俺の日常はファンタジー?(改題:ファンタジー世界の人間が現代日本に来た日常)
阿房饅頭
第1話 無防備エルフちゃんのホームスティの日常
俺は女の部屋にいる。しかもそこにいるのはゴムで後ろを適当に縛っているものの、後ろの肩甲骨くらいまである綺麗なサラサラの金髪の女の子。普通ならドキっとするシチュエーションだ。
しかもその彼女はほっそりとしたボディが妖精めいたというか、そのまま妖精と呼ばれるようなエルフという人種だというのだからこそ、喜べるはずだ。
が、だ。
「なにこれ、面白くないわね。今どきエルフが高潔で潔癖だとかないわー」
とか、WEB小説をスマホで見ていて、ゲラゲラ笑う高校のクラスメートのようなヤツ。しかも性格はエルフだというのに、どっちかというと気の強いクラスカーストの上っぽいヤツときたらどうだろうか。
確かに異世界と俺たちの世界がつながって、あれよあれよと異世界と国交が成立。 気づいたら、新しくできた法律やら何やらでホームステイ先に俺の家が選ばれて、驚いた。
でもって、最初は俺はおっかなびっくりでドキドキした。もちろん、相手のエルフちゃんも最初はすまし顔だったのに気づいたら、俺の部屋にズカズカと入って、漫画を読むわ、気づいたら借りパクをしようとするわ、とうざいことこの上ない。
「何? 何か文句あるの? あるならちゃーんといいなさいよ」
色々とありますよ。けれどもお前言ったら魔法で俺の体に植物を巻き付けて、文句ないよねと力技で黙らせちゃうよね。
「まあいいわ。お姉さまの弟がこんなモヤシだとかないわ、とか思っていたけど、あたしの舎弟としては最高よね」
うん、やっぱうざいっす。
暴君たる大学生の姉になついて、性格がどんどん面倒な感じになっていって、外面はいいんだけど、家に帰ってきたら俺を足蹴にするのは当然。パシリにしたことも何回か。
今だって、俺のベッドの上で寝転がって、薄着のノースリーブでブラが見えそうな感じなのに色気がない、ああ、そうか胸がない。
大平原まではないけれども、何というか、低い微かな山のようなもの。
なるほど、これがエルフたる彼女かな。
「ヤドリギの種を植えて縛るわよ」
ワカリマシタナニモイイマセン。
「あんたの思いそうなことってわかるわよ。顔に出てる。わかりやすいわ。舎弟。すごいわかりやすすぎて笑っちゃう」
そうですか。俺の顔って本当にわかりやすいのね。
ま、そんなこんなで高校1年の入学前からそろそろ1年。
ある意味、姉の妹、つまり、俺の妹のようなこのエルフちゃんはどうにも恋愛感情を持つことはない。
だからこそ、俺の部屋に入れても問題はない。こいつは妹だ。
魔法は使えるけれども、何というか日常の一部となってしまった。
そういや、年頃の男の子とエルフの女の子がひとつ屋根の下というのはよくないとか、思っていたが、何というかどうでもよくなってしまった。
「うーんあっつい。クーラーかけてよ」
まだ4月の連休前。しかも夜ということでそんなに暑くはないはずだ。
どんだけ暑がりなんだ。
「あたしはエルフだから暑いのは弱いの。森の中は涼しく保たれていたのよ。お分かり?」
といいつつ、夏はプールに出かけて、日に焼けていたのはそんなに遠くない記憶だったりする。夏を満喫して、暑いのも悪くないとかはしゃいでいたような。
そういや、あの時だけはちょっとダークエルフっぽかったな。
「うっさいなあ。その時はその時。今は今」
へいへい。俺は丁度いいというか、この時期にクーラーをかけるとか、風邪をひくような気がしてたまらない。
「はいはい。わかりました。クーラーは我慢しーまーすぅ。はーあっついわぁ」
とエルフちゃんがパタパタと手で仰ぐと脇の部分から少しだけ白いブラのようなものが見えた。
見えたのは偶然なだけで、俺のは事故だ。
「ふーん。何かエロい目線を感じたんだけど、気のせいかな」
気のせいです。
「ほんとかな。すっごいすっごい、思春期の少年の目線を感じたんですけど。まっ平らなあたしの胸を見て幸せになるのかな。ふーん、やっぱりあたしって、魅力的かな」
調子に乗るな。何だその気持ち悪いほど、口元の猫みたいな笑みは。笑いをこらえてますよとばかりに目も笑っている感じ。
「はいはーい。エッチ」
ノースリーブの肩口からチラっと見せる白いブラはちょっとだけ眩しくて。
ちょっと上目遣いの緑色の目は幼く見えて、小悪魔めいている。
この
「うっさいなあ。まあ、いいじゃん。あんたにもそーいうところがあってさ。草食系かと思ってたけど、男のらしくていいよッ」
は? それはどういう、誉め言葉? けなしてんの?
「うっさい忘れなさい」
といいつつ、エルフちゃんは何故か顔を赤らめていた。
照れ隠しだと。
今のどこに。
あるのだというのだ。理解ができない。
「はいはい。あんたはWEB小説の主人公にはなれない。精々、漫画やラノベの鈍感主人公なのよ」
それはどういうこ。
「はーい、ここでおしまいよ。植物の蔓」
ベシっと植物の蔓が俺の鼻に叩きつけられた。
いてえ。
そして、エルフちゃんは占領していた俺のベッドから立ち上がり、気づいたら部屋のドアを開けていた。
一瞬だけ見えた彼女の頬は何故か真っ赤になっているような気がした。
うーん、何故だ。わからん。
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