4ー完.何だかんだで生徒が好き

 警報サイレンが鳴り、各教室から生徒たちが出てくる。


 みんな、そこはかとなく怠そうだ。


「やっぱりこういう訓練はみんな退屈だよね。私もそうだったし」


「先生自ら率先して怠そうにしてどうするんですか!」


「あらら、怒られちゃった」


 舌をペロッと出す。


「いい歳なんですからやめてください。気持ち悪いです」


「辛辣だね」


「前世ならセクハラで有罪ですよ」


 …………

 ……

 …


「? 先生? 籾木先生っ~」


 眼の前でブンブンと手を振る。


「訴えられたら負ける。女はモンスター……」


 震えてやがる。


「ああ、もう! 過去にトリップしないでくださいよ! ここは異世界で訴えられたりしませんし、私はそんなことで起こったりもしませんから!」


「そうだここは異世界。教育委員会も保護者も何のしがらみもない場所……」


 あ……何かヤバイ気がする。


 眼が座っている。


 その頃教室の外で待機してた生徒たちは校内放送に従い移動を開始していた。


 案の定、話し声が聞こえてくる。


通信メッセージ


 彼が扱うことのできる数少ない魔法の一つ。


 思念を飛ばすので誰が相手なのかは判らない。


「じゃあ、よろしく」


 通信メッセージを終えた彼の顔は碌な事を考えていない、そんな予感がした。そして、その予感は見事的中した。


 キャーッ!


 遠くで叫び声が聞こえた。


「なに!?」


 ふと彼を見ると、笑っていた。


「何したんですか?」


「リアリティー出そうかと思って。クレア先生に幻術使ってもらった」


「あの人の幻術リアルすぎてほんとに火傷しちゃいますよ。下手したら死人が出ますよ」


「大丈夫だよ。ほら」と小さくなった生徒たちを指さす。


 炎が生徒たちを避けている。

 チートたちは、炎など露ほども気にしていない。


「意味あったんですかね防災訓練コレ?」


 どうだろうね、と呟いた彼は、生徒の後姿をじっと見つめていた。


 でも、と付け加えるように「顔が見れただけでもよかった」と言った口元は綻んでいた。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ※学生の頃、防災訓練+消火訓練なんてものもあったことを思い出しました。

 あれってなかなか消えないんですよね。

 

 そんなことを考えていたら悲しいかな、思いついた(しまった)謎かけ。

  

               ⇩        


 強風の日の消火訓練とかけましてこの作品異世界教室と説きます。

 その心は?

 どちらも、火がつきません。


 着火剤と人気とをかけた謎かけです。

 

 THE自虐! 割と上手な気がする。



 次回は……もっと異世界らしい話を書きたい。

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