第5話 俺の記憶Ⅱ(探し物)
リョウスケ「おい、君!! そんなところで突っ立ってたら危ないぞ!!」
リョウスケが公園の入り口で突っ立っている女の子の元へと駆け寄る。
そして俺もリョウスケに付いて行く。
???「………。」
その子はハッとするが、黙ってリョウスケの顔をじっと見ている。
リョウスケ「こんな道路のど真ん中で君は何をしてるんだ…?」
???「………。」
その女の子はやはり喋らない。そして少女は何故か、少し涙目になっている。
一体どうしたんだ……?
リョウスケ「どうしたんだ……? もし何かあったなら話聞くけど……。」
正直、話しにくい。有難いことにリョウスケが勝手に話を進めてくれている。
少女の見た目は、小学生の中学年ぐらいか……?
ソウタ「あの…、」
俺も話し掛けようとした時だった。
少女「……無いの。」
ソウタ&リョウスケ「……は?」
少女「私の大事なペンダントが見つからないの……。」
女は少初めて口を開いた。
ソウタ「え……。」
少女「私この前、誕生日だったの…、その時おばあちゃんが作ってくれた大切なペンダント……!」
リョウスケ「探し物か。一体、どんなペンダントだったんだ?」
少女「星型をしていて真ん中に文字が書かれてるの。」
ソウタ「文字? どんな文字が書かれてるんだ?」
少女「私の名前……。」
リョウスケ「名前? ああ、そうか。君へのプレゼントで手作りのペンダントだもんな。そりゃあ名前くらい入れるか。」
ソウタ「そういえば君……名前は……?」
少女「………シス。」
ソウタ&リョウスケ「え?」
シス「私、
……凄い名前だな。
ソウタ「………シスちゃんか。じゃあ俺たち丁度暇だったし、一緒にペンダント探してあげようか?」
シス「えっ……、一緒に探してくれるの……?」
リョウスケ「誕生日にもらった大事なペンダントなんだろ? よかったら俺たちも協力してやるぜ?」
シス「……ありがとう……!!」
リョウスケ「俺は 鞠宮 涼介 。そしてこいつは俺の友達の 志々目 草太 だ。よろしくな。」
……流れで勝手に紹介された。
シス「うん、よろしく。リョウスケお兄ちゃんにソウタお兄ちゃん。」
……”お兄ちゃん”か、悪くないな。
…………………………。
まあ、どうせすることもなくて暇なんだ。リョウスケも暇だから公園に来たのだろう。
そうした成り行きではあるが、俺たちはシスという女の子のペンダント探しを手伝うことになった。
ソウタ「とりあえず探してみよう。1人で見つからないものでも、3人で探せば見つかったりするかもしれないぞ。」
リョウスケ「そうだな、落とした可能性のある場所を色々と見て回るとするか。」
…………………………。
俺たちは雑談をしながら探していた。
リョウスケ「そういえばシスちゃんって何年生なんだ?」
シス「……3年生。」
リョウスケ「3年か。じゃあ年は9歳ぐらいか?」
シス「……うん。私、9歳。」
3年生の9歳……か。俺の予想は大体当たっていたみたいだ。
ソウタ「そういえばずっと思ってたんだが……ペンダントはここら辺りでなくしたのか? 公園でなくしたとか?」
シス「うん……今日の朝にペンダント持ったまま、おばあちゃんと一緒にお散歩してたの…帰ったら入れてた筈のポケットに入ってなくて…お家までの間で落としちゃったんだと思う……この公園の前の道は、その時の散歩道に通った道だったんだ……。」
リョウスケ「家はここから近いのか?」
シス「うん、すぐそこだよ。そんなに長くお散歩してなかったからすぐに見つかるかと思ったんだけどなぁ……。」
ソウタ「家までの道、
…………………………。
リョウスケ「シスちゃんの誕生日はいつだったんだ?」
シス「2日前だよ。」
………めちゃめちゃ最近じゃないか。
リョスウケ「そうなのか、じゃあ2日間ずっと持ち歩いてたってたって訳か。」
シス「ううん、それは違うよー。一昨日の夜におばあちゃんに貰って、昨日はお外に出てないから今日だけしかお外に出てないの。だから今日の朝、おばあちゃんとお散歩してた時に落としちゃったと思うんだけど……。」
