そのさん
ヨダカとリカオンの二人は、ボスの後について、暗い遺跡の中を歩いてゆきますが、その場所が、どうにも気になる様子で、リカオンは辺りをずっと見回しています。
「どのあたりなんだろう、ここ……なんだか全然、雰囲気が違う……」
「質問。雰囲気が違う、とは?」
「あ、うん、えっとですね。ここは、『ヒト』が地下に作ったと言われている遺跡、『ちかめいきゅう』の中の何処かだと、最初は思っていたんです。でも、『ちかめいきゅう』の道は、もっと狭くて、入り組んでるはずなんですよ」
「……でも。この道は、広い。それに、少し……懐かしい? 落ち着く、ような」
「落ち着く、ですか……? あっ、なるほど。道、というよりは、大きな巣穴に近いのかも」
ヨダカの呟きに、リカオンは、はっとなります。
やっぱり暗くて、よくは見えませんが、なんだか何に使うのかよくわからないものがいっぱい転がっているようで、なにかをするための場所、といった感じに、思えました。
二人が、そんな風にこの場所のことが気になっているのを、知ってか知らずか、また、ボスが話し始めます。
『ココ、ハ、工場ノ中、ダヨ。地下迷宮トハ、繋ガッテイル、ンダ。スグ、近クダヨ』
「『こうじょう』……?」
「工場……製品の生産・製造、保守・点検・メンテナンスを行う施設」
「えっ、知ってるんですか、ヨダカさん!?」
「……ノー。何故だか、思い浮かんだ」
リカオンの問いかけに、ヨダカは横に首を振りました。
何か思い出せたとか、そういうわけではなくて、言葉の意味だけが、すっと、口から出てきたのです。
ただ、何か、自分にとって、重要な場所だったような、そんな気はしていました。
「そうなんですか。ここも『ヒト』の作った遺跡だとしたら、ヨダカさんは、『ヒト』ととても関わりの強かった、けものなのかも……ボス、あと出口まで、どのくらいですか?」
『ココハ、生産ラインダ、カラ、見学ルートナラ、アト30分、クライ、カカルネ。途中ニ、売店ヤ、休憩室モ、アル、カラ、休ンデイクノモ、イイネ』
「こ、ここで休むのは、流石にちょっと……」
「リカオン。あそこ」
「どうしましたか……あっ、向こうにもボスが! しかも、よく見たらたっくさん! すごい!」
暗がりの中、ヨダカが指差した先に目を凝らせば、いくつも、空色のボディが転がっているのが見えました。
はしゃいだ様子でリカオンが駆け寄りますが、途中で何かに気づいて、はっと立ち止まります。
「あれ、このボス達……足りない。胸のところの光るやつが、付いてないですよ」
「未完成……?」
『ソレハ、ボク達ノ、ボディパーツ、ダネ。ボク達ラッキービーストモ、ココデ生マレル、ンダ。完成シタラ、パークノ、色々ナ場所に配備サレテ、フレンズノ世話ヤ、オ客様ノ案内ヲ、スル、ヨ。生産ダケ、ジャナク、修理ヤ整備モ、ヤッテイル、ヨ』
「それって……ここが、ボスの生まれ故郷っ!? この子たちは、ボスになる前のボスだったんだ……!」
「生まれ、故郷……」
リカオンのはしゃぎようを横目に、ヨダカは思いました。
どうしてか、こんな、暗くって、埃っぽいところなのに、落ち着くのは、自分も、ボスとおんなじように、こういうところで、生まれたのかも、と。
でも……それは、ここではなく、どこか、もっと、ずっと遠くに。
もう、帰ることにも出来ないほど、遠くに、あるような気も、しているのです。
その後、二人は、せいさんらいんを出て、ばいてんとか、きゅうけいじょってゆう所を通って、いよいよ、ボスがいうには、出口の近くというところまで、やってきました。
長い道は、緩やかな上り坂になっていて、その先に、微かに外の明かりが、漏れてきています。
「あの先に、出口がっ。良かった、ヨダカさん、もうすぐ出れますよ!」
「ん。リカオンのおかげ、感謝」
「これも、ハンターの仕事ですから……でも、嬉しいです、えへへ」
『……モウ、少シ、見学シテ、イコウカ。チョット長クナルケド、地下迷宮ノ方カラモ、外ヘ出ラレル、カラ、ソッチニ、案内スル、ヨ』
