1ー2.攻略本
俺こと
駅のホームに落ちた人を助け、ヒーローになるはずだった。まさか、ホームから飛び降りてレールで足を挫き着地に失敗。そのまま対面にあるレールに頭を打ち付け、人生終了。
呆気ない最期だった。
神様はまだ死ぬ予定のなかった俺に転生という救済処置を施した。
しかし俺は、救済どころか転生早々、苦難に陥っていた。
異世界人と言葉が通じない。意思の疎通が図れないというのは死活問題である。
目の前の美少女との出逢いは本来であれば重要イベントのはずだ。ラノベでいう所のプロローグと言ったところか。
物語の始まり。まあ、言葉が理解できないから何も始まらないのだが。
「ミリプリープエ?」
首を傾げる少女の目には不安の色が見て取れる。
まあ、見ず知らずの男が訝しげに自分の事を凝視していれば誰だって似たような反応になるだろう。
「えーっと、こ、こんにちわ」
? 再び首を傾げる少女。
やっぱり通じてない。聞き取れないだけで相手はこちらの言葉を理解できる、なんて都合のいい世界ではなかった。
やってくれるぜ神様。
異世界転生なんてボーナスステージのはずがとんだ外れくじだ。
「俺の名前は赤城誠。日本語判る? えっと……マイネーム、イズ、マコト・アカギ……英語もダメか」
ため息が零れる。
「エム、リーリエ」
謎の言葉を残して少女は家の中へと引き返した。
ドアは開けたままなので、少し待っていろ、という事なのだろう。
その場でしばらく待っていると、パタパタと駆けてくる足音とともに少女が一冊の本を持ってきた。
「カム・リ・コーレル」
少女が差し出した本を受け取る。
『異世界転生を果たした皆様へ~異世界攻略ガイド~』
ペラペラと
書かれている内容が理解できた。何しろ本に書かれていたのは日本語だった。
説明書とかってレベルじゃないぞコレ!?
攻略本と言って差し支えない。
モンスターの出現地帯から周辺にある街や村の情報まで網羅している。身体強化の補強に加えてこの情報があればもはやチートじゃないか。
攻略本の備考欄が目に留まった。
備考
・本書は異世界転生を果たして間もない方々を対象としたものです。
・本書の情報は帝都までのガイドとなっておりそれ以降の情報については記述しておりません。
・ちなみに本書の情報だけではチートにはなれませんので悪しからず。
完全にこちらの思考を読んでやがる。
どんな奴が書いたんだこの本。
奥付には筆者の情報も載っている。
名前は……
メチャクチャ日本人じゃん。
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※筆者はゲームとか、攻略本・ネタバレを見てから始めます。
個人的にはサさっとクリアできてお得感満載で満足しているのですが、やはり邪道なのでしょうか?
次話に続きます。
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