7ー3.決戦前夜

 予定より一日早くカルーラに到着したために宿泊しなくてはならなくなった。

 路銀はまだある。しかし、帰りの事を考えると一銭たりとも手を着ける事は出来ない。

 どうしたものか……

 頭を抱える。

 カルーラまで一緒に旅した――連れて――運ばれてきたと言うのが正しいか、少女が肩を叩く。


「相部屋でいい?」

「アイベヤイイデス?」

「いや、訊いてるの私だから」

「アイベヤイイデス!」

「よろしい!」


 路銀が浮いた。

 明日に迫ったツキイチの催し――ツアーチケット争奪戦に向けての準備開始だ。


 …………

 ……

 …


 毎回、ツキイチの催しは異世界の問題が出題される。現地民は、クイズと呼んでいるらしい。

 そのクイズと言う問題に多く答えた者が異世界へ行く資格を得るのだ。

 どのような問題が出るのかは不明。

 地元民の多くが、今回のクイズの「」なるものを議論していた。

 もちろんわたしも対策を練ってきた。

 結構な大金を叩いて「カコモン集」なるものを購入、丸暗記した。

 万全の体制で挑む。

 復習も完璧だ。

 ……の筈だった。

 寝てしまったらたった今、確認したカコモンが頭から抜け落ちてしまいそうだ。

 寝られない。寝てしまってはいけない。

 極度の緊張状態で一夜を過ごした。


 …………

 ……

 …


 風邪を引きました。


「今日一日寝てればよくなりますよ」


 医者が呑気に言う。

 そんなわけには行かない。丸暗記したカコモンを無駄にするわけには……

 あっ、そうだ! 妙案を思い付いた。


「どっちかわたしの代わりに寝ててくれない!?」

「あなた、風邪のせいで頭やられてるわよ」


 冷静な声が、淡々と告げた。


「ワシは最近不眠症でのぉ……」

「そういう問題じゃないでしょ! 医者なら止めなさいよ!!」


 何やら二人が騒がしい。

 何度かやり取りをして少女が、仕方がないと言わんばかりの表情で言った。


「大丈夫。私が代わりに出場してあげる。道案内のお礼にね」と。


 親指を立てて自信満々に頷いた少女は、わたしと医者を残して部屋を出て行った。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

※筆者も風邪を引きました。辛いです。薬買いに行くのも一苦労です……



次話へ続きます……

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