「えっ、なんでですか、ボス……っ、いや、この匂い……!」
出口を目の前にして、いきなりの回れ右に、リカオンは驚きましたが、すぐに気づきます。
出口のほうから流れてくる風、外の匂いに混ざって、あの、全身の毛か逆立つような嫌な匂い……セルリアンの匂いが、混ざっている事に。
「ヨダカさん……わかりますか。セルリアンです」
「ん、セルリアン……! 確認、出口の前に、集団……!」
明かりに気を取られていたがために、最初は気付きませんでしたが、見れば、まるでその明かりに群がるように、出口のあたりに、たくさんの赤い影が紛れています。
まだこちらには気づいていない様子で、ただ、じっと外の光を見つめている姿、それを目にしたとたんに、ヨダカが、また、地上で大型を相手にした時みたいに、何かに取りつかれたように、翼からけものプラズムの光を出し始めます。
「地上脱出のため、殲滅・突破を実行する……っ」
「だ、ダメですよ、ヨダカさん!? あの数、今の僕たちじゃかないっこありません! それに、崩れるかも、危険です!」
「でも、セルリアンは、敵っ、敵は、倒さなきゃ……! 」
「……ヨダカさんっ、聞いてください」
今にも飛び出そうとするヨダカの肩を掴んで、リカオンが自分のほうへと振り向かせました。
その、真剣な黒い瞳と、ヨダカの赤い瞳が向き合います。
「ヒグマさんがいつも言っていました。ハンターが一番優先しなきゃいけないことは、生き残る事だって。たとえ、いろんなものを巻き込んで、無理してまで戦っても、その時しか助からないんじゃ、意味がない、僕たちの守る『パーク』の中には、みんなの居場所も、僕たち自身のことも、入っているんだから、って!」
「わたしたち、自身……」
「ヨダカさん、あなたは僕たちハンターよりも、もしかしたら強いのかもしれないし、あなたがそこまでセルリアンにこだわるのは、何か大切な理由があるのかもしれない。でも、だからこそ、こんな所で無理しちゃダメです! ヨダカさんが、これでさっきみたいに戦って、力尽きてしまったら、今度こそ僕が助けられずに、食べられちゃうかもしれない! そうなったら、僕たちも、ミナミコアリクイさんだって、すごく、すごく悲しみます!」
「……っ。ごめん、なさい」
リカオンに言われて、ヨダカは、自分のやってしまったことを思い出して、反省しました。
現れたセルリアンに無我夢中になって、遺跡まで壊してしまって……もし、下にフレンズがいたなら、生き埋めにしてしまっていたかもしれませんし、ヨダカでは、壊れたのを直すこともできません。
それに、ヨダカが力尽きてしまわなければ、リカオンが、自分に付き合って、地下でさまようこともなかったのです。
これでは、カバにされた注意を、守れているとは言えません。
何より、頭の中に浮かんだ、今まで会ってきた友達たちや、ミナミコアリクイの姿が、ひどく、胸の奥を軋ませるのです。
じっと俯くヨダカ、その、反省が伝わったようで、リカオンも、ほっとした様子で、少し笑いました。
「大切にして下さい、自分のこと。戦わないことも、逃げることだって、戦いなんですから」
「逃げることも、戦い……理解」
『ソロソロ、出発、シヨウ。急イダ方ガ、イイカモネ』
「そうですね、ボス。気付かれないうちに……」
「……指摘。リカオン、もう気付かれてる」
「わわっ、しまったーっ!? 逃げましょう!」
「了解」
振り向けば、お話しに夢中になっているうちに、セルリアン達が此方へ、迫ってきています。
慌ててボスを拾い上げるリカオンとヨダカは、地上への出口に背を向けて、もう一つの出口を目指し、遺跡の中へと走ってゆきました。
そんな二人を探しに、こちらも遺跡の中へと入っていく、ミナミコアリクイたち4人です。
ヒグマは、案内役をお願いしたスナネコのマイペースさに、少し呆れてきてしまっていました。
「おい。まさか行き当たりばったりに、気になったものの方へ向かってるんじゃないだろうな」
「大丈夫。穴のあった方へ進んでますから、そのうち着きますよ〜、多分」
