異種間合コンでぜったいに成功する秘訣!

ちびまるフォイ

合コンなんて行ったことねぇけどな!!!

『異種間合コンを開催しますので、

 希望者は参加費を持ってお越しください。

 ※当日のキャンセルは別途費用がかかります』


という触れ込みで異種間合コンを主宰するとあっという間に男女6人が募った。

人間でもケモナーという人種が存在するように、

モンスター側からも異種生物が好きな人種というものがある。


そんな人数は多くないものの、たしかにあるニーズに答えるのが異種間合コン。


「というわけで、私が幹事をやらせてもらっています」


「いいい、異種のメスと知り合える……ゴブ」

「フッ…高貴なるエルフの僕に釣り合う生物がいればいいけど」

「うおおお!! メスは! メスはまだかぁぁぁ!!」


「落ち着いてください……」


会場にはやる気満々の男性グループがすでに着席していた。

ゴブリンにエルフにドワーフ。今回も個性豊かな取り合わせ。


だいたい合コンでは女グループが遅刻するので前もって早く時間指定していたが

予想以上に到着が遅いのでだんだんと空気が悪くなる。


「お、お、おい! 来ないってどういうことゴブ!!」

「僕は別に女なんて興味ないし……全然興味ないから気にしてないけど!」

「おいコラぁぁぁ!! 刀のサビにすっぞ!!」


「落ち着いてください! 道が混んでるだけですって!」


額に脂汗が浮かび始めたころ、やっと酒場に女が3人現れた。

こいつら集団でしか行動できんのか!


「お待たせしました~~」

「途゛中゛で腐゛敗゛し゛ちゃ゛って゛」

「ニヒヒ。まあ気にすることないじゃん?」


4つ足のケンタウロスに、アンデッド、小さなフェアリーが席に着いた。

合コンに必要なメンツがそろったことで一安心。


「それではみなさんご歓談ください」


お酒や食べ物を気をきかせて注文すると、そっとテーブルから離れた。


 ・

 ・

 ・


「さて、合コンはどうなっているかな?」


もうカップルができているだろうか、と期待して覗いてみる。


「……」

「……」

「……」


「はぁ……ひづめかゆい……」

「な゛ん゛か゛腐゛敗゛し゛て゛き゛ちゃ゛っ゛た゛」

「つーかまじ退屈なんですけどー」


テーブルは葬式以上の重い空気がどんよりと漂っていた。


(しまった! ゴブリンは普段集団生活をしているから1人だと引っ込み思案!

 エルフはプライドが高いから自分から話題は降らないし

 ドワーフにいたっては性欲魔獣! 会話が盛り上がる要素ゼロだった!)


目を離したすきに女性グループの好感度をガタ落ちさせるくだりがあったのだろう。

幹事としてなんとか合コンを成功させなくては。


「あ、あの! みなさん、宴もたけなわですのでゲームをしましょう!

 そうですね……第一印象の山手線ゲームなんてどうでしょうか!」


「ヤマノテセン? それ女の体のどこだ?」


「ドワーフさん鼻息荒くしないでください。

 とにかく、相手の良い第一印象を順番に言っていくんです。

 言えなくなったり重複したら負けです。いいですか?」


今この場に足りないのは相手への興味。

ゲームを通じてお互いに興味を持ってもらえば会話も弾むはずだ。


「ええー、ではケンタウロスさんのキャラを見て

 思いつく良いことを順番に言ってくださいね。ゴブリンさんから」


「ぼ、ぼぼ、ぼくですか!!」


ゲームが始まると全員が手拍子でゲームを進行する。


「ケンタウロス」\パンパン/

「スタイルがいい!」


「ケンタウロス」\パンパン/

「フッ……胸が大きい」


「ケンタウロス」\パンパン/

「うおお!! おっぱいおっぱい!!!」


右から順番にオスどもを殴り抜いた。


「超マジサイアク~~。これだから異種のオスって野蛮なんだよね」


毒舌フェアリーが禁句を発してしまった。


「心゛腐゛って゛る゛ん゛じゃ゛な゛い゛の゛」


アンデッドも便乗し始めて完全に空気は悪くなる。

ウケ狙いなのか本心なのかわからないがドン引きされて印象は悪化。


さらに悪いことに、この矛先は幹事へと向けられた。


「超つーか、今回の合コンって料金払う必要なくない?」


「え、ええ? でもみなさん食事もしてますし、

 この場所を取るにも予約や料金が発生してまして……」


「フッ……高貴なるエルフは自分が納得しない限り払わない。

 何も収穫が得られなかった合コンは無価値さ」


「ちょっと待ってください! それはあなた方の責任で――」


「ヤレねぇ合コンに意味はねぇぇぇぇぇ!!!!!」


「ドワーフ最低だよ!!」


男女ともぐずぐずになった合コンに料金を払いたくないと

ここにきてまさかの一致団結を見せた。


この状態で合コンを成立させることはできるのか……。


「あれを……使うしかないのか……!」


俺はそっと懐に忍ばせていた書類をそっと取り出した。




「ところでみなさん。

 異種間カップルは国から補助金が出るってご存知ですか?」




「ゴブリンさんって、小さくてかわいいですよね~~」

「そ、そそそ、そうかな……。ケンタウロスちゃんは大きくて素敵だよ」


「フッ……君の汚れた腐敗具合、まさに理想だよ……!」

「う゛れ゛し゛く゛て゛腐゛っ゛ちゃ゛う゛ ///」


「ドワーフって素直で超男らしいよね」

「うおおお! 盛ってきたァァァ!!!」



かくして、3カップル成立し合コンは大成功に終わった。

全員の瞳の奥が「¥」マークに見えたのはきっと気のせいだ。

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