6ー完.勇者部に入部してしまいました

 頼も~う! 的なテンションで【勇者部】の門を叩く。

 実際には引き戸なので門と言う表現は正しくないが、気にするのはやめよう。

 ようやく異世界らしいことが出来ると、期待に胸を膨らませていた俺は、絶望した。

 そこに広がる光景を俺は知っていた。

 現代日本に生まれ高校まで暮らした世界で経験した戦争。


 受験戦争である。


 ちなみに余談ではあるが、俺こと赤城誠はそこそこお坊ちゃんだった。故に幼稚園から受験戦争に参戦していた。勿論全敗である。

 高校も第一志望ではなかった。まあ、勉強嫌いだから仕方ない事ではあったのだが、敗戦兵たる俺は勉強に対する拒否反応がすごい。

 具体的に言えば蕁麻疹じんましんが出るレベルだ。


「最悪だ」


 机に向かう戦士たちは一切俺たちへと意識を向けない。


「よく来たな」


 声の主を確認した。


「先生……」


 確か名前は……籾木と言ったはずだ。この異世界学校に強制入学させた張本人。名前は忘れても顔までは忘れはしない。

 ついでに言えば攻略本(正式名称『異世界転生を果たした皆様へ~異世界攻略ガイド~』)の著者でもある。


「ここって、【勇者部】ですよね?」

「ああ、そうだが?」


 何当たり前の事を聞くんだ? とでもいいたげな表情を浮かべる。


「勇者と言うより受験戦争真っ只中の受験生の集団にしか見えないんですが……」

「それはまあ、そうだろうな。受験ではないが、勉強中だからな。真剣に取り組んで初めて勉強は身につくものだ」


 持論だけどな、と先生は笑った。

 勉強に取り憑かれた勉強の虫、もしくは鬼だ。

 勇者っぽい活動を期待していたのに、こんな勉強漬けな部活動だったとは思いもしなかった。


 一刻でも早くこの空間から立ち去らねば、と部屋を出ようと隙を伺う。


 カキカキ_〆(。。)


 何してる?

 何やら用紙に記入している惡野は真剣そのもので、勉強の虫に混じっても遜色無いほどに集中していた。


「書けました!」


 記入した用紙を持って先生に駆け寄る。


「どうぞ」

「うん……確かに受けとった」

「ありがとうございます」


 あ……何かよからぬ方向に話が向かっている気がする。

 尋ねるのが怖い。

 なけなしの勇気を振り絞る。


「ちなみに……何の話をしていらっしゃるのでしょうか?」


 自然と敬語になる。


「ああ、お前たちの入部届を受理したって話だ」


「なんで勝手に出すんだよ」


「だって、【勇者部】入るって言ったから」


 確かに言いましたよ。言いましたとも。

 しかし、こんな部活と知っていれば入部の二文字など浮ぶはずもなく……


 運命:0


 早計な事をしてしまった。なぜもう一考しなかった。

 悔やんでも悔やみきれない。

 その後、先生の部活紹介で判明したのだが、勇者部とは勇者として恥じない言動を取れるようにするための勇者学を学んだり、異世界情勢、各国の風土などの研究といった異世界で不自由なく生活を送るための部活なのだそうだ。

 ちなみに、ファンタジー要素過多の部活としては帰宅部がそれに該当するとのこと。


 選択ミス。


 運命:0は伊達じゃない。


 こうして俺は【勇者部】に入ると同時に、運命論者への道を歩み出した。





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※運がいい=幸福、の方程式に当てはめれば筆者は、運が悪い=不幸という事になる。がしかし、幸福量は決まっていると言う論理を展開させれば、現在の不遇の時も未来への幸福貯蓄と考えることが出来る……きっとそうに違いない。そう決めた。


似たような話を以前した気もするけど……まあ、いいか。



次話、どうしよう。明日までにアイデア浮かぶかな?

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