「多分、じゃなくてだなぁ……!」
「ヒグマさん、らしくないですよ。ハンターたるもの、常に冷静に、です」
「……あぁ、そうだな。少し、気を張りすぎていたか」
案内役でありながらも、隙があればきょろきょろとあたりを見回して、ふらふらと歩いているスナネコは、緊張とは無縁といった様子で、ヒグマのまとっていた、なんだか、息のつまりそうな、ピリピリした雰囲気が、少し、柔らかくなっていました。
それを横目に、ほっと息をついたミナミコアリクイですが、そっちに気をとられていたせいか、足を地面の凹みにとられて、つんのめってしまいます。
「あっ、あわわっ!?」
「おっと! 大丈夫か」
「あ、ありがとぅ……ヒグマさん」
「仕事だからな。気にするな」
「あ、あの……っ、あたしも何か、手伝うよぅ」
「必ずヨダカは助ける。お前は、守られていればいい」
「う、うん……」
助け起こしてくれたヒグマに、はっきりと言われて、ミナミコアリクイは、しょんぼりとうつむきました。
わかってはいたものの、無理なお願いをして、ついてきて、何か他の子にしてあげられることがない、というのは、辛いものです。
すると、そんなミナミコアリクイの顔を、不意に横から、スナネコが覗き込んできました。
「どうしました〜? なんだか、元気ないですね。幸せが、逃げちゃいますよ〜」
「あ、ご、ごめん、気にしないで、あたしは平気だよぅ。ただ、みんなのために、何かできたらな、ってぇ……」
「ほーほー。あ、それなら、ぼくの代わりに、さっき見かけた、気になるものがいないか、探しててくれませんか?」
「気になるもの……?」
「はい。耳が欠けてるボスがいて、なんと、その子、喋ったんですよ〜」
「喋るボス、ですか? 近くに、新しい『ヒト』のフレンズさんが、いたんでしょうか……」
「探索中だぞ。キンシコウも、気になるのはわかるが、それくらいにしておけ」
「あっ、はい、ヒグマさん、失礼しました。ミナミコアリクイさん、良かったら、喋るボスいないかどうか、注意してあげていてください。そうでなくても、何か気になるものがあったら、すぐ伝えてくれて構いませんから」
「う、うんっ。ありがとぅね、スナネコっ!」
「ぼく、何か感謝されるようなこと、しましたか? でも、お礼を言われるのは、嬉しいですね〜。それじゃ、ぼくはがいどに忙しいので、見つけたらまたお話ししましょっ」
「うんっ、あたし、頑張るよぅっ」
気を遣ってくれたのかどうかは、わかりませんが、スナネコからお願いをされて、ミナミコアリクイは、さっきよりずっと元気になって、辺りを張り切って見回しています。
それを見たキンシコウが、優しく微笑んで、また辺りの警戒に戻ろうとした、その時でした。
スナネコが、何かに気づいて、ふっ、と、首を上げたのです。
「お?」
「どうした、スナネコ。何かあったか」
「はい、こっちの方から、何か聞こえたような……」
「ヨダカとリカオンだよぅ! きっと!」
「待て! セルリアンの可能性もある。慎重に、だが急いで向かうぞ。スナネコ、案内してくれ。みんな、走るぞ!」
「はい!」
「ま、待ってよぅ!」
音を立てないようにしながらも、急いでみんなはスナネコの後についていきます。
暗くて、ぐねぐねと入り組んだ先に見えてきたのは、瓦礫や岩が崩れて、塞がってしまっている道でした。
「これは……!? スナネコ、この先か!」
「はい。多分、そうだと思うんですけど〜」
「風の流れを感じます。完全には塞がっていないみたいですが……これは、迂回したほうがいいでしょうか」
「待って! あたしにも聞こえたよぅ、今!」
「……微かに、リカオンとヨダカの匂いを感じる。それに、セルリアンも! 追われているのだとしたら、迂回している暇は……!」
「な、なら、ここはあたしに任せてよぅっ、こういうのは、得意だから……!」
岩とがれきの山の前、いっきにみんなの間に緊張感が高まる中で、ミナミコアリクイが一歩踏み出して、その腕で、するどくパンチをお見舞いしていきます。
