第10話「出撃!鉄魂勇者タラスグラール!」
交通の
そして、彼等の力によって橋が崩壊寸前なのだ。
「……シャオフゥ君、オペレーターをお願いできますか? ここでタラスグラールを出します。マニュアルがあるので、それを読みつつで……最低限でいいので」
「大丈夫だよっ! 僕、真心先輩のタラスグラールはよく動画サイトで見てるから!」
「ありがとう、ございます……や、やっぱり恥ずかしい、ですね。では」
小さな移動基地でもあるグランドアークで、大きなモニターのある席に
それは、真心が後部のカーゴスペースへ移動するのと同時。
目のやり場に困る姿が去って、英友は内心胸を撫で下ろす。
「ホッ……すげえ服だぜ、ったく」
「ね、ねえ! 見て、ヒデ君っ!」
「ん? どした?」
「このグランドアーク……搭載しているシステムや機器が、全て無個性の人間にも対応しているんだ。『
システムが立ち上がり始めて、モニターに外の状況が映し出される。
巨大トレーラーであるグランドアークを指差し見上げて、市民達は期待の眼差しを向けてくる。そんな中で、完全に道を
ワクワクが隠せない様子で、外へのスピーカーをオンにしてシャオフゥが喋り出した。
「市民の皆様には、
外を映すモニターから、市民達の歓声があがる。
立体映像で投影された白線が、グランドアークから人々を遠ざけた。
同時に、どこかアニメソング風な音楽と同時に
主題歌ってなんだよ、と突っ込みたくなるのを英友は飲み込んだ。
そして、ふと中央の席を振り返る。
真心が座ってたであろうそこには、顔を上半分だけ覆うバイザーがあった。
「おいおい、忘れ物かよ……」
「よーしっ! それじゃあ、デッキアップ開始っ! やっぱこぉ、ガキーン! って感じのレバーって燃えるよね。ではでは、そーれっ! ガッチャーン!」
「ちょい待ちっ! これ! これこれ!」
「えっ……ヒデ君? あ、真心先輩のバイザー! ……格好いい」
「じゃねーだろ、シャオフゥ! 少し待て、届けてくる!」
「えっ、で、でもぉ……もデッキアップ、始まってるよぉ」
グランドアークは、英友達がいる前部の制御スペースと、後部の長大なカーゴスペースで構成されている。そしてその上部は全て、車両の縦横いっぱいにタラスグラールを寝かせて運ぶデッキがあるのだ。
急いで英友は、真心のバイザーを持ってカーゴスペースへ走る。
その時にはもう、轟音を響かせながらデッキが徐々に持ち上がっていた。
事故防止のゲートが閉まっているが、それをジャンプで飛び越える。
そして、水平から垂直へと立ってゆくデッキを疾走した。
「真心! バイザー! お前っ、正体バレたらまずいんだろ! 降りることがあったら、どーすんだっ!」
ずり落ちそうになった英友を、タラスグラールの手が受け止めてくれる。
そして、下腹部のコクピットが開いてその中へと放り込まれた。
同時に、完全に立ったタラスグラールの左右で固定用ケイジが白煙をあげる。プシュッ! と小さな音が響いて、長い長いポニーテイルを
コクピットの中で視界が真っ暗になり、目の前の柔らかさから英友は顔をあげる。両手で手近な場所に踏ん張って、上体をなんとか起こした。
「ふう、お前なあ……って、オイイッ!」
英友が顔を埋めていたのは、コクピットに座る真心の股間だった。
今、真心の両膝を掴んで見上げる先で、
「……ヒデ君。あの……いい、よ? ヒデ君、なら」
「何がだ! そういう場合かっ! おら、バイザー!」
「あっ……そ、そうだ、忘れて、た。……届けて、くれたの?」
「おう。じゃあ、俺は降りるからよ、って!? ちょ、ちょっ!
受け取ったバイザーを被ると、真心の目元が見えなくなった。
無数の光が左右から走るバイザーに、大きな
同時に、タラスグラールが動き出す。
ハッチが閉じると、周囲の壁が全てモニターとなって映像を映し始めた。
まるで空の上に真心と二人きりみたいだ。
そして、英友を拘束したまま、
「世界の全てを守って戦うっ!
