世界情勢

 1限目の講義が始まる。変わったおじいちゃん教官がやって来た。名前は……坂本だったような。今日で2度目の講義だ。前回はずっと雑談で、何を習ったのか覚えてない。


「今日は少し講義らしいことするかのう。君達は、何故IGNIS《イグニス》の操縦を学んでいるかわかっておるかのう?そこの女子、答えてくれるかのう。」


(青山さんだ!)


「はい!敵と戦うためです!」


「それもあるのう。じゃあ、次はそこの女子答えてくれるかのう。」


(次は西嶋さんか!)


「うーん、地球の平和守る?ためかなぁ。」


「一理あるのう。人によって考えが違う、それはそれで、ええことじゃ。自分の目的を持って修行することが大事なんじゃ。」


 なんか、今日はおふざけがあまり無い感じだけど、教室内がリラックスした雰囲気に包まれいる。


「では、敵とは何者じゃ?」


(青山さんの方を向いて言ってるなぁ。)


「はい!マーズガイア連合です。」


「ふむふむ。元は地球に住んでいた者同士なのに、悲しいことじゃのう。」


 地球環境が急激に悪化した時代に、国境を無くし、地球全体を1つの国として地球連合が創設された。同時に地球再生計画と火星移住計画が実行され、約半数の人が火星へと移住したと言われている。約100年前に火星へ移住した連合体が地球連合から独立を宣言し、自らをマーズガイア連合と名乗った。初めは友好的な関係だったが、徐々に対立が生じ、今は緊張状態が続いている。


「でも、自分たちの平和を守るためなら、戦うことも仕方ないのう。話し合いで解決出来るなら、良いのじゃがのう。今はも使えないからのう。火星に行くまで一苦労じゃわい。」


 ゲートとは、地球と火星間を行き来するための空間転移の装置で、今は使用出来る才能保持者センスホルダーがいない。昔は凄腕の転移ゲート才能保持者センスホルダーの姉妹がいたらしい。


 しばらく、地球と火星の関係についての講義が続き、最後に……


「相手も人間じゃ。それぞれの目的を持っていることを忘れずに、力があるからといって、いたずらに暴力だけで解決しようとしてはダメじゃ。しがらみや背景にあるものを理解することも大事じゃからのう。覚えておくことじゃ。」


 と講義を締め括った。


 ***


 今日の講義が終わり、放課後を迎えている。すると、案の定、熊谷・谷口ペアと暁さん…もとい、火鈴が自分の机に集まってきた。たぶんのことだろう。教室ではまずいと思い、僕は話しかけた。


「昨日のなんだけど、ちゃんと説明するから、場所変えない?」


「いいわよ。じゃあ、スタボに行きましょ!」


 火鈴の提案により、みんなでスターボックスコーヒーに移動した。そして、みんな注文し、飲み物が行き渡った。


「んっ!紗夜ちゃん!?」


(いつの間に混ざったんだ!?)


「いやー、怪しい集団を発見してねぇ!混ざることにしたよー!」


(まぁー、いいか!みんな迷惑そうな顔してないし。)


 紗夜ちゃんの参戦を気にすることなく、僕は本題へと入ることにした。



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