7ー4.マジでチョロい

 うぅ……なんてこった……私は頭を抱えたまま唸っていた。

 安請け合いもいいところだ。逃げ出してしまおうか。彼女は風邪でダウン中、逃げたところで追ってこれない。そもそも、彼女の代役を私が勤める道理は無い。


 よし、逃げよう。


「チョット、オネサン。コッチコッチ」


 笑顔で手招きしている。


 片言の日本語。話していたのは外国人――もとい異世界人だった。

 片言の外人(異世界人)ほど怖いものは無い。海外旅行の際、「ド●えもん」「ド●ゴンボール」とか言いながら近づいて来る奴は九分九厘犯罪者だ。

 きっとこれも同じ類の奴に違いなかった。

 信頼してしまったが最後、骨の髄までしゃぶり尽くされるに違いない。

 まあ、目の前の奴は見るからに怪しいから信頼の「し」の字も抱かないけどね。

 ――って考えている間に距離を詰められてる!?


 お祭り騒ぎの所為で後退しようにも押し返されてしまう。力一杯人波を掻き分けたら割れる。割れてしまう。人間そのものが。割れると言うより潰れる。

 転生特典で得た力は制御が難しく、今の私ではどんな惨事を招くかわからない。

 だから自分と同じ境遇の人間が集まる異世界学校に入学したのだ。

 入学早々に問題を起こす事などあってはならない。なのに……


「日本に行きたいか~!!」

「おおぉぉぉおおお!!――」

「Cブロック最初の挑戦者は――惡野華あくのはなだぁ!」


 ステージの上で大観衆の注目を一身に浴びて思う。

 何故こうなった……と。


 …………

 ……

 …


「では次の問題が最終問題となります。心の準備はよろしいですか?」

「あ……はい……」


 どうしよう。問題が簡単チョロすぎてマジで優勝しちゃいそうなんだけど……。


「最終問題は難問ですよ」

「あ、そうですか」

「余裕ですねぇ」

「そんなことは」

「では参ります!」


 ――ジャジャン!

(どこから鳴った今の音!?)


「日本の首都の名称は?」

「トウキョウ」←棒読み

「本当にその答えでよろしいですか?」

「あー、はいはい。OKで~す」←棒読み


 ――パッパラ~♪


「正解!! 見事日本行きを決めたのは惡野華だぁッ!!――優勝の感想を一言!」


 向けられた音声拡声器に向かって一言。


「マジで簡単チョロすぎ……」


 その日の内に私は、彼女に優勝報告と共に日本行のツアーチケットを手渡した。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ※昔のクイズ番組はかなり思い切った事してますよねぇ。景品も豪華! 最近の番組はもっとチャレンジするべきだと思います。


 次話へ続きます。

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