白銀のイグニス

らすとーん。

進級先は第3希望!?

 地球防衛大学附属高等学園日本支部に入学して、あっという間に1年が経ち、高等2年に進級を果たし、その初日を迎えた。


 正門を抜けると大きな人だかりが見える。近くに行くと進級クラス決定の掲示板が立っているのがわかった。緊張しながらも自分の名前を探すが見つからない。人だかりの後ろをピョンピョン跳ねていると、後ろから声をかけられた。


「おはようございます。智晴ともはる様。」


(……様!?)


 すぐに違和感に気付いた。 振り向くと、長い白髪、灰眼の美少女がこっちを見ながら、少し頬を赤くして微笑んでいる。とても可愛い。同じ学年の天上院てんじょういん紗夜さやちゃんだ。彼女は学年のアイドル的存在で、才能保持者センスホルダーの最高位SSランクに属しいるため、かなりの有名人だ。幼い頃に祖父の友人の孫ということで、よく実家で遊んでいたが、ここ数年は見かけることはあったが、自分とは住む世界が違い過ぎて、少し疎遠になっていた。一応、確認のため尋ねてみた。


「おはよう。間違ってたら、ごめん。紗夜ちゃんだよね?」


「そうです!覚えててくれたんですね!」


(忘れるわけないけど。)


 彼女は嬉しそうに答えてくれた。しかし、両隣の女子たちの目が怖い。なぜ、こんな奴が紗夜様と仲が良いんだ!と言わんばかりに自分を睨んでいる。それもそのはずだろう。天上院紗也ちゃんは、1学年に数人といわれるSSランク才能保持者。そして、僕は無能者ノンホルダー。差があり過ぎる。


「紗也ちゃん、様付けはちょっと…。君でいいから。あと、隣のお友達は?」


「そうですか。」


 少し残念そうにしている。そして、紹介を始めた。


「こちらのお友達は、青山あおやまゆかりさん。1年生の時からの仲良し。」


 青髪のショートカットで青眼メガネっ子、身長が低く少し目がキツい。そして、自己紹介を始めた。


「私は、青山ゆかりと言う者だ。紗夜さんとは仲良くさせてもらっている。よろしく頼む。」


綾野あやの智晴です。こちらこそ、よろしく。」


 とても女子高生とは思えない言い回しだが、僕は軽い感じで返した。紗夜ちゃんは紹介を続けた。


「そして、こちらが西嶋愛さん。私の世話を妬いてくれるお姉さんみたい。」


 少し身長が高くて、茶髪のポニーテール、茶眼で優しそうな雰囲気を感じる。確かにどことなく姉さんっぽい。あと、何より胸が大きい。どうしても目線が顔より下にいってしまう。


「智晴くんも男の子だね!私のことは、名前で呼んでね。」


「あっ!ごめん。」


 少し恥ずかしくなってしまった。紛らわすために、すぐに会話を続けた。


「僕のことも名前で呼んで下さい。よろしくお願いします。」


「こちらこそ、よろしくね。」


 しばらく、雑談が続いた。そして、耳を疑う一言が紗夜ちゃんの口から発せられた。


「智晴くん、同じクラスになったね!良かった!」


「えっ!?同じクラス!?」


 一瞬、思考が停止した。そんなわけがない。彼女はSSランクの才能保持者センスホルダー、僕は無能者ノンホルダー。彼女は間違いなく操縦ハンドラー科のはず。そして、僕は進級調査のアンケートで第1希望・整備メカニック科、第2希望・開発パイオニア科、第3希望・操縦ハンドラー科にしたが、倍率がとても高い操縦課に入れるわけがないと高を括るって、記念受験感覚で書いただけなのに、まさか…。恐る恐る掲示板を確認してみると、自分の名前が記載されていた。僕は早々に会話を切り上げ、女子たち3人と一緒に操縦科C組の教室に向かった。

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