お家事情

 熊谷の自分への追求が続いていた。


「一体どんなコネをつこうたんや?」


「いやー、それも勘弁……。」


 と僕が言いかけた時、紗夜ちゃんが突然、会話に入ってきた。


「そんなの智晴の実家に決まってるじゃない!実家、(株)寺島製作所だもん!」


(あーあ、言ってしまったか。)


「綾野の実家、(株)寺島製作所だと!?それなら納得がいくなぁ。名字が違うからわからわかったわ!」


 紗夜ちゃんは胸を張って自分のことのように言ってしまった。いやいや、僕の実家だからとツッコミたくなるくらいだ。


「なんで隠してたんや?IGNIS《イグニス》生産シェア60%の最大手の会社やないかい!わいの会社の目標でもあるんやぞ!」


「実家の名前に頼りたくなかったというか、なるべくなら関わりたくないというか……。とにかく、ここだけの話にしてほしい。」


「まぁ、ええけど。」熊谷

「……。」うなずくだけ。谷口

「わかったわ。なんとなく理解できるし。」火鈴

「智晴がそう言うんだったら……。」紗夜ちゃん


 みんな、わかってくれたみたいだ。紗夜ちゃんは、智晴って言いたいだけな気がする。そして、熊谷は質問を続ける。


「サーモキャンセラーってのは、どんな仕組みなんや?」


「サーモセンサーは、物体から放出される赤外線を感知している。その赤外線を感知出来ないようにジャミングしているから、画面にモニタリングされないって感じかな。」


「なるほどな。けど、よく実用化出来たもんやな!」


(意外に熊谷は、見た目と違って勉強熱心なやつなんだな。)


 その後も機体についてや合宿についての雑談が続き、そろそろ帰宅ムードに差し掛かった。自分から話を振ってみる。


「この辺にして、帰ろうか。」


「そうだな。ウチも帰ってトレーニングしないといけんし。」


(火鈴はどんだけ真面目なんだよ。)


 みんな、帰り支度をし始めた。そして帰り間際、紗夜ちゃんから話し掛けられた。


「とっ、智晴!明日の放課後なんだけど、合宿で足りない物があるから買い物に付き合って!」


「えっ!あー、いいけど。」


「それなら、ウチも一緒に!同乗者パートナーの義務だからな!」


(同乗者パートナーの義務って!?)


 火鈴は、よくわからないことを言い始めた。この発言に紗夜ちゃんは反論する。


「なんでそうなるのよ!二人きりが……。」


(後半は声が小さ過ぎて聞き取れないなぁ。)


同乗者パートナーの清水と行けばいいじゃない!」


 と火鈴も反論する。しばらく歪みあった結果、3人で買い物に行くことになってしまった。明日が思いやられる。


(はぁ……、面倒なことになったなぁ。)









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