第2話 狐人ちゃんとクラスメート
「なんつーかさ、あんた邪魔なのよね」
という理不尽な理由で
俺は超特大のため息をついた。
そりゃまあ、普通に家でゴロゴロ無料のスマホゲーをしているとかさ、根暗ですよ。言われなくても分かっているわけですが、ならついてきてくれるとかさ、外出イベントがあるとかあってもすこ~~しはあってもいいじゃないか。
それが、邪魔の一言でデニムとTシャツだけで追い出すとか。
自分の財布がデニムに偶然入っていなけりゃ、公園でぼーっとしているとかできなかったしさ。
しかも今は6月だからいいものの、本当の夏だったらマジで干物になりかねん。
と言いつつもコンビニで適当にものを買うしかない俺にまあ、何も思いつかない仕方ないよなとか独り言をつぶやく。
かったりーとか思いながら、ふと家から一番近い牛乳瓶の絵が描かれたコンビニへと向かう。
「がおー」
と、そこでものすごく可愛い女の子の声が聞こえた。
その子は子供に囲まれながらがおーと鳴いている。
白いブラウスに紺色デニム。ラフな感じがするんだけれども、顔は童顔といっただろうか。
目が大きくて、ぷっくりとした頬。子供たちを多分威嚇しているつもりだし、多分恰好も怖いように見せかけているのだろうか。
だけれども、デニムからこぼれる金色に近い尻尾がフリフリ揺れているのと尻尾と同じ色の金色っぽい狐耳と締まりのない顔で迫力はない。
よく言えば面倒見のいい中学生が小学生と遊んでいるようにしか見えない。悪く言えば、浦島太郎の亀のような感じか。
背もそんなにおっきくない。ただし、一部が大きくて何というか、ロリ巨乳の特徴あり過ぎの
「何してんだ」
「あ、こんにちわ」
とロリ可愛い彼女が笑みを向けるが、はっと気づいて、がおーと言う。
「まだ、孤高の狐人を言っているの? それは人狼の方が似合うと何度も言っているじゃん」
「だって、私だってかっこよく見せたいんです。だから、今日もこの子たちに手伝ってもらって孤高の獣人魂を見せるためにはどうすればいいのかをご相談していたのです」
相談する相手が間違っている。
と俺は言いたいが、彼女にそれを言うとお豆腐メンタル故にがっかりとへこむのだ。狐耳が垂れ下がり、まさに犬科の獣人というのを思わせてくれるわけなんだよな。
はあ、この子が異世界のホースステイ先をウチにしてくれればよかったのに。
うちにいるのは
しかもこの子、性格に残念なところはあるけれども頭はいいし、魔法を使えるだとか。
「ねね! 手伝ったんだから狐火とか使えるんでしょ! 見せてよ」
「使えるけど、あんまり使うと疲れちゃうからね。しょうがないなあ」
と小学生から言われてハイッと見せる姿は可愛いわけです。
何か呪文のようなものを詠唱すると、ボッと彼女の右手に小さな種火のような黄色い火の玉が生まれた。
「すげえな。2回目だけど流石異世界の人間だな」
「えへへ。でも、疲れちゃうし危ないからおしまいかな」
と言いつつ、彼女は狐火を収めた。
小学生たちはつまんな~いと口々に言うが、火は危ないし、こっちの世界では
魔法なんてそんなに使えるものじゃないらしい。
その辺の理屈はまあ、どうでもいい話なわけで。
ただ、彼女の狐耳がピコピコして、尻尾が誇らしげにパタパタしているのが笑えてしまう。
「何ですか。私変ですか。がおー」
「変だなあ。そのがおーすっごい変」
「何でですか~。私一生懸命頑張ったんですよ」
「一生懸命って、言っても可愛いからね。小動物的な意味で」
「可愛いって、しかも小動物って、私は狐人コン族長の娘だし! 強いし!」
俺は可愛い狐耳の頭のぽんぽんとなでる。
「可愛い可愛い。一家に一人欲しい妹」
「なっなっなっ、いけませんよ。男の子が女の子の頭をなでるとか」
狐ならぬタコみたいに顔を真っ赤にした狐っ子が怒る。
はい、おかずで3杯いけますよ。
「もう、ほんと困ったものです」
彼女は仕方ないとばかりに両腕を組んだ。
「ほんと、困ったものです」
口元を緩めと大きなたれ目で俺を見つめる彼女。
何故か、俺は同じ高校生を感じてしまった。
ドキっとさせるその仕草は可愛い同い年の子にしか見えない。
女の子って怖い。
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