先生、学生の本分は勉強ですか?

1ー1.第一村人

 理不尽な死。何か神様が間違った結果の死。


 神様だってミスはする。


 もしかしたら神様の気まぐれによって死を迎える、なんて事もあるのかもしれない。


 そうした死に対する救済処置として、転生が用いられる。

 そして現在、俺は神様の前に立っている。


「なんか最近の若者はちっとも驚いてくれないのぉ」


「そうですか? みんな似たようなものじゃないですかね?」


「そんなものかのぉ?」


 なんか神様って軽いな。


 ラノベなんかではこの後……。異世界転生にあたっての特典があるのがお決まりだが……。


「今回はワシのミスでお前さんを死なせてしもうた。お詫びと言ってはなんじゃが、なにか一つ望むものを与えよう」


「ありがとうございます」


 頭を下げる。


「本当に冷めとるのぉ」


 どこか寂しそうに神様が言う。


 さてと、ここまでは想定通りだ。問題は何を望むか、ということ。選択次第では転生を棒に振る事もありえる。


 俺は考えた。思いつく限りの選択肢の中から最善の選択を。


「身体強化でお願いします。魔法なんかも魅力的ですけど、やっぱり身体強化でお願いします。」


 神様は俺の望みを聞くと一時思案して俺に尋ねた。


「その望みで構わないか?」


「はい。構いません。お願いします」


「そうか……判った」


 目の前が真っ白になる。目を開けていられないほどのまばゆい光の輝きが体を包む。優しい暖かさだ。聖なる光とか、後光というやつだろうか?


「気をつけてなぁ」


 脳に直接響くような声がした。


 ああ、やっぱり神様なんだなと再認識した。


 荘厳とはこういうときに使う言葉なのだろう。


「はい。ありがとうございました」


 お礼を言うと同時に体が浮き上がり、一瞬のうちに見覚えのない土地へと飛ばされた。


 ここは……村か。


 周囲を見回すと、現代の日本ではほとんど見かけない石造りの民家が等間隔で建っている。


 バロック様式というヤツだろうか? そもそもロマネスクもゴシックもバロックも違いは一切判らないのだが。


 呼び鈴などあるはずもなく、ドアを叩くしかない。


 文明レベルはかなり低いようだ。15~16世紀の西洋くらいだろうか。


 取り合えずこの世界について知る必要がある。


 情報は重要な武器となる。


 もっと近い民家の扉を叩く。


 顔を覗かせた少女は、日本人でないことだけは一目で判った。


 俺と同じ黒髪ではあるものの、すっきりと通った鼻筋や彫りの深さなんかが日本人のものではなかった。


 瞳の色も良くよく見てみると淡い翡翠色をしていた。


 紛れも無い美少女であった。


「ミリプリープエ?」


 少女が首を傾げる。


 あれ? 第一村人の話す言葉が判らないぞ!?


 こうして俺は言語という壁にぶち当たった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


※異世界転生のご都合主義に物申す!! みたいな感じで執筆を開始したのですが、やっぱり異世界モノって主人公補正とか欠かせないのもまた事実。

 どうしたものか……

 筆者は異世界モノのテンプレという壁にぶち当たっております。


 次話へ続きます。

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