ルール説明

 午前中、最後の講義が始まる。教室に入ってきたのは、佐伯教官だ。一瞬にして、ざわつきが静まった。


「今日は、IGNIS《イグニス》の操縦学の基礎を復習していく。まず、2人で操縦するシステムになった理由についてだが……、綾野、答えてみろ。」


「はい!機体の制御と、才能センスの発動を1人で同時に行うのが困難だからです。」


 緊張しながらも冷静さを保ったまま、答えることが出来た。


「まぁ、正解だ。次に、才能センスは6つに分類されている。暁、その6つとは?」


「それは、強化、変化、拒絶、感知、支援、特異の6つです。」


 とても冷静過ぎて怖いくらいだ。恥ずかしさも緊張感も全くない様子で答えた。そして、教官が質問を続けた。


「貴様の才能センスは、どれに分類される?」


「ウチの才能センスは、強化、変化、拒絶、感知、支援、どれにも分類されないため、特異だと思います。」


 僕は、資料の暁さんが載っているページを開いた。彼女は、学年で唯一の透明化インビジブル才能保持者センスホルダーで、様々な使い方が出来るみたいだ。僕は、少し感心して、彼女の才能センスに興味が持った。


 教官は頷きながら、暁さんの返答に対して、淡々と答えた。


「そうだな。私の見解も同じだ。しかし実際、才能センスというものは、多種多様で分類が難しいものも存在する。よって、最近は分類よりもランクを重視するようになってきている。実際に機体の性能に与える特性と向上値を考慮してランク付けされているからな。」


「……。」


「……。」


 操縦学の講義が続き、終盤を迎えた。


「これまでで質問がある者は?」


「……。」


 誰もいないみたいだ。高等1年の時に、散々習ってきたことだから、わかっていて当然だろう。教官は教本を置き、話を再開した。


「では、1週間後の実戦訓練について、説明をしておく。貴様達のIGNIS《イグニス》は、学園側が配備を進めている。個々の武装についてだが、武器は当日こちらで用意したものを使用してもらう。その他の武装の追加や改造は自由とする。」


 なるほど。自由といっても、1週間じゃ追加できる武装は限られてくる。大掛かりな武装は無理はわけだ。


 1人の男子が手を挙げて、質問した。


「武装の追加や改造はどこに依頼したら良いのでしょうか?」


「基本的には、この学園の整備メカニック科が請け負ってくれる。配備前に希望を伝えおけば、訓練当日には間に合うだろう。あとは、学園外の各メーカーに依頼することも可能だが、その場合は自己負担で行ってもらう。そこまでは、学園も見切れないからな。」


 教官の返答に、少し教室内がざわついた。また、男子が勢いよく挙手し、自分の意見を訴えた。


「メッ、メーカーに頼むというのは、一部の資産家の関係者に限られる。不公平ではないでしょうか?」


「不公平か。そもそも能力、技量の違う者同士が闘うことが前提だ。Aランクの者がSSランクの者と闘うこともある。それでは、すべての対戦が不公平になってしまう。それにメーカーへの外注は、一部の資産家に限らず、個人の活躍や実績でスポンサーを得られれば、可能だ。現に上級生には数名いるらしいからな。」


 男子は納得した様子で着席した。最後に教官は締めくくった。


「勝敗も大事だか、相手との実力差を理解し

 対戦までの準備や過程も評価の対象となる。決して準備を怠らないように。解散。」


 新学期初日が終了したと同時に、実戦訓練に向けた戦いが幕をあけた。

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