ノリノリである。
あの、いつもの無機質で無感情、無表情過ぎる美少女ではない。
あの、最強ヒーローであるタラスグラールの言葉が目の前にあった。だが、喋っている真心はバイザーで目元が見えない。心なしか恥ずかしそうだ。
「みんなっ、応援ありがとっ! じゃあ、私……行くねっ!」
ポーズを決めてから、スッとタラスグラールが浮き上がった。
そのまま空へと舞い上がる中、外部への回線を切った真心が小さく呟く。
「あ、あの……ヒデ君。私……恥ずか、しい」
「知らねえよ! おい、俺を下ろしてくれ! それ以前に、放せよ! く、苦し、い」
「あ……ご、ごめん、なさい。ヒデ君……大丈夫?」
「ハァ、ハァ……真心の
全てがモニターとなった内壁に寄りかかって、そのまま床に崩れ落ちる。
そんな英友を、真心は心配そうに見詰めてくる。
元から表情がなくても、英友には真心の心も気持ちもわかるのだ。バイザーを被った程度では何も変わらない。
真心は
「ヒデ君、危ないよ? 揺れる、から」
「おめーの方が危ないぜ……殺されるとこだった」
「……こっち、来て」
「へ?」
「ほら、私の、上に……座って」
真心は右手で忙しく操縦を制御しつつ、ポンポンと
冗談ではない。
あの弾力と
「や、俺はほら、適当なとこで下ろしてもらえれば」
「時間、ないもの……ほら、橋……見えて、きた。ジャスティス大橋」
振り向くと、モニターにどんどん川が広がっている。先程の幹線道路が
そして、その中央で爆発と黒煙が連鎖していた。
真心が外部の音を拾って流せば、悲鳴と爆音が響き渡る。
「えと、じゃあ……ヒデ君、後ろに。いい? 座席の、後ろに」
「あ、ああ、わかった! 邪魔だよな、確かに」
おずおずと回り込んで、座席の背後にピタリと身を寄せる。
そして、英友は目撃した。
真心の背から伸びる赤いケーブルが……座席の背もたれに吸い込まれている。どこに行ってもついてくるあのケーブルは、真心とタラスグラールを繋げていたのだ。
「おい、真心……お前、背中の、っとお!? お、おいいっ!?」
「ヒデ君、黙って……舌、
タラスグラールが急加速で高度を落とす。
みるみる眼下に、
見れば、真心も
最強のヒーローたる『孤性』を持っていても、このGはキツいのか? 一般的には『個性』や『孤性』を持つ人間は、無個性の人間より身体的にも高い能力を持っている。
だが、真心は上昇する中で外へと向かって叫んだ。
「タラスグラールッ、
同時に、橋の下へと回り込み、ひび割れた
両の腕を振り上げたタラスグラールに、巨大な
心なしか、タラスグラールを包むジェットの音が大きくなった気がする。コクピットへと伝わってくる振動も、先程より
だが、真心は複雑なコンソールへ指を滑らせ、周囲に飛んでくる光学キーボードや光学ウィンドウを処理していた。その間もずっと、機体を安定させるべく
「お、おい! 真心! 大丈夫、だよな? なあ!」
「……駄目、もう……限界。だから」
「だから? おいおい、頑張れよ! 俺にできることはないか?」
「それは、あるよ? もう、してる……ヒデ君、は……私の、中の、ヒーロー……パパの選んだ、マシンダー、だから。でも、でも……一つ、だけ」
「お、おう! 何でも言えっ!」
肩越しに振り返る真心が、
その
「キッ、キキ、キス、して……キスしてっ!」
「……はぁ?」
「ヒデ、君の……好きな、人の、キスで……私、頑張れる、から」
「だって、お前はロボットを操縦してるだけだろ! あ、いや……だけってこと、ないよな。すまん。でも……キスだぁ!? この非常時に!」
「非常時、だから……このまま、押し潰されても、ヒデ君と、なら。でも、ヒデ君、だけは、脱出、させるね? その前に、私の……ファースト、キス……もらって、欲しいの」
バイザーの奥で、真心が目を閉じる気配があった。
それで、英友は意を決して……
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