7ー5.いざ、異世界へ
「……――という訳で、このチケットを手にすることが出来たわけ」
と、ドヤ顔で語る友人にはツッコむ必要があるだろう。
「リサは何もしてないじゃん!」
「そんなことないもん! わたしがハナって子をカルーラに案内しなかったらこのチケット、ゲットできてないから!!」
ぐうの音も出ない。
まさしくその通りなのだ。リサの言っていることは正しい。でも素直に納得できない自分がいる。だってそれって私が行ってても同じ結果だったって事でしょ? リサが威張るのは何か違う気がする。
わたしの態度が気に食わないのかリサが禁断の手を使った。
「もういい。このチケット他の誰かにあげる」
「だぁぁあああ――待ったぁぁあああ」
リサに――チケットに飛び掛かる。
掠め取ったチケットを胸に抱き、これは自分のだと主張する。
「そんなに身構えなくてもいいよ。ミサにあげるから。さっきのも冗談だし」
「冗談に聞こえなかった」
「まあ、半分本気だったし」
「やっぱり!?」
「あーもう。身構えなくていいって――めんどくさい」
「ひどい」
「酷くてもいいから早く仕度しな。念願の異世界旅行だよ」
言われるまでもない。どれだけこの日を待ち望んでいたことか。
すでに纏めてある荷物を手に取り異世界への門――夢の世界の入口へと向かう。
二人での道中、会話に事欠かなかった。
異世界に行ったら何をするか、どんな世界なのだろうか、等々――話は尽きない。
かなりのハイペースで「門」のあるカルーラへ向かったが、その足取りは軽かった。
…………
……
…
門と呼ばれているそれはどこからどう見ても井戸だった。
「ではチケットを拝見いたします」
ツアーの関係者と思しき男性が一人ずつチケットの確認をしている。
全員のチケットの確認を終えると、係の男性は手を上げ注目を集めてから話し始めた。
「この度は、異世界ツアーへのご参加有難うございます。今回参ります世界は……――」
説明の続く中周りを見回すと私たち以外は皆綺麗な仕立てられた服に身を包んでおり、裕福そうだ。
異世界ツアーなど本来、庶民の私たちでは参加することなどできない。とてつもない費用が掛かるのだ。だから、私たちが以外は皆、商人や貴族と言った裕福な人間しかいない。
「……――と説明はこの辺にして、早速参りましょうか」
おお、と声が上がりパチパチと拍手が起こる。
「では私の後に続いてくださいね。そちらのお二人」
え、わたし? とリサと二人顔を見合わせる。
「今回の争奪戦の勝者なのですから、最初に異世界の地を踏むのに誰が文句を言いましょう?」
「いいんですか?」
「もちろんですとも。私の後に続いてくださいね」
そう言うと、底の見えない真っ暗な井戸へと男性が身を投げた。
続くってアレに!? 異世界に行く前に死んじゃうんじゃ……ドン――
異世界を待ちきれないツアー客に突き落とされた。
「「きゃぁぁあああああ!!!!! 死ぬぅぅぅううううううううううう!!!!!!――」」
異世界に思いを馳せる間もなく、わたし達は異世界――日本に到着していた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※まさかの逆輸入。てか、自由に異世界と
次話へ続きます。
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