すると、どんどんと邪魔な岩が砕かれ、がれきがどかされて、道ができてゆくのです。
「ミナミコアリクイさん、すごい……!」
「こんな特技があったとはな……ぼーっとしちゃいられない、キンシコウ、いつでも仕掛けられるよう、構えておけ」
「はい!」
「よーし、ぼくも手伝いますよ、ミナミコアリクイ。砂は任せてください」
「ありがとぅ、スナネコ! よぅし、一気に掘るよぅ!」
二人のフレンズの力が合わさって、埋もれていた道は、あっという間に元の姿を取り戻してゆきます。
そして、最後に邪魔をしていた、大きな岩を砕いて、向こうの側と繋がったとき、ちょうど、こちらの方へと、ヨダカとリカオンが、駆け込んできました。
「うわっ!? 急に岩がっ」
「ミナミコアリクイっ!!」
「ヨダカ! リカオン! よかった! 助けに来たよぅ、早くこっちへ!」
「了解!」
「あわわっ、でもセルリアンがっ」
「リカオンさん、大丈夫、私たちもいますよ!」
「この角まで来い! そうしたら私とキンシコウがしんがりを務めつつ、退却する! 合図はリカオン、お前が出せ! いいな?」
「はいっ、オーダー了解です! ……って、スナネコさん!? なんでここに」
「ふふん、がいど役を任されたんですよ。あっ、そのボス!」
こんな時でも、気になったものに夢中な、マイペースなスナネコも一緒に、ようやくまた会えたのを嬉しがるのも後回しで、ヨダカ、リカオン、ミナミコアリクイは、いっきにヒグマとキンシコウの構える、道の角まで逃げ込みました。
すかさず目配せをし、ヒグマとキンシコウが飛び出して、迎え撃ちます。
「セルリアン、ポイント到達まで、3、2、1……0!」
「今だっ! 行くぞキンシコウ! ハアァアッ!」
「はいっ! ヤアァァァアッ!」
「みなさん、今のうちに! 地上まで上がればこっちのものです!」
「うん! ヨダカ、スナネコ、走れる?」
「ぼくは全然大丈夫ですよ! 追いかけっこも楽しいですね!」
「現状は、平気。ただ、この後に補給を、希望……」
気合いの入った掛け声をあげながら、ハンター達は飛び出して、とても息のあったコンビネーションで、セルリアンを翻弄します。
その後ろを、リカオン率いるみんなが、地上までのルートを駆け抜けて行きました。
そうしてしばらくして、ついに、出口について、待ちに待った地上の光が、みんなを迎えます。
「みなさん! 出口ですよ!」
「やったぁ! ようやく出れたよぅ!」
「ん、良かった……」
「がいど、楽しかったですねー。またやりたいです」
「あ、あたしはもう勘弁だよぅ……キンシコウとヒグマは、大丈夫かなぁ」
「あの二人なら、絶対大丈夫ですよ……ほらっ!」
不安げなミナミコアリクイと、信頼に満ちたリカオンの振り向いた先で、ちょうど、金色と黒、そして赤の影が、遺跡の入り口から飛び出してくるところでした。
「こいつが、最後の一体! もうひと踏ん張りだ! リカオン、みんなは無事だな!」
「はい! そいつを倒せば、もう安全です!」
「わかりました! 決めましょう、ヒグマさん!」
「あぁ! 行くぞおおぉぉおっ!!」
ヒグマ、キンシコウ、二人が最後の一体を取り囲んで、いっせいに攻撃を仕掛けます。
セルリアンは、二人の動きに反応出来ず、なすすべなく石を砕かれて、ぱっかーん!と、辺りに破片を振りまいたのでした。
「やったああああ! すごいよぅ、ハンター!!」
「対象の撃破を確認、周囲への被害なし……これが、守る、ということ」
「お疲れ様ですー。ぼくたちの遊び場を守ってくれて、ありがとう」
「……仕事をしたまでだ」
「ふふ、照れなくてもいいんですよ」
「だ、誰が!」
「あははっ……ふぅ。無事に済んで、本当によかったですよぉ〜!」
みんなの歓声のお出迎えに、少し恥ずかしげなヒグマ、嬉しげに笑うキンシコウ。
ようやく肩の荷が降りたといった様子で、リカオンはボスを抱いたまま、その場に座り込みます。
『工場見学ト、迷路ノアトラクション、ドウダッタカナ』
