第4話 有翼人のお姉ちゃん

 今日は昼休み。

 クラスの教室で弁当を食っていると、

「何というか、私は強いんですよ。がおー」

  

 ああ、癒された。

 じゃなくて、俺は、狐人ちゃんに絡まれた。

 だが、青いブレザーを何故かワイルドキャラだと言いつつもきっちりと着た狐耳。 可愛い、愛らしいが似合う両手を上げて脅かす狐耳のお嬢さん(高校生らしいが中学生)なので怖くない。

 ちっとも、どこまでも。


「はいはい。かあいいかあいいよ。ウリウリ」

「いやああ、私はエルフに可愛がってももらうような存在ではありませんよ! いやあ、耳はぁ、やめてください~。あわわ」

 どちらかというと、狐人ちゃんを頬ずりするエルフちゃんの方が怖い。

 美少女というカテゴリに入るものの、俺の家での傍若無人っぷりが酷いのだ。


「ああ? 何か言った?」


「何でもありません」

 俺の心を読むとかやめてくださないでしょうか。

 本当に勘弁してください。

 いやいや、マジで。本当に。

 あとは顔が心底嫌そうで侮蔑に満ちた目が、俺の心を大変えぐるのでやめてくださいませんか。


「あんた、顔に出やすいのよ。何というか、根が単純なのかな。うん、きっとそう。頭が悪いせいかもしれないわね。納得できそうよね」


 やめてください。俺のHPは0ですよ。

 言い換えると俺のハートの死体蹴りをやめてくださりませんか。

 と、言いたいが、多分笑われて、余計に悔しくなりそうなので黙っておきます。俺のガラスのハートよ耐えてろよ。


「あらあら、何をしていらっしゃるのですか」

 と不意に窓の外から人の姿が見えた。

 ちなみにここは3階なので、人の姿何て見えたら生徒か先生が飛び降りたということになってしまうのだが実際は違う。


 おっとりとした声。

 というか、ですわ~と言うような間延びしたのんびりした声。

 母性を思わせてくれる安心させてくれるようなお姉さん声。

 

 俺は窓を開けて、その声の主を迎えた。


有翼人ハービィさん。教室の扉から入ってきてください」

「だ~って、この方が早いんだもの~」

 ホバリングさせるがごとく2対の白い羽を羽ばたかせて、彼女は答えた。

 

 まあ、有翼人さんの答えにも一理はある。

 彼女は羽根もそうなのだが外見もエルフちゃんのような美少女ではなく、狐人ちゃんのようなロリ巨げふん、羽化前の少女ではないが……。

 そうだな、モデルのようなすらりとした体に赤い髪に目鼻の通った感じだが、眼がたれ目で大人びた柔和な女性の印象。

 実際のクラスはお姉ちゃんという呼び名がついてしまっているそうな。

 同い年のはずなのだが。


「で、どうしたんですか。有翼人さん、あなたのクラスは隣ですよね。また、何かありましたか」

「そうなのよ~。また、ラブレターが下駄箱に入ってて。断って? ね! この通り!」


 いや、普通に断りなさいよ。

 と俺は声を出して言いたいのだが、彼女には色々と借りがある。

 俺のクラスには亜人がエルフちゃんや狐人ちゃんもいるが、他にもいる。

 普通の学校なら亜人がこんなにいるわけがないの。しかし、この学校は亜人交換留学学校ということで、多いわけなのだが俺のクラスである。

 そして、亜人たちは常識をあまり知らない。

 答えはわかるだろう。彼らは割と問題を起こしやすい。


 なら、エルフちゃんが借りを返すべきなのだが。

「何よ。その顔。私が男が嫌いで蹴倒すのが嫌なの」


 特にうちのエルフちゃんは性格が過激なせいでトラブルメーカーである。

 そのフォローをするのがホームステイ先の同居人である俺だったりするが、如何せん一人でできることは少ないわけで、そのフォローをしてくれるのがお姉ちゃん有翼人さんである。

 うちのクラスの亜人は馬鹿か、喧嘩っ早いやつが多いので、この有翼人さんに手伝ってもらうしかなかったのだ。

 というわけで、断りにくい。

 しかも、だ。


「わかりました。俺が断ってきますよ。ホント、断るのが苦手なんですね」


「ありがと~」


 ぎゅむ。

 と割と大きなおっぱいで俺を包み込んでくる有翼人さん。

 うん、天国だ。

 有翼人だからこそ、天使かな。


「おっぱいの国の人になればいいんだアンタなんて」

「私だって負けないんだから」


 近くの亜人女性陣の言葉が冷たい。

 

 だって、男の子なんだもん。



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