第3話 天界の創造神

俺がメイプルに連れてこられたのはやたらとクソでかい建物だった。


ソウタ「……ここは?」


メイプル「ここは創造神様が住む天界の『アルミア大神殿』だよ。」


ソウタ「へぇ…神殿か…。」


それにしても馬鹿でかい建物だ。こんなド広い神殿に住んでるのか創造神様ってのは。贅沢な奴だな。まあ、世界を見守る創造神なら、これぐらいの住まいがあってもおかしくはないか。


ソウタ「んで……、中に入るのか?」


メイプル「うん、そうだよ。これから創造神様の居る所まで案内してあげるね。」


ソウタ「そうか、じゃあ頼むよ。」


こうして俺は神殿内をメイプルに案内してもらうことになった。


…………………………。


……それにしても未だに信じられない。俺が死んだなんて。メイプルから教えられた俺の記憶については確かに筋が通っていて、有り得そうな話ではある。だが信じたくはなかったから、こうして自分の中でまだ自信の死について否定し続けている。俺の記憶が不安定だからこそ、まだ俺が死んでないかも知れないという謎の期待が湧いて出たりする。


ソウタ「……でも……俺がもし死んでなかったら、今頃こんな天界とかいう訳分かんない場所には居ないだろうな……。」


独り言が漏れる。…メイプルには聞こえなかったらしい。

そう。今ここにいることが、俺が死んだことの何よりの証明だった。

……でも知りたい。俺が死ぬ時、自分や周りの人々は…どんな感じだったのだろうか。俺は…俺自信の記憶で、俺が死んだことを確かめたい…。このまま記憶が曖昧なままだと、俺の中のモヤモヤがこれからも永遠に消えない気がしていた。


…………………………。


ソウタ「…そういえばさ。」


メイプル「ん? どうしたの?」


ソウタ「死んだ魂を創造神様のところに連れてく天使って…メイプル、いつも君の役だったりするのか?」


メイプル「あぁ、それは違うよ。私はたまたま倒れてるソウタ君の側を通りかかって発見しただけで、私が案内をする役目なんて持ってたりはしないよ。」


ソウタ「へぇー、そうなのか。じゃあ普段は誰が案内役なんだ??」


メイプル「案内役なんて決められてはいないよー。まあ特には理由があったりはしないんだけど、1番最初に死んだ魂を見つけた天使がその魂の誘導を任されてるんだ。創造神様にね。」


ソウタ「ふーん……。」


…………………………。


そうして俺はメイプルと下らない話を続けながら、何だかんだで神殿の奥部まで到着した。

これは行く道中でメイプルに聞いたのだが、自分の命を掛けて他人を守る魂は、どうやら減少しているらしい。…みんな、自分の命を守る事に必死なのだろうか。

そしてこれは余談なのだが、メイプルが俺と言う死んだ人間の魂を見つけるのは久々だったらしい。だから最初は少しオドオドしていたのか。


メイプル「さあ、着いたよ。」


ソウタ「………。」


俺がメイプルに連れてこられたのは、だだっ広い祭壇の様なものがある大きな部屋だった。


メイプル「創造神様ー!! 今居らっしゃいますかー! 新しく天界に迷い込んだ人間の魂を見つけましたー!!」


メイプルそう言った瞬間、どこからか神殿内に涼しい空気が流れて来る。


ソウタ「………。」


俺が黙って立ち尽くしていると神殿の奥の方から、あからさまに神々しいオーラや雰囲気をかもし出している爺さんっぽい者が現れた。


???「……………。」


その者が俺の数歩先で立ち止まる。


ソウタ「……………。」


何か緊張してきた。何を話し掛けたら良いのだろう。正直、次に喋る台詞が浮かんで来ない。だからと言って、硬直し続けるのもいけない。何か喋らないと…。


???「……………。」


何故か、向こうも何も喋らない。とりあえず適当に喋ってみるか……。


ソウタ「えっと〜………、」


???「……ハッハッハ!!」


ソウタ「……は?」


???「そんなに固まらなくてもいいぞ!! もっと気楽に話さんか!!」


ソウタ「えっ……。」


何だ何だ…急にテンション上げてきたぞ……。


グラン「ようこそ天界へ! ワシは天界の創造神のグランじゃ!! フルネームでは『グランディリア・アルミア』という。お主、最近亡くなった魂だな? 」


…創造神って、こんなにテンションがやたらと高い爺さんだったのか…?

