2ー完.神様にも規則はあります

行ってしまった。

これで仕事納めだ。


誰もいない自分一人だけの空間。


寂しさがこみあげてくる。


……そろそろかな?


「お勤めご苦労様でした」


何処からともなく現れた少女に労いの言葉をかけられる。


「ありがとね。君だけだよ、僕ちんの為にわざわざ顔を見せに来てくれるのは」


「まあ、先輩は嫌われてますからね」


「えっ、そうなの!?」


「知りませんでした?」


「知らなかったなぁ……」


「先輩は変人―もとい変神ですからね。今回の件はさすがに目に余る愚行でしたね。庇い切れません」


少女、正確には女神である彼女が沈痛な面持ちで顔を伏せる。


「なんで……」


言葉に詰まる。


「なんで、あの人間を助けたんですか」


「仕方ないよ~。あのままじゃあの人、死んでたもん」


異世界転生は幾つかの条件項目をクリアした者しかウケることのできない救済処置だ。


神様のミスだったり、ミスだったり、ミスだったり……。


まあ兎に角、本来死ぬ予定の無かった人間が死んでしまったイレギュラーな死のために設けられた救済処置なのだが、自死は含まれない。


例えその死がイレギュラーであったとしてもだ。


「あの人真面目すぎてどんどん死に向かって一直線に進むんだもん。困っちゃった」


「だから事故死にしたと?」


「うん。そんな感じ」


はあ、と深い溜息を吐いた女神は額に手をやり眉間に寄った皺をぐりぐりと揉み解す。


「人間に干渉してはならない。これは規則です。先輩は過去にも何度も人間に干渉して痛い目に合ってるでしょ! 何で同じこと繰り返すんですか!? 馬鹿なんですか?」


「仕方ないじゃないか。これは最早性分なんだよ」


完全に開き直ってやった。


「勝手にしてください」


険のある口調だったが、身体が僅かに震えていた。


彼女の瞳に映った自分の顔が見る見るうちに歪んだ。


「あなたの一級神としての権限を破棄。および力の行使を禁じます。二級神への降格と共に、地上での研修期間を設けます」


「承りました」


折角だから彼の行った世界で研修させてもらおう。

実地研修100年。長いようで短い、転生神生の始まりだ。


「先輩……今度帰ってきて同じことしたら、今度は100年じゃすみませんからね……ぷっ」


「笑い堪えるなら最後までやり通せ!」


「ハハハハハハ」


ちなみに今回で10回目の研修になる。


規則違反は数えきれない。


…………

……


こうして僕ちん(神様)も転生を果たした。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

※神様もお役所仕事なんですかね?

 もしそうだったら親近感が湧くのと同じくらい、不信感も生まれてきそうですね。


 次回は……まだ考えてない。どうしよう。

 取り敢えず2章「教師は私の天職です」は完結です。

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