6ー2.新聞部に行ってみた

【部活動一覧】と記されたチラシには、細かい文字で余白を潰す勢いで部活の名称が載っている。


 その中でも、比較的大きい文字で書かれている部活動は人気があるらしい。

 取り合えず大文字の部活から当たってみるか。

 ばったり廊下で鉢合わせた惡野とともに見学する事にした。

 未だに胸を触った事を根に持っているらしく、事あるごとに絡んで来る。

 今回、行動を共にするのもその延長線上の事でしかない。


「どの部活行くの?」


 ずけずけと尋ねて来る同級生に辟易しながらも、波風立てないよう、無難に答える。


「取り合えず近いとこからかな……」

「それじゃあ、ここだね」


 惡野が止まり、一つの部屋を指差す。


「ああ、そうだな」


 ドアにはでかでかと【新聞部】と印字された紙が無造作に貼られていた。

 正直、興味は無かったが、ああ言った手前入らないわけにも行かない。仕方なく見学していく事にする。


「失礼します……」


 尻すぼみに小さくなる挨拶。

 室内に人の気配は無かった。

 留守であれば仕方ない。残念ではあるが、今日のところは帰ろう、と部屋を出ようとした瞬間。ガラガラと無情にも扉が開いた。



「おやおや。見ない顔ですね。クレア先生のクラスの新人くんですね」

「え、えぇ……」

「新聞部に何かご用ですか? それとも入部希望ですか! 新入部員は大歓迎です。すぐにお茶をお出ししますね。あと、お茶菓子は……」

「あっ、お構いなく」


 これ以上何かされたら入部を断りにくくなってしまう。

 お茶が出される前に退散しなくては……


「今日はこのあたりで……」

「ん何? お茶冷めないうちに飲んじゃって」


 いつの間にか出されていたお茶には茶柱が立っていた。

 全くいい事が起こる気配が無い。むしろその逆だ。何か悪い事が起こる気配。


 ズズズズゥー


 ぷはぁ~ッ!


「いい飲みっぷりだね。お代わりいるかい?」

「お願いします」


 湯呑みを差し出す。

 はいよ、と軽く返事をして湯呑みを受け取ると、急須を二、三回と廻してから湯呑みに注ぐ。

 お茶の入れ方がいいか、香りがとても立っている気がする。

 などと、お茶の方に注意が逸れていた間に惡野はお茶菓子として出された煎餅をかじっていた。

 なに和んでるんだよ。

 余計に退室しづらくなってしまった。


「ありがとうございます。親切ついでに聞いてもいいですか?」


 図々しいな、おいッ!

 と、心の中でツッコミを入れる。


「いいよ。何かな?」

「先輩は、なんで新聞部入ったんですか?」


 そうだな~、と一考。


「やっぱり、ブームを作り出したいからかな? ブームの火付け役はマスコミだからね。」

「確かに、そうですね。どんな理念をお持ちなんですか?」

「娯楽を提供したい!」

「本音は?」

「私の手の上でみんなを転がしたい!」

「なるほど、よくわかりました。今日は、このあたりで失礼しますね」


 行くよ、と目配せされ、それに従う形で退室した。


 やっぱり、この学校にはまともな奴がいない。

 次はもう少しまともな部活に行きたいな。そんなことを考えながら二人で廊下を歩いていると。


「いい先輩、だったね」

「いい先輩? やばい人じゃん!」

「そう? 正直で、いい人だと思ったけど……」


 そうだった。この学校にまともな奴なんていないんだ。そう考えると、まともな部活が存在しているはずもなく……


「帰宅部が一番かなぁ」


 ため息混じりに呟いた。


「じゃあ、次はここだね」


 目線を移すと【帰宅部】の看板が飛び込んできた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

※学校新聞って今でもあるのかな?



次話へ続く。

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