4ー3.お・は・し、を守りましょう

 久しく人気ひとけのなかった教室に、活気が戻ってきたのはいいものの、何もすることがない。


「籾木先生。この子たちここで学ぶこともうありませんよ」


 私は自分の受け持つ生徒たちを見まわす。


「でしょ!  俺ら優秀だから。就職先も決まってるし」


「そうそう。バイト勇者から正勇者にランクアップ」


「バイトから正社員とか前世思い返しちゃうからやめてくれない? 俺は君たちと違って一応社会人やってたから。学生で転生できてよかったね。社会の荒波を経験していないその無垢な心でもって世界を救いなよ」


 生徒と言っても年齢は様々だ。


 老若男女関係なく転生する。比較的に若い人が多い(学校独自調べ)。


 勇者(アルバイト)が過去のトラウマの一端を覗かせたところで、「ハイ。注目」と手を叩く。


 籾木先生は教壇に立つと生徒たちに向き直って姿勢を正した。


「今日は防災訓練があるぞ。「おはし」をきちんと守って避難するように」


 ……。


「わかったか?」


 誰も返事を返さない。


 それも当然と言えば当然の事だった。


 皆は生徒である以前になのだから。


「先生。俺たち一応、勇者だよ。まだバイトだけど。建物崩れる前に脱出とか超が付くほどなんだけど」


 警報サイレンが鳴った。



 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


※防災訓練の「おはし」懐かしいですね。押さない・走らない・喋らない、でしたよね確か。地域によっては「おはし」に+αのところもあるとか。

 筆者の住む地域では「おはし」だけでしたが、皆喋ってました。あの時間は避難した先での先生の話が長かったのを覚えています。懐かしいなぁ……

 

 

 次回でこの話終わるかな? 多分。

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