操縦科はカップル科!?

 教室に着くと、すでに半数以上が着席している。中には騒いでる男子生徒もいるが、気にぜず僕は自分の席を探した。窓側の後ろの方の席に自分の名前を見つけ、同時に隣に座る生徒の名前が目に入った。


(あかつき火鈴かりん。)


 着席して、回りを見渡すと紗夜ちゃんの取り巻き達の姿が見える。


(同じクラスだったんだな。)


 少しほっとしていると、隣の暁さんが席に着いた。赤髪の短ショートカット、赤眼に小麦色の肌で、美人というよりは可愛い感じの顔立ちだが、顔には一切の笑みも無い。しかし、勇気を出して話しかけた。


「おはよう。綾野智晴です。よろしくお願いします。」


「あっ、おはよう。見ればわかるわ。」


 席のプレートを見て、彼女は言い、また容赦のない言葉が続く。


「よろしく。たぶんすぐに違う席になっちゃうけど。名前は覚えておくわ。」


「ですよね。はは……。」


 ひきつりながら、軽い笑いで誤魔化ごまかしたが、彼女の上からの言動に自分が無能者ノンホルダーであることを改めて自覚した。わかっていたこととはいえ、少し落ち込んだ。それ以上、話は続かなかった。


 しばらくして、全員が着席したと同時に一人の女性が教室に入ってきた。長い黒髪をなびかせ、上下スーツスカート姿、キリッとした顔立ちの美人で20代前半と思われるが、とても重圧感を感じる。そして口を開いた。


「おはよう。諸君らは、今日から訓練兵として、様々な訓練を行い、一人前の操縦者ハンドラーを目指してもらう。まずは、私の名前だが、佐伯さえき椿つばさだ。2年前までIGNIS《イグニス》の操縦者ハンドラーをしていたが、今は縁あって、この学園の教官をしている。」


 地球連合軍の主戦力兵器IGNIS《イグニス》とは、人型の武装兵器で操縦者ハンドラー2人1組で起動するもので、必ず1人は才能保持者センスホルダーが搭乗し、その能力によってIGNIS《イグニス》の性能が向上する仕様になっている。


 間髪入れずに、佐伯教官の話が続く。


同乗者パートナーなんだが、……。」


 IGNIS《イグニス》は、通常2人乗りのため、必然的に同乗者パートナーを決める必要がある。


「……、もう決まっている。隣席の者同士で組んでもらう。異議のある者は?」


「!?」


 教室が一瞬にして、どっと沸き上がり、1人の女子が挙手し、異議を述べ始めた。


(マジか。お隣さんだ。)


「教官!ウチは、納得出来ません!なんで、こんな……。」


「なんで、こんな男が自分の同乗者パートナーなんだ。ということか?まぁ、言いたいことはわかるが、この組み合せにしたのは、私個人の判断だ。組み合せだけではなく、C組全員を選出したのも私だ。あらゆる任務や作戦に対応するための最善を考慮したのだかな。」


 通常、同乗者パートナーの決め方は、各個人の意見や相性で決めると聞いたことがある。確かに他人に決められると納得は出来ないだろうが、その対象が自分だと何も言えない。それと、同乗者パートナーとなるのは、男女1人ずつという規則がある。同乗者パートナーになった者同士は、そのままなるという俗説があり、たぶんそういう意味でも

 、僕はのだろう。ただただ作り笑顔で見守るしかない。


 暁さんは、しばし沈黙していたが、おもむろに口を開いた。


「でも、やはり納得出来ません!」


(やっぱりか。ですよねぇ。)


 僕は相変わらず作り笑顔を継続中。すると、教官が呆れた感じで話を続けた。


「綾瀬は、まぁ無能者ノンホルダーだ。近距離戦闘は並み以下、射撃は人並み程度だが、分析力、判断力、機体の理解度は優れていると思うがな。」


(教官!ナイスフォーローです!ありがとうございます!)


 僕は心の中で叫んだ。しかし、彼女は変わらず納得出来ない様子で、教官の方を見つめている。








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