…………………………。
探し続けて時間がいくら建っただろうか。
段々暗くなって来た。夕方…いや、もすうぐ夜になろうとしている。
ソウタ「……辺りが暗くなってきたな。夜になったら視界が悪くなって余計に探しにくいぞ……どうするかな……。」
シス「折角おばあちゃんに貰った大切なペンダントなのに失くしちゃって……、見つからなかったらどうしよう……。」
シスは凄く悲しそうな顔をして落ち込んでいる。
リョウスケ「……シスちゃん、おばあちゃんには失くした事情は話したの?」
シス「ううん…話してない…。失くしたことを伝えたら、怒られちゃう気がするの………。」
ソウタ「………。」
リョウスケ「……明日も一緒に探してあげようか? ほら…俺たちもどうせ夏休みだから暇だし…よかったら見つかるまで手伝うよ。」
シス「………。」
俺の言いたかったことをリョウスケが代弁してくれた。俺だって同じ気持ちだ。
ここまで必死に探してるんだ。俺だって見つけてあげたい気持ちはリョウスケと同じだ。
リョウスケ「君のおばあちゃんだって許してくれるはずだよ。シスちゃんがワザと失くしたわけじゃないんだから、事情を話せばきっと分かってくれるはずさ。」
ソウタ「………。」
やばい、さっきから聞いてるだけだ。俺、何も発言出来ていないんだが。
リョウスケ「ソウタ、お前も探してくれるよな。」
ソウタ「ん? あ……あぁ、もちろん。」
……少し変な返事をしてしまった。
……気持ちが沈んでるシスちゃんに、何か別の話題でも振って気でも紛らわしてあげるか。
ソウタ「……ねえ、シスちゃん。」
シス「ん? どうしたの、ソウタお兄ちゃん。」
ソウタ「さっきペンダントの形は星型だったって言ってたけど……、シスちゃんもしかして星が好きだったりするのか?」
…無理やり別の話題を引っ張りだした。少し強引だったか。
シス「えっ…うん。大好きだよ! よく家族でお出かけする時に、星を見に行ったりするんだ。」
…って思いの外、食い付きが良いな。
リョウスケ「へぇ……趣味は天体観測ってわけか。普段はどんな星を見ているんだ?」
空気を読んだリョウスケが、俺の
シス「えっとね…普通の星はいつでも見られるし〜、毎日散々見ちゃってるから特別感は無くなっちゃったんだけど〜……
リョウスケ「彗星か……シスちゃんは見た事あるのか?」
シス「……それが、まだないの……。」
リョウスケ「そうか……いつか見られるといいが……、まあこれからも星を見るチャンスなんて、待てばいくらでもあると思うぞ!!」
シス「うん! 私も一度で良いから見てみたい。いつか絶対に見るって決めてるの!」
リョウスケ「ははは、決めてるか。決まってるなら心配ないな。」
シスとリョウスケは二人で笑っていた。
…………………………。
ソウタ「……暗いな。」
知らない間に夜になっていた。
あの後もペンダント探しを再開したものの、結局ペンダントは最後まで見つからなかった。
リョウスケ「シスちゃん…もう遅いから探すのは明日にしよっか。暗いし、こんな時間まで一人で探してたら危ないと思うぞ。それに君の家族たちだってきっと心配してるだろうし。」
シス「……うん、分かった…じゃあ二人は明日も一緒に探してくれるの……?」
リョウスケ「ああ、もちろん。一度約束したんだ。見つかるまで付き合ってやるさ。」
ソウタ「……俺も協力するよ。」
…………………………。
なんだかんだで明日の話もして、とりあえず今日のところはみんな帰路に着くこととなった。
シスはリョウスケが家まで送ってくれるらしい。俺は…一人帰りだけど。
俺は家に帰るとさっさとご飯を食べて、風呂に入って、眠ることにした。
今日はペンダント探しで疲れた。
明日もシスとペンダント探しの続きの約束をしている。
明日に備えてさっさと寝るか………。
シスのペンダント………無事に見つかるといいな。
………俺はそう願っていた。
<__俺が死ぬまで、あと4日__>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます