第20話「ヒーロー世界の奇妙な現実」
放課後、
ここは
スケール
その広い
「ヒデ、そっちどう? 終わった?」
アーリャ・コルネチカがデッキブラシを片手に声を掛けてきた。今日も
遅刻こそしたものの、今日からまた
「ヒデ君っ、そろそろ水をまいちゃってもいい?」
「おう、やってくれ!」
ホースの先を持って、シャオフゥが
小さな
シャオフゥは今、ヒーローになった。
オリジェネレータの力で、
だが、少し
そしてそれは、事情を先程説明されたアーリャも同じらしい。
「なーんかさ……最近、シャオフゥって……色っぽいわよね?」
「お、おう」
「……どうなの? ヒデ」
「どう、って」
「ほら、男の子って色々あるじゃない。受けとか攻めとか」
「そういう間柄じゃねえ! 俺とシャオフゥは、ダチ! マブダチだ! っぷ!」
突然、水が浴びせられた。
シャオフゥが笑ってアーリャにもホースを向ける。
「えー、僕ってただの友達? ふふ……ヒデ君になら、いいのになあ」
「ちょ、ちょいっとシャオフゥ! 冷たいわ! あ、あと、詳しく! そのへん、詳しく話しなさいよ」
「やーだ! 僕とヒデ君だけの秘密だよ? 僕、シャオロンになればいろんなことしてあげられるんだから。ふふふっ」
制服姿のアーリャが濡れて、うっすらと下着が
少し寒いが、オーストラリア大陸から吹く乾いた風は気持ちよかった。そして、南半球なのに季節が日本近海とそう変わらない。グレートポールシフトで今、この星は以前とはまるで別の世界になってしまったのだ。
そして、オーストラリア大陸へこの街が移動したのには訳がある。
世界中を周遊しているが、今回の寄港地では大きな仕事が待っているのだ。
「もぉ、シャオフゥ! やったわね!」
「わわっ、アーリャ怖いよっ! 助けてヒデ君!」
「待ちなさーいっ! クラス委員長として、オシオキなんだからっ! ……ヒデ?」
ガシリとシャオフゥの頭を
「ああ、いやちょっと……考え事だ」
「その頭で? どうやって?」
「……アーリャ、お前……
「ふふ、
「お、おう。サンキュな」
「べ、別に……う、うん、何でもないから。何でも、ないから」
何故かアーリャは頬を赤らめつつ……ヘッドロックで
友達が心配で、自分も友達に心配してもらえる。
そこに、『
一億人に一人と言われる
「あ、そういえば……ヒデ。前から気になってたんだけどさ」
「ん?」
「シャオフゥ、どうしてバレないの? だって、メイクして髪型が変わっただけでしょ?
「さあ? 何だろうな、そういうのってお約束、なのか? でも、
そう、シャオフゥがシャオロンへと変身しても、髪の色やヘアスタイルが変わるだけだ。
その素顔のシャオフゥに、
詳しい話は、ようやくアーリャから解放されたシャオフゥが説明してくれる。
「それは、ヒデ君。アーリャも……むふふ、ゴホン! 説明しよーう! 『個性』や『孤性』を持つ人間は、それを互いに
シャオフゥの説明はこうだ。
今では当たり前になった『個性』や『孤性』……それを持つ者同士の社会になったことで、人間の心理状態は大きく変わった。その中でも、無意識のうちに皆に
簡単に言えば『相手に不都合のあることを無意識にスルーする能力』である。
「例えばね、真心先輩はタラスグラールに乗ってるでしょ? そのことを一般市民は知らないんだ。でも実は、一部の市民は乗り降りを見たことあるけど……本当は見てても、脳が勝手に見なかったことにしちゃうの。だから、気付けないんだあ」
「そ、そうなのか」
「うんっ! これは僕が無個性だからこそ、ヒーロー研究の過程で見つけたの。無個性の人間が見ればおかしいと思うことが、『個性』や『孤性』を持つ人には当たり前で、気付かなくて、認識できないんだあ」
それをシャオフゥは、新たな人類の能力がもたらした進化だと言う。
そういえば確かに、以前に
他には、ヴィランを前に変身しても、変身中は攻撃されることはないという。
ヴィランも『孤性』を持っているので、自分が特殊能力を使う悪党である限り、ヒーローの
「すげぇな、シャオフゥ……そっか、それでか!」
「うんっ!」
「なーるほど、ね……それより、ヒデ? ほら、後ろ。もうお迎え、来てるわよ?」
アーリャが指差す方を振り返って、英友は「あっ」と小さく叫ぶ。
今日も今日とて、一緒に下校するべく真心がやってきていた。何故か
英友はやれやれと頭をバリボリかきながら、真心へと歩み寄る。
「おい、真心! ちょっと出てこい! ……話があんだよ、お前に」
「は、はひっ!」
「……何でお前、そんなに緊張してんだ?」
「だ、だって……ヒデ君達と、一緒だと……う、嬉しいから」
無表情の
そんな彼女の手を握って、英友はアーリャやシャオフゥのところまで連れてきた。
「いいか、真心。落ち着いて聞け……あのな、お前の
「えっ?」
「シャオフゥが会ったんだよ。ってか……昨日の魔砲少女カノン☆シャオロンな。実は正体はこいつ、シャオフゥだ」
「ほへ……ええっ!? そそそ、そうなの? 私、全然気付かなかった……」
やはり、『孤性』を持っているからだろう。
シャオフゥが言った通り、真心は全く気付いていなかった。認識できないのだ。
そして、シャオフゥが改めて真心に経緯を説明する。
「――と、いう訳なんだあ。ゴメンね、真心先輩……もっと早く言えばよかったかも。でも、僕も真心先輩のお父さんが行方不明って知らなくて……マシンダーは生きてるよ。そして、正義のために働いてる。僕は、そのお手伝いをしてるの!」
「パパが、生きてる……パパが、生きてて、くれた」
そう、
早速携帯でも出して、母の
だが、真心は
彼女の豊かなバストに
「ちょ、真心! 待て、放せ!」
「ヒデ君っ、パパが! パパが生きてたの! 嬉しい!」
「わかった! わかったから、放せ!」
そのまま真心は、英友に胸を押し付けながらクルクル回りだした。
周囲の同級生達も、
小さい頃から英友は、
「どうしよ、ヒデ君っ! 私、パパに会って言わなきゃ」
「あ、ああ……ってか、あのな真心! ケーブル! ケーブルが
「パパ、喜んでくれるかな……ヒデ君に
「気が
赤いケーブルに
だが、そんな平和な空気が突然切り裂かれた。
アラートが鳴り響き、カタパルト・デッキでも赤い
そう、戦い……オーストラリアこそが決戦の地なのだ。
『全校生徒に通達、これより学園は
ついに始まる、その名はオペレーション・スーパーヒーローウォーズ。
全世界が軍備を手放した中、
「うう、
「急げ! 真心!」
「ご、ごめん、ヒデ君……私、急ぐ、から」
「おう、急いで解け、落ち着いてな? って、お、おいっ!」
真心は英友を抱き締めケーブルに巻かれたまま……そのまま、出撃するために走り出した。アーリャ達が
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