここにいるんだ?」
少女を罵ってきた。しかも、奴隷扱いと。嫌な連中だと人目で見えた。前にも同じようなこともあったのかのような走馬燈が流れてきたが、男は店主から手を放すように、仕向けた。
店主は男の襟をつかんだまま、酒も料理もおいていない机の上へと叩きつけ、「問題を持ち込むなよ!」と念入りに、攻めてきた。はいはいと受け流した。
「み、ミアはどうして、ここにいるの? 私たち未成年でしょ?」
ミアは片耳に指を突っ込みほじくり、指の先端についた耳垢を少女の顔の前で吹いた。
「ッ……」
目をつぶり、顔をそむく。
「私たち…じゃないよ! このくそ奴隷が!!」
少女の顔を両手でつかみ上げ椅子の上へと叩きつけた。少女は涙を流しながら、何度も椅子に叩きつかれることに耐えていた。
「お前のせいでな、俺は去年の試験は上位(トップ)から落ちた! それも、お前の『勉強不足』が原因なんだよ!」
椅子の角に強く少女を打ち付ける。
ミアは少女に向かって端を吐き捨てるなり、あの時のことを詳細に打ち明けた。
「あのとき、俺の苦手部門に集中していれば、下がらなかった。お前が言った回答方法の通りにやったら間違いだった。しかも、お前が教えてくれたやり方…苦手部門で試したら失敗したよ、お前のせいで世間から落ちこぼれになっちまった。お前も見かけるなり、叩きつけたいと思うようになったよ!」
と、鋭い眼光でにらみつけ、少女の頭を鷲づかみに向きだした口から唾を少女の顔に飛ばしながら罵る。
その様子を見ていた店主は、胸ポケットにあった煙草を取り出し、吸おうと火をつけたとき、ボロボロの服の男はとっさにそれを奪い、自身の口に当て吸い始めた。
店主は「ちょっ!」と言いかけたとき、ボロボロな服の男は煙草をふっと吸い吐き出す。それと同時にせき込む。
「あー…800年ぶりにの味だ、でも味は鮮度落ちだな…まあ、これでもいいかな…」
煙草をもう一度吸い、味を堪能した。店主は返すように要請した。男は腰の方に手をかけた。ボロボロになった当時の煙草が出てきた。けれど、色は吐き、中身は虫に食われており、手に加えても味は何一つしないほど無の味となっていた。
その煙草と一緒に店主から奪ったたばこと一緒に店主にわたし「土産だ!」と言い、店主の口元へ火が付いたタバコと逆の方から詰め込んだ。店主はせき込み、火が付いたタバコは割れたワインの上へと落ちた。
ボッと火が広がった。周りにいた乗客は火を食い止めようと水の魔法で沈下し始めた。火はあっという間に消え、店主も軽いやけどで済んだ。
その光景を見ていた男は、ミアにこういった。
「おまえ、それいちゃもんだろ?」
「は!?」
「俺からしたら、そんなもの自分の責任だろ? 下がったのはその時の自分の間違いに気づけなかった愚かな頭だったからだろ?」
「おま、なにを言って…」
ミアは少女の頭から手を放し、ボロボロの服を着た男に向かっていった。その様子をうっすらと滲む目からボロボロな服をした男に向かって何かと唱えているミアがいた。
「訳はどうでもいい、それと――恩人は奴隷じゃない! お前は、醜い害虫そのものだ」
と、男は言い捨てた。ミアは「ふざけるな!」と、背中から杖を取り出した。それは、魔法使いが専用とする杖だ。
「これはな、俺が入学したときにサヴァ先生から直接もらった上位の魔法が使える杖なんだ」と、ミアは口が震えながらそう言った。
「これはな、本来はこういう場所では使わない方がいいと言われていたんだ。でも、我慢がならねえ、俺の本位として、お前を抹消することにするわ」
と、ミアはなにか声に出さないように早口で唱え始める。その様子をただ単に見ていた男は、傷つき倒れていた少女を抱き起し、耳元にそっとつぶやいた。
少女は「え」とつぶやくと同時に、ボロボロの服を着た男は「相手はこの子がしてくれます」といい、倒れた椅子を元に戻して、その場に座り、煙草を吸おうと腰のポケットに手をかけるがないことに気づき、頭をぼりぼりとかきむしりながら、ミアを見つめていた。
(え、えええ!)
少女は気が動転していた。突然、男からある魔法名だけ言われ、混乱していた。魔法使いは魔法名とイメージしやすいものと一緒に知識として本や人から教わるもの。それをただ、魔法名だけ教えられただけなんて前例がないことに、少女の意識はパンクしていた。
そこに「集中だ、ただイメージしろ、魔法名に気をむくな。そのままの意思で行け」と、何かを期待している素振りで男は胡坐をかきながら、ミアの様子を見ていた。
少女は意識を集中し、まっすぐできないと足をふらつくも言われたとおりにやった。すると、少女の前にうっすらな壁が創られていく。少女の後ろには男がいる。
壁は少女たちを守るかのように作り出されていく。
「爆風に吹き飛ばされ! ヴァーン!」
「お願いまもって、アギトラナ!」
バーンと爆風が学生服の男を壁を突き破って吹き飛ばし、少女を含む男と他の客たちには無害だった。客や店主が何が起こったのか、わからず、ミアも自身がなぜ吹き飛ばされたのかわからずにいた。
少女もまた、わからずにいた。
男は立ち上がり、拍手し大いに笑った。
「旨いなーさすがだ!」
男は満面な笑顔で拍手しながら、唖然とする店主や客たちを尻目に少女を連れて店を後にした。
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