作戦開始!

 まずは、時間稼ぎだ。熊谷が食い付く話題をと……。


「まさか、KTM社のサーモセンサーが実用化していたとはな。」


「よう、知っとんな!なら、お前らに勝ち目ないことくらいわかるやろ!」


「でも、まだ諦めるわけにはいかない!」


「全力で潰すぜ!千明、強化ブーストや!」


 その時、武器の換装が終わり、機体は相手に向かって突進し始めた。


「ナイス、暁さん!同乗者パートナーの谷口の才能センス強化系ブーストです。気をつけて下さい。」


「わかっていて、1分耐えろというのは……。貴様は意地が悪いな。」


 近距離戦闘が得意な暁さんでも、機体の性能が上がった相手ではきびしいだろう。けれど、暁さんの顔には、焦りや緊張の色も無かった。僕も準備を急がないと。


「どうした!暁!防ぐだけじゃ、わいには勝てんぞ!」


「貴様に呼び捨てされる筋合いはない。」


 上手く攻撃を防いではいるが、徐々にダメージを受け、機体の動きも鈍くなり始めている。僕も必死に準備を進める。 カチャカチャ、カチャカチャカチャ……。頭がパンクしそうだ。


(早く!早く!うおー!)


 そして、約1分経過。僕は叫んだ。


「火鈴、今だ!!」


「えっ!?行くわよ!」


 暁さんは、透明化に始め、僕は機体の制御に戻り、小太刀からスナイパーライフルへ換装した。そして、相手の後ろへ回り込み、射撃を開始する。


「何!?センサーから消えただと!?」


 熊谷が慌てている。そこへスナイパーライフルの弾丸が機体に直接命中する。さらに追い討ちをかけるように回り込みながら、射撃していく。


「くそぉ!どこから撃ってくるんや!」


 そして、全ての弾を使いきり、なんとか勝つことが出来た。対戦を終え、僕らは機体を降り、一言も言葉を交わさないまま、いつもの気まずい感じに戻っていた。


 *


 次の対戦が始まり、僕は疲れからか、ぼーっと眺めていた。そうしている間に、残りの対戦が全て終了し、また集合場所に立っていた。最後に佐伯教官が公評を始めた。


「えー、初めての実戦にしては、みな上出来だと言えるだろう。まだまだ改善が必要だが、各々の今の実力は出ていたと思う。明日からまた鍛練を怠らないように。今日はゆっくり休め。解散。」


 昨日からの疲れから、僕はすぐに寮への帰路に着くことにした。しかし、後ろから呼び止める声がする。


「待て!綾野!わいとの対戦の時、何をしたんや?」


「すまないが、明日にしてくれ。昨日から徹夜で体力の限界なんだ。」


「徹夜!?わっ、わかった。明日は必ず説明してもらうからな。」


 なんとか退いてくれた。眠すぎる。早くシャワーを浴びて、ベッドに飛び込みたい。再び寮への帰路に着いた。がしかし、また呼び止める声が……。いい加減にしてくれ。








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