「もう、散々でしたよぉ……セルリアンがいなかったら、ゆっくり探索してみるのも、面白そうでしたけど」
「そういえば、リカオン。どうしたんだ、そのラッキービーストは……なんで喋ってるんだ?」
「落ちた場所にいたんです。この子が、僕たちをあそこまで案内してくれたんですよ。喋っている理由は、僕にもわからないんですけど……」
「とても、助かった。感謝」
「ぼく、その子を追いかけてたんですよー! わー、ほんとに喋ってる、面白ーい……けど、まぁいいかぁ」
「えぇっ、もぅ!? 飽きるの早いよぅ!」
「ふふふ……みんなを助けてくれてありがとうございます、ボス」
『道案内ガ、パークガイドロボット、デアル、ボクノ、役目ダカラネ』
喋るボスのことを、ヨダカとリカオン以外のみんなも、それ程驚かずに受け入れました。
というのも、実は全員、一度は喋るボスのことを、見たことがあったからです。
その時と違って、『ヒト』もいないのに、どうして喋るのかの理由は、わかりませんが、それを気にするよりは、いつもじゃぱりまんを配ってくれて、お世話になっているボスと、自由にお話しできるのが、嬉しいのでした。
そんなボスは、どうやら行きたい所があるようで、みんなの方を見上げて、言うのです。
『マダ、案内、シタイ、場所ガ、アルンダ。こはんノ、方、ダヨ。ツイテキテ、クレル、カナ』
「こはんなら、としょかんに行く途中だね! 案内して貰おうよぅ、ヨダカ!」
「ん、賛成」
「えっと……ごめんなさい、ボス。僕は、ハンターの仕事がありますから……」
『……』
じぃっと見つめてくるボスに、リカオンは、名残惜しみつつも、首を横に振ります。
そんな様子を見て、ヒグマが、口を開きました。
「……リカオン。そういえば、まだ、今回の独断行動についての話が、済んでいなかったな」
「ヒグマさん……はい」
「結果的にヨダカを助けられたからいいものの、後先を考えず、自分の身を顧みない行動を取って、危険に飛び込んだのは事実だ。その罰として……お前には処分を下す」
「……はい」
「しょ、しょぶん……よくわかんないけど、そんなの必要ないよぅ! ヨダカのために、リカオン頑張ってくれたんだもん!」
「ん……! 凄く、助かった……!」
「これは、ハンターの問題だ、外野は静かにしていろ。処分の内容は、謹慎。期間は、私たちが遺跡の安全を完全に確保できたと、確認が取れるまで……だ」
「えっ、それって……」
「ふふ。つまり、ここは、私たちに任せておけ、ってことですね? ヒグマさん」
「さてな」
「……ありがとうございます」
しらばっくれるヒグマに、キンシコウが微笑み、リカオンが頭を下げます。
そんな、ハンターのやり方に、ヨダカとミナミコアリクイは、顔を見合わせて、くすりと笑いました。
『ソレジャ、行コウ、カ。歩キダト、少シ、カカルヨ』
「はい! よろしくお願いします、ミナミコアリクイさん、ヨダカさん、ボス!」
「うん! ハンターが一緒なんて、頼もしいよぅ!」
「ん。嬉しい」
「今日は、面白いものがいっぱい見れました。とってもまんぞくです。よかったら、また、遊びましょ」
「うん、スナネコもありがとぅ、またね!」
こうして、ミナミコアリクイとヨダカは、リカオンとボスと一緒に、次なるちほーへ向けて、歩き出します。
その背中を、ヒグマ、キンシコウ、スナネコの三人が、手を振って見送りました。
「行ったか……全く、あんな無茶、誰に似たんだ」
「さぁ。でも、リカオンさんに聞いたら、こう答えると思いますよ。『僕がしていなかったら、ヒグマさんがしていたと思います』って」
「ハンターのみんなは、とっても仲良しさんですね〜」
「……早く仕事に戻るぞ。悪いがスナネコ、お前にももう少し、付き合って貰うからな」
いち早くきびすを返して、ヒグマはまた、遺跡の中へと歩いて行きます。そんな、不器用な背中に、キンシコウの優しげな視線と、スナネコの楽しげな足取りが、ついていくのでした。
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