まあ、絡みやすそうなのは良かったけれど……。


ソウタ「…俺は、志々目 草太 って言います。」


グラン「そうかそうか、ソウタ君だな。よろしくな。ところでメイプル。お前が新しい魂を見つけてくるなんて珍しいじゃないか!」


メイプル「あはは…ソウタ君が天界の入り口で倒れてるところを、たまたま私が通りかかって見つけただけですよ。」


グラン「ところでソウタ君は、どんな死に方をした魂なのだ? メイプル、記憶の大天使であるお前なら既に分かっているのではないか? ワシは今、会ったばかりだから詳しく教えて欲しいんじゃよ。」


メイプル「……事故死です。」


グラン「おぉ…事故か…。やはり、若くして命を落とす魂は事故か病気だとは思ってはおったが…。」


メイプル「ソウタ君は他の命を守って死んだ、勇敢な魂なんです。グラン様、あなたが昔から好んでいる魂じゃないですか。」


グラン「おお!! そうだったのか…!! 最近は自分を守る為なら、他人などどうなっても良いと思っている愚か者共が増えているからのう…。確かに自分を守ることは大切じゃが、それと同じぐらい他人のことも尊重せねばならん。命の重みは皆平等に扱うべきなのじゃよ。」


ソウタ「……………。」


その時の俺は黙って聞いているだけだった。


メイプル「では…勇敢な魂の持ち主を転生させる時の特別な抽選……その手配をしていてもよろしいですか?」


グラン「ああ、いいとも。ソウタ君の記憶を記憶の大天使であるお前が見たのなら、間違いないだろう。」


ソウタ「……………。」


ごめん。黙ってるだけというか俺、単純について行けてないだけだ。


メイプル「ではグラン様…私は抽選の手配に行ってまいりますので……そろそろソウタ君の死に際の記憶を蘇生させてあげてください。」


グラン「おお、そうだったな。分かった。では、転生の前準備を頼むぞ、メイプル。」


メイプル「分かりました。では、よろしくお願いしますね、創造神グラン様。」


ソウタ(ハッ………。)


俺はハッとする。

そうだ。俺はこれを待ってたんだ。俺が死んだ時の記憶……ずっと気になってたんだ。俺はどういう経緯いきさつがあって死に際を迎えたのか。メイプルに説明されはしたものの、俺の記憶の中にはちゃんと残されてはいない。

…それがようやく蘇るんだ。


グラン「ではソウタ君……今の話は聞いておっただろう……?」


ソウタ「……はい、聞いてました。」


ドクン……ドクン……。心臓の鼓動が段々と早くなってくる。


グラン「今から君に、ワシが神術『記憶蘇生術』を使う。君の死に際や死ぬ数日前からの記憶がはっきりと鮮明に蘇る。」


ソウタ「……はい。」


やっと……分かるんだ。俺の……死んだ時の記憶が……。

何なんだろうか……奇妙な心地良さが生まれてくる……。


グラン「この術は今すぐにでも使える。ワシはいつでもお主に術を掛ける準備ができている。ソウタ君……お主の方は、大丈夫か……?」


ソウタ「……はい……!! いつでもやってください……!!!」


グラン「……………。」


ソウタ「……………。」


数秒間の沈黙。そして………、


グラン「では、行くぞ……!!!」


ピカッ……!!

辺りが急に眩しくなる。

俺の頭の中に生まれてくる情景。

それがはっきりと蘇ってくる。



そして俺は意識を失った。




ああ___俺は本当に死んだ魂なんだ___。






俺はあの日___


あの星の降る夏祭りの日___


1人の少女の命をかばい___


そして俺は、この世